【2026年上半期 ネット炎上事件簿】#2


 街頭演説のなかから、「外為特会は円安でホクホク」と言った部分だけを切り取られ炎上した高市総理。前後の文脈を無視し、感情に訴える部分だけを切り取って炎上させるのは、アテンション・エコノミーとその背後にあるアルゴリズムに操られた流行病のようでもある。


 同じく、発言が切り取られて炎上したのが堀江貴文だ。1月のネット番組に出演した際に、寿司屋について「バカのための仕事だった」「不細工、頭悪い、家貧乏みたいなやつ」が就いていたと持論を述べた。


 これが切り取られてSNSとネットニュースで拡散。「失礼すぎる」「見下している」「侮辱している」「寿司職人の家族がどう思うか想像力がない」などと批判が殺到した。


 堀江はSNS上で「頭の良いやつが(動画で勝手に学んで)修行せずに出店したら既存店は負ける」「下積みや修行が手に職をつけ生活していくセーフティネットになっていた」という趣旨だったと説明したが、批判の声はやまない。批判が集まった背景には、堀江自身が2014~16年に同様の発言をしていたことも影響したようだ。


 当時も「寿司の握り方を覚えるのに10年もかかるのは無意味」「皿洗いを何年もさせられる構造はおかしい」と主張し、短期集中で養成するスクールを支持して「多年にわたる下積み修行は社会の浪費」と語っていたのだ。


 この時も和食の歴史をバカにしているといった批判があったが、料理人からも「修行、下積みはもはや常識ではない」「非効率を伝統と美化するな」と擁護する意見も少なからずあった。


 今回も「効率だけでは割り切れないのが伝統」「美学や職人文化を壊す考え方」との意見がある一方、飲食業界内部から「言い方は強いが本質は間違っていない」「学歴がなくても受け入れ、腕一本で這い上がれたことを言っているだけ」などと擁護する声があり、賛否が交錯するカオスな炎上となって意外に長引いてしまった。


 いわゆる丁稚奉公や住み込みでの修業が、家庭環境や学歴を問わず少なくない若者の受け皿となり、一人前に育てる社会インフラとして機能していた。それをネットが代替可能となり、うまく利用すれば劇的にタイムパフォーマンスを改善できるようになった。


 ネットを使った「学習」であれば、奉公や修業にありがちないじめや理不尽な押し付けもなく、純粋に座学や技術習得に打ち込める。

伝統が革新により命脈を保ってきたことを考えれば、確かに言っていることの本質部分に一理はある。


 ただ、言い方を含めて堀江のキャラクターには色がついているがゆえに、誤解や曲解も多くなる。文脈無視の切り抜きが前提となってしまったからこそ、本意の伝え方にはなおのこと気をつけたい。


(井上トシユキ/ITジャーナリスト)


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