【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#137
アルバム『パスト・マスターズvol.2』(1988年3月7日発売)⑤
◇ ◇ ◇
■『ドント・レット・ミー・ダウン』
有名な曲である。
シングル『ゲット・バック』(69年)のB面。
タイトルは「がっかりさせないで」ぐらいの意味。いろいろな解釈があるようだが、基本的にはジョンからオノ・ヨーコに捧げられたストレートなラブソングだろう。
前年1968年の11月に、前妻のシンシア・レノンと離婚。そして69年の3月にヨーコと結婚。そんな離婚と結婚の合間、たぶんいちばん熱々だった頃にレコーディングされている。結果、こんなストレートなラブソングに行き着いた。
映画『レット・イット・ビー』(70年)のクライマックスであるビル屋上でのライブ、いわゆる「ルーフトップ・コンサート」で演奏されているので勘違いされがちだが、レコード音源は、あのときのものではなく、そのちょっと前にスタジオで録音されたものだ。
ただ、ライブと勘違いしてもおかしくないぐらい、ライブ感にあふれた演奏・録音になっている。【オリジナル記事で試聴する】
ビリー・プレストンのエレピもさることながら、よく聴けば、ぶんぶん唸るポールのベースが素晴らしい。地味なせいか、あまり語られないが、もし私がビートルズ時代のポール名演ベストテンを選ぶなら、必ず入れたいと思う。
とはいえ、そんなポールのぶんぶんベースを除けば、コードも構成もシンプルで、コピーもしやすかった。結果として、邦楽にもいくつか「ドント・レット・ミー・ダウン」チルドレンを見かける。例えば世良公則&ツイスト『あんたのバラード』(77年)とか。
さて、先述のようにシングルは「ルーフトップ・コンサート」版ではないのだが、あの時のライブ音源は残っているのだ。2003年のアルバム『レット・イット・ビー…ネイキッド』に入っているバージョンがそれ。
歌い出しの「♪ドント・レット・ミー・ダウン」を、ぜひ聴いていただきたい。スタジオ版に比べて、ジョンのリードボーカルをはさみ込むように、ポールとジョージのハーモニーが大きめにミキシングされているではないか。
3人がフォルテシモでぶつかり合うこっちのバージョンが、迫力があってとてもいい。がっかりする人などいないだろう。
▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。

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