フィリピン中部レイテ島タクロバン市のサンホセ国立高校で発生した銃乱射事件は、未成年の手によって40発もの銃弾が放たれ、3人の尊い命が奪われる未曾有の惨劇となった。いじめ加害者の被弾は無く、死傷者は全員が無関係な巻き添え。
地元警察に拘束された14歳の男子生徒が、スマートフォン普及とともに世界の若年層に爆発的に広がった残虐描写を含むモバイルゲーム「GoreBox(ゴアボックス)」に深く没頭していた事実が判明し、教育関係者や治安当局に衝撃を与えている。現場の2教室から回収された多数の空薬莢は、容疑者が犯行中に執拗に銃弾の再装填(リロード)を繰り返していたことを示しており、警察は少年がこのゲームを通じて現実の銃器操作を疑似的に訓練していた可能性が高いとみて重大な関心を寄せている。

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 「ゴアボックス」はインディーズ開発元「F2Games」が手掛け、主に個人クリエイターのフェリックス・フィリップ(Felix Filip)氏によって制作が進められてきた特異な物理シミュレーション型破壊・殺戮サンドボックスゲームである。2020年頃にサービスが始まり、「GoreBox:Remastered」「GoreBox:Animosity」といった改変を経て現在の仕様に至った。料金体系はAndroid版が「基本プレイ無料」で、広告やアイテム課金で収益を得る仕組み。一方、PC向け配信プラットフォーム「Steam」では700~900円程度の有料買い切り型で販売されている。対応はAndroid端末とWindows搭載PCが中心で、iOS版はアップル社の厳格な残虐表現規制により申請と削除を繰り返し、実質的に正規配信が行われていない。

 最大の特徴であり事件との関連が危惧されるのは、立方体を組み合わせた素朴なピクセル調グラフィックながら、実態は凄惨極まる「人体破壊シミュレーター」である点だ。高度な「アクティブ・ラグドール物理」エンジンが組み込まれ、キャラクターが銃撃や爆発を受けると骨折や肉体の断裂、鮮血の飛散が精緻に描写される。さらに銃器操作が異様なまでにリアルに再現されており、単なるボタン操作ではなく「マガジンを抜く」「薬室に装填」「スライドを引く」「安全装置を解除する」といった一連の動作を個別に行う必要がある。この「精密な操作体験」が、現実のグロック拳銃を手にした14歳の少年に冷酷さと的確なリロード技術を身に付けさせた要因と指摘されている。

 こうした暴力性から、配信元のGoogle Playストアでは「17歳以上対象」や「18歳以上(成人のみ)」の年齢制限が敷かれている。
しかし実際の主な利用者層は11~15歳前後の中高生男子である。YouTubeやTikTokで「残虐かつ独創的な殺傷方法」を競う実況動画が拡散し、親の目が届かない環境でスマートフォンを持つ少年たちに流行が定着した。Google Playストアでの累計ダウンロード数は1000万回を突破し、数十万人規模の公式コミュニティ(Discord)の統計からも世界的な巨大プレイヤー層が確認されている。

 アクティブユーザーが多い上位10カ国は、首位のアメリカに続きブラジル、ロシア、インドネシア、フィリピンが5位に入る。以下、メキシコ、トルコ、インド、ベトナム、ウクライナと続く。フィリピンではスマートフォン普及の急速な進展と無料プレイの敷居の低さが、中高生への浸透を後押しした。

 このゲームは事件以前から心理学者や教育関係者に危険性が指摘されていた。第一は過度な暴力描写に触れ続けることで生じる「心理的鈍感化(デセンシタイゼーション)」である。繰り返し人間の肉体を破壊することで暴力や命の重みに対する感覚が麻痺する恐れがある。第二はユーザーが武器やマップを自由に作成・共有できる「Mod文化」の弊害で、実在の学校や公共施設を模したマップで銃撃戦を行う過激コンテンツが温床となっていた。第三は銃器操作を学びすぎることで現実の武器への恐怖心が薄れ、即座に扱えてしまう「実戦的脆弱性」である。

 本来安全であるべき学校を血に染めた14歳の少年は、まさにこのデジタルの闇に呑み込まれていた。
個人の怨恨が、警察官の親族から流出した銃器と結びつき、さらに疑似訓練で増幅されたとき、暴力は社会に牙を剥く。今回の事件は地方都市の銃管理不備にとどまらず、未成年のメンタルヘルス、ネット上の暴力コンテンツ規制、そしてスマートフォンを通じて子供の精神に忍び寄る見えない脅威に、フィリピン社会ひいては国際社会がどう向き合い環境を再設計するかという重い問いを突きつけている。
【編集:Eula】
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