【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#23
今からちょうど10年前の2016年9月、深夜に放送されていたのがドラマ「徳山大五郎を誰が殺したか?」(テレビ東京系)だ。出演していたのは「欅坂46」である。
欅坂46は、総帥・秋元康が乃木坂46に続いて手がけた、「坂道シリーズ」第2弾の女性アイドルグループだ。この年の4月、デビューシングル「サイレントマジョリティー」で、いきなりオリコン1位を獲得した。
思えば、そのアイドル像は既存のイメージとは異なるものだった。特徴はクールでメッセージ性の強い歌詞と、感情を叩きつけるような激しいダンスパフォーマンスだ。
しかも、彼女たちはあまり笑わない。群れようとしない。さらに大人に媚びることも拒否しているように見えた。“怒れる若者たち”の代弁者という雰囲気だ。グループを牽引したのは抜群の表現力とカリスマ性を持つセンター、当時15歳の平手友梨奈(写真)だった。
テレビ東京は、それまでにAKB48の「マジすか学園」シリーズ、乃木坂46の「初森ベマーズ」など、積極的に“AKB系ドラマ”を制作してきた。欅坂46による本作は、その最新作だった。
舞台は私立の女子高校。
このドラマの注目ポイントは2つだ。1つは、これが殺人事件の犯人捜しを軸としたミステリーであること。映画「幕が上がる」などの喜安浩平をはじめとする達者な脚本家たちの手腕で、最終回が近くなっても真犯人の予測がつかなかった。
第2のポイントは、結成から1年足らずの欅坂メンバーが、ドラマ初出演という高いハードルに全力で挑戦したことだ。こちらも本人たちの大健闘と、映画「ホームレス中学生」などで知られる古厩智之監督を含む演出陣のサポートで、及第点の初演技となった。
このドラマでは、役名と本人たちの名前が同じだった。それぞれの顔と名前を併せて知ってもらおうという狙いは成功したといっていい。前述の平手友梨奈以外にも、本作で存在感を示していたメンバーが何人かいる。
不登校の女子生徒を独特の湿度で演じた長濱ねる。真面目な学級委員長の菅井友香。
2020年、欅坂46はグループ名を「櫻坂46」と改めたことで、その活動は停止された。欅坂46としては実質5年間だったわけだが、その印象は今も鮮やかだ。予定調和を排し、同世代が抱える重たい情念や心の葛藤をエンターテインメントに仕立てる取り組みは、日本のアイドル史に深く刻まれることになった。
(碓井広義/メディア文化評論家)

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