【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#113


『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)⑬


  ◇  ◇  ◇


■『ヤー・ブルース』


 今回は『ホワイト・アルバム』収録の、いわゆる「スリーコード」(=3つのコードしか使わない)の典型的なブルース/ロックンロールを2曲。


 まずはディスク2(2枚組LPの「C面」)の2曲目『ヤー・ブルース』。


 ロック好きならお分かりになるだろう。『ホワイト・アルバム』がリリースされた1968年にイギリスでブームとなっていた、いわゆる「ブルースロック」の音になっている。


 つまりはスリーコードで、重たいビートで、ギターソロが長く、歌詞も憂鬱(=ブルー)というものだ。


 しかしエリック・クラプトンのいたクリームの曲などと比べると、「ビートルズもブルースロック、やってみた」という感じで、何だか板についていないのだ。特にリズムがどんくさく感じるのだが、どうだろう。


「寂しい」「死にたい」を繰り返すブルース風の歌詞。途中で突然「(ボブ)ディラン」の名前が出てくるのは、ガロ『学生街の喫茶店』(72年)イギリス版という感じ。【オリジナル記事で試聴する


 さて、ジョン・レノンが、クラプトンや、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズらを従えて、この曲を演奏する動画が残っている。


 68年にストーンズが制作した『ロックンロール・サーカス』という映像作品のワンシーンである。何度も見たのだが、これだけの豪華メンバーなのに、演奏をよく覚えていないのだ。


 というのは、この映像作品、ザ・フーの演奏がすごすぎて、それ以外の印象がかき消されるからである。ぜひ探して見ていただきたい。

絶対そう思うはず。


■『ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード』


 タイトル直訳は「道でヤろうぜ」。あえて「ヤ」をカタカナにしたが、要するに、そのまんまの内容の卑猥な曲である。


 歌詞も基本、「道でヤろうぜ」を繰り返すだけで、ある意味、ブルースの形式に沿ったものだ。


 何でも、インド滞在中にポールが、猿の交尾を目にしたことをきっかけに作られたようだ。世界初の「交尾ロック」。天才ポールは、何を見ても、どんな刺激からでも、曲が作れるものだと驚く。


 録音は、ほぼポールのみで行われたが、ドラムスだけはリンゴ。こちらは『ヤー・ブルース』と違って、リズムがグルーヴィーでいい。


 たった1分41秒の短い曲。アルバムでは『ワイルド・ハニー・パイ』に続いて短い。検索したらチンパンジーの交尾はもっと短く、たった7秒程度らしい。

 


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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