【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#134


 アルバム『パスト・マスターズvol.2』(1988年3月7日発売)②


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■『ヘイ・ジュード』①


 いわずと知れた『ヘイ・ジュード』である。


 私が若い頃、ビートルズの曲の人気投票をするラジオ番組がよく放送されていたが、そこで『イエスタデイ』(65年)、『レット・イット・ビー』(70年)と並んで必ずベスト3に入っていた曲だ。


 海外だと、さらに人気があったようで、一般に「ビートルズの最大ヒット曲」ということになっている。


 特にアメリカでは、1968年のビルボード年間ランキングのトップとなった。ちなみに同年の日本では、ある意味「日本のビートルズ」と言っていいザ・フォーク・クルセダーズ『帰って来たヨッパライ』が特大ヒットしている。いい時代だなぁ。


『ヘイ・ジュード』がこれほどまでに愛される理由は、まずはAメロのシンプルさが効いている。


 キーがFで、コードは「F」「B♭」「C」という主要3和音しか使っていない。これはコード進行オタクのビートルズ楽曲としては、かなりレアなことである。


 しかし、そんな基本コードの上に、ちょっと癖のある音列(ややこしくなるので説明省略)を乗せることによる「親しみやすいけど、引っかかりもある」Aメロが、この曲を大ヒットさせたように思う。


 あとは何といっても、視聴リンク「3:09」から、曲の半分以上、約4分を占める「♪ダダダ(歌詞カードから。私にはナナナに聴こえるが)」のリフレインだろう。【オリジナル記事で試聴する


 リフレインが長過ぎる結果、曲の尺も計7分を超え、平成のミスチルのようなことになっている。


 実は、このリフレインもちょっと癖のある作りなのだ。

こちらは臆せず説明すると、コード「F→E♭→B♭→F」を延々と繰り返すのだが、ポイントは2つ目の「E♭」。


 これ、主要3和音からは外れるちょっと特異なコードで、かつ「ビートルズ・コード」と呼ぶ人もいる、彼らの手癖のようなコードなのだ。


 具体的には「♪(ダーダーダー)ダダダッダー」(3:12~3:16)のところの響き。この、少しだけ奇妙な重い響きが、長い長いリフレインに飽きさせなくしている。


 このあたりにご興味のある向きは、安東滋『ビートルズのコード進行レボリューション』(リットーミュージック)の「ビートルズ進行のお約束パーツ“♭Ⅶ”」の章をご一読のほど。


 というわけで、一見親しみやすい童謡のような曲なのだが、そこにポール一流のピリリと効く、癖のあるスパイスをまぶすことで、世界的大ヒットになったのだ。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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