カンボジアの首都プノンペンにある国防省直轄の総合病院「プリア・ケット・メリア病院(Preah Ket Mealea Hospital)」を舞台とした違法腎臓移植事件について、現地有力英字紙「クメール・タイムズ(Khmer Times)」は、事件の背後に蠢く国際的ブローカー組織の手口と、非人道的な搾取の全容を報じた。同紙や現地捜査当局の情報により、執刀を担った中国人医師団の実態や、インドネシアの貧困層を狙った臓器売買の過酷な状況が明らかになっている。


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 同紙によれば、国防省傘下の同病院で実際に腎臓摘出および移植手術を行っていたのは、カンボジア人医師ではなく、海外から招かれた「中国人医師団」であった。病院側はこれまで、外国人医師の受け入れを「客員教授」の招聘や「医療指導プログラムの一環」と偽装していた。しかし実態は異なり、中国人医師らはカンボジアに常駐するのではなく、患者と提供者のマッチングが完了し手術準備が整った段階で渡航する「出張執刀チーム」として機能していた。多額の資金が動く闇の移植ツーリズムにおいて、主に中国人富裕層患者の手術が多く、言語の壁がなく経験豊富な中国人医師を実働部隊として呼び寄せる仕組みが構築され、病院幹部らが施設提供を通じて巨額の不当利益を得ていた癒着の構図が指摘されている。

 一方、臓器提供者として狙われたのはインドネシアの経済的困窮者たちである。提供者の多くは、新型コロナウイルスのパンデミックで職を失った工場労働者や教師などの若者で、多額の借金を抱えていたとされる。現地報道によれば、腎臓1つにつき1億3500万ルピア(約9000米ドル)の報酬が約束されていた。しかし、インドネシア側の斡旋グループは需要者から腎臓1件につき2億ルピアを受け取り、そのうち6500万ルピアを仲介料として差し引き、残りを提供者に渡すという悪質な搾取を行っていた。

 さらに深刻なのは術後の扱いである。密売組織側は帰国後の専用クリニックや医療的フォローアップ体制を一切用意せず、提供者はカンボジアでの違法手術後、適切なケアを受けないままインドネシアへ強制的に帰国させられていた。事態が発覚し、インドネシア警察当局によって救出・保護されて初めて、公的機関による医学的な経過観察を受けられたのが実情である。命を削って得た報酬も、その大半が借金返済に消えたとみられている。


 需要者としては日本をはじめとするアジア各国の富裕層が含まれており、日本国内の捜査当局によって、患者にカンボジアでの移植をあっせんし多額の仲介料を得ていたブローカーの男らが逮捕された事実も、この巨大な犯罪インフラの一部である。

 資金管理や患者を送り込む日本の仲介組織、貧困層から提供者を搾取するインドネシアの密売グループ、実働部隊として出張執刀する中国人医師団、そして隠れ蓑として軍病院の施設を提供するカンボジアの腐敗層。各国の犯罪組織が結託した高度な役割分担が鮮明となっている。カンボジア当局は現在、インターポール(国際刑事警察機構)が主導する国際的な取り締まり作戦と連動し、関係各国の警察機関と協力しながら、公的機関内部に巣食う汚職の徹底追及と巨大犯罪組織の壊滅を目指している。
【編集:af】
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