「電動歯ブラシ、買ったほうがいいですか?」
歯科医院で、実はよく聞かれる質問です。最近は、1万円を超える高機能モデルから、手頃な価格で購入できるモデルまで、さまざまな製品が販売されています。
スマホと連携したり、磨く力を教えてくれたり……。

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「高いものを買えば、歯磨きもラクになるんじゃない?」と思っている人もいるかもしれません。では、電動歯ブラシにお金をかければかけるほど、歯は健康になるのでしょうか?

「電動歯ブラシ=歯磨きが上手くなる」は本当?

「手磨きvs電動歯ブラシ」歯科医師が教える“コスパ最強”のオーラルケア
※写真はイメージです(Adobe Stock)
電動歯ブラシは、歯ブラシを細かく動かす作業をモーターがサポートしてくれるのが大きな特徴です。軽く歯に当てて動かしていくことで、手磨きとは違った磨き方ができます。

また、最近の電動歯ブラシはスタイリッシュなデザインも多く、ガジェット好きの男性ならば、歯磨きのモチベーションが上がるはずです。

ただし、電動歯ブラシに替えたからといって、磨き残しがゼロになるわけではありません。ハイスペックな道具を買って満足するだけでは、むし歯のリスクが大きく下がるわけではありません。電動歯ブラシでも、磨き残しやすいポイントがあるため、コツがいります。

電動歯ブラシで磨き残しやすい場所とコツ

「手磨きvs電動歯ブラシ」歯科医師が教える“コスパ最強”のオーラルケア
前歯を中心に磨き残しがある患者さん
電動歯ブラシは、ブラシ自体が高速で動いてくれますが、歯に当てる場所を自動で判断してくれるわけではありません。そのため早いスピードでガサツに当ててしまうと、磨き残してしまいます。「電動だから早く終わるはず」と、1分くらいでざっと当てるだけでは、磨き残しが出てしまいます。

また、電動歯ブラシを使用している人で多いのは、前歯の磨き残しです。歯磨き粉が飛び散るのを嫌がって、前歯にブラシを十分に当てていない人もいます。前歯を磨く時は、口は軽く閉じて当てる、飛び散りにくいジェルタイプの歯磨き粉を先に前歯に馴染ませてから磨くなど工夫をして磨きましょう。
また、ヘッド部分に厚みがあるタイプでは、奥歯まで届きづらく、奥歯を磨き残している人もいます。

電動だからと安心して、スマホを見ながらなんとなく磨いているだけでは、磨き残しを減らすことはできません。また、電動歯ブラシも、力いっぱい歯に押し当ててしまえば、歯ぐきや歯の根元に負担がかかることがあります。特に、もともとブラッシング圧が強い人は注意が必要です。歯の表面にブラシを軽く当て、焦らず少しずつ位置を移動させることが大切です。

電動歯ブラシに替えれば、手磨きより必ずきれいになる?

高価な電動歯ブラシを購入すると、これで大丈夫という安心感が生まれやすいのですが、高価なものだから磨き残しがゼロになるというわけではありません。

短時間でさっと終わらせる、ブラシを当てない部分がある、強い力で磨く。こうしたクセは、どんな歯ブラシを使っても磨き残しにつながります。大切なのは、歯にきちんとブラシを当てること。磨き残しやすい場所を知り、自分に合った方法でケアすることです。

また、歯ブラシでは届きにくい歯と歯の間には、フロスや歯間ブラシなどを使わないと、どうしても汚れを落とすことはできません。

そして、高価な電動歯ブラシがあるからといって、定期検診が不要になるわけではありません。セルフケアアイテムに奮発したからプロの検診とケアを節約できるというわけではありません。
手磨き用の歯ブラシが電動歯ブラシよりも劣っているわけではなく、磨き方がどちらも重要なのです。

つまり、「高価な電動歯ブラシを買うこと」そのものより、手磨きでも電動でも、自分に合った方法で歯間まできちんとケアし、定期的に歯科医院でチェックすることのほうが、長い目で見ればコスパのいいオーラルケアなのです。

こんな人は「電動歯ブラシ」を検討してみて

では、どんな人に電動歯ブラシが向いているのでしょうか。

まず、歯磨きの動作そのものを効率化したい人には、電動歯ブラシを検討する価値があります。限られた時間で、効率よく歯磨きをしたい人にとって、磨く動作をサポートしてくれることはメリットの一つです。

また、手磨きだと毎回磨き残しが多い人にもおすすめです。「毎日きちんと磨いているつもりなのに、歯科医院で磨き残しを指摘される」という人は、電動歯ブラシを取り入れることで、改善されるかもしれません。製品によっては、アプリで歯ブラシを当てられていない箇所をチェックできるものや、歯に押し付けすぎを光で知らせてくれる加圧防止センサーが付いているものもあります。こうした機能は、ガジェット好きの人にとっては「歯磨きを習慣化する仕組み」として意外と侮れません。

さらに、歯ブラシを細かく動かすなど、磨く動作そのものが苦手な人にも選択肢になります。手磨きではどうしても磨き方にクセが出てしまう人は、電動歯ブラシの力を借りることで、毎日のケアを続けやすくなるでしょう。

そして意外と便利なのが、タイマーなどの機能です。一定時間磨くことを知らせてくれる機能があれば、「今日は忙しいから適当に……」となりがちな人でも、歯磨きを習慣化するサポートになります。


ただし、電動歯ブラシに替えれば、誰でも歯磨きが完璧になるわけではありません。

電動歯ブラシも、正しい当て方や磨く場所を意識することが大切。「歯磨きが苦手だから電動にする」のではなく、自分の苦手な部分を補う「道具」として考えると、より上手に活用できるでしょう。

電動歯ブラシは「タイプ」で選ぶ

一方で、「電動歯ブラシを買うなら、とにかく一番高いモデルを選べばいい」というわけではありません。どれだけ高性能な電動歯ブラシを購入しても、使わなくなってしまえば意味がありません。また、歯並びや歯茎の状態、磨き方のクセなど、口の中の状態は人それぞれです。

だからこそ、電動歯ブラシを選ぶときに大切なのは、「いくらのものを買うか」ではなく、「自分の口に合っていて、正しく、長く使えるか」なのです。

電動歯ブラシを選ぶときは、価格や機能の多さだけでなく、「どんな動きで磨くタイプなのか」にも注目してみましょう。代表的なのが、音波振動式、回転・反回転式、超音波式です。

音波振動式は、ブラシの毛先を高速で振動させながら磨くタイプです。手磨きに近い感覚で、歯面にブラシを当てて少しずつ動かしていきます。また、高速振動によって唾液などの液体にも動きが生じるため、ブラシが直接触れることによる清掃に加えて、液体を介した清掃作用も期待できます。ただし、ブラシを歯面にきちんと当てることが基本で、音波の作用だけですべての歯垢が落ちるわけではありません。
自分でブラシを当てる場所を意識しながら磨きたい人には使いやすいでしょう。

一方、回転・反回転式は、丸型のブラシが回転・反回転するタイプです。歯を1本ずつ狙ってブラシを当てやすく、「1本ずつ丁寧に磨いている」という感覚を得やすいのが特徴です。しっかり磨いている感覚が欲しい人にも向いています。ただし、清掃効果が高い分、ブラシを強く押しつけすぎないことが大切です。歯茎の状態やブラッシング圧には注意しましょう。

そして、非常に細かい振動を利用するのが超音波式です。ブラシの毛先による清掃に加えて、超音波によって唾液などの液体に生じる作用も清掃に関与するとされています。ただし、超音波だけですべての歯垢が落ちるわけではなく、歯面にブラシを適切に当てて磨くことが基本です。

つまり、電動歯ブラシは「どのタイプが一番すごいか」ではなく、「自分の磨き方の弱点を、どのタイプなら補ってくれるか」で考えるのがおすすめなのです。

歯科医師が考える「コスパ最強オーラルケア」

「手磨きvs電動歯ブラシ」歯科医師が教える“コスパ最強”のオーラルケア
※写真はイメージです(Adobe Stock)
ここでいう「コスパ」とは、単に安い歯ブラシを買うことではありません。自分に必要なものにお金を使い、それを正しく、長く続けることです。


私が歯科医師として、まずおすすめしたい「コスパ最強」の組み合わせは、実はとてもシンプルです。

手磨き用歯ブラシ+フロスや歯間ブラシ+フッ化物配合歯磨剤。そして、定期的に歯科医院でチェックを受けること。

まずは、この基本をきちんと押さえることが大切です。電動歯ブラシは、あくまでこの基本を補う「道具」のひとつなのです。

「もっと効率よく磨きたい」「手磨きがどうしても苦手」という人は、電動歯ブラシを追加してもいいでしょう。その際は、歯並びや歯ぐきの状態、磨き方のクセなど、自分の口に合ったものを選ぶことが大切です。「高いから良い」のではなく、「自分に合っていて、正しく使い続けられるから良い」。これが、電動歯ブラシを選ぶときの大切な視点です。

では、手磨きと電動、結局どちらを選べばいいのでしょうか。私の答えは、「どちらでもいい」です。ただし、「自分が正しく使えて、毎日続けられること」が条件です。


手磨きで十分きれいに磨けている人が、無理に電動歯ブラシへ買い替える必要はありません。一方で、手磨きが苦手だったり、電動歯ブラシの機能によって磨き方を改善できたりする人にとっては、電動歯ブラシは十分、検討する価値があります。大切なのは、「電動か手磨きか」という二択ではありません。自分の弱点を補いながら、続けられる方法を選ぶことです。

そして、歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間は、フロスや歯間ブラシでケアをする。歯科医院で、自分では気づけない磨き残しや歯ぐきの状態を、定期的にチェックしてもらう。

これが、私が考える「コスパのいいオーラルケア」です。歯を守るための一番賢い選択は、値段の高い道具を買うことではなく、自分の歯を長く使い続けるための習慣をつくることなのかもしれません。

<文/野尻真里>

【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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