先日、ABEMAで2話まで放送され話題を呼び、7月10日(金)には最終話が放送される「THE LAST DRAW」(※)。

世界初のeスポーツ版リアリティショーといえる同番組は、リーグ所属の選手を合宿形式のオーディションで選考するという挑戦的な取り組みだったといえます。


放送を見た筆者としては「どんな発想でこの企画に至ったのか」「なぜ合宿なのか」「なぜけん玉なのか」「どんな基準で21名を選んだのか」など、制作サイドに聞いてみたいことだらけ。

今回は、Cygamesのeスポーツ部門を統括しているマーケティング本部副本部長の川上尚樹氏に、企画のボツ案も含めて、ウラ話を聞いてきました。

※2026年6月8日からABEMAで放送された密着番組。『Shadowverse: Worlds Beyond(以下、シャドバWB)』の新リーグ「Shadowverse Premier Series(以下、プレミアシリーズ)」の所属選手を決めるためのオーディション選考(2泊3日の合宿など)、及び「Shadowverse Fes 2026」で実施された最終ドラフトの様子が放送された。

◆なぜ人間性を選考基準に?──今回のリーグが「人柄や発信力を大事にしている」と世間に伝えたかった
──合宿の話に入る前に、新しいリーグについてお話を伺いたく。プロリーグを刷新するという決断に至った経緯を教えてください。

川上:『Shadowverse』時代は「本格スマホeスポーツ」という言葉を掲げ、競技シーンを中心とした施策を行っており、その中でもプロリーグは、競技シーンにおける最高峰の舞台を作り上げ、プロ選手の持つ卓越したプレイスキルを軸に、スター選手を生み出すことを目標としていました。

そのような中で『シャドバWB』はリリース後、競技だけではなく、様々なインフルエンサーが出演する 配信企画や、ゲーム内でのロビー企画といった施策も増え、競技以外の楽しみ方も大きく広がりました。

そうした変化を踏まえ、リーグも進化する必要があると考えました。プレミアシリーズでは、試合の勝敗だけではなく、チームや選手が主体的に『シャドバWB』の魅力を発信し、ファンとともに成長していくストーリーを描いていくことで 、その人間性や発信力を軸にスター選手を生み出すことをことを重視しています。

競技シーンそのものを盛り上げるだけではなく、ゲーム全体の盛り上がりにつながるリーグを目指したいという思いが刷新の背景にあります。

──リーグの刷新に伴って、話題になったのは、選考基準です。
公募の条件として、5つの要素(発信力、未来を担う自覚、人間性、実績・プレイスキル、参戦チーム意向)を公表した背景を伺いたく。

川上:前作のシャドバのプロリーグは、「うまければ正義」というイメージが先行していて、それが視聴者の中でも強くなっていたので、その意識を変えたかったというのがあります。

当然、ゲームの「強さ」は求められますが、現状、他タイトルのプロリーグにおいても「強さ」だけを求められているリーグというのは、少ないのではと感じています。

個人的な意見ですが、本来プロ選手というのは、様々な企業の看板を背負うということだと思っています。また視聴者が選手のプレイや配信を見て「そのゲームをやりたい」と思えるような存在にならないと、新しいリーグには未来がないと考え、プレイが上手いだけではなくてその上で多くの方に応援してもらえる存在であって欲しいという意図を込めて、今回の選考基準を設けました。

──プレミアシリーズの選考は「逆指名制度」、「ドラフト」と「オーディション&最終ドラフト」の3枠で行われましたが、これも選手選定が「強さ」に傾倒しないような仕掛けということでしょうか。

川上:はい。ドラフトで選ばれるような方々は、チームやシャドバ界隈から実力が認められていて、ある程度、界隈における認知も既に兼ね備えている方です。

そういった方たちは、そのままリーグに参加していただきたいと考えました。

ただ、私たちとしては、今回のリーグが「強さだけではなくて、発信力や人柄も大事にしていること」を世間に伝えたかったので、強さ以外の選考基準でも選手になれる可能性を残残すべく、ドラフトに加えてオーディション選考の枠を設定しました。

また、オーディションを番組として放送することで「いまは無名だけどシャドバが好きで発信を頑張ってくれている方たち」「これから頑張ろうと思っている方たち」を発掘して「新たなスター」を生み出せる可能性があると考えました。

勿論、前回のリーグと同様に、チーム側に選手選定を任せてしまう選択肢もありました。


ただ、私たちとしては、シャドバWBから始めてくれた方々や配信をしてくれている方々に「可能性を見出していきたい」という想いがあったので、オーディションを実施することにしました。

結果として、ABEMAでの放送も含めて、界隈の人たちがまだ知らないような方々にフォーカスできました。新しい可能性を持っている人たちを世の中に出せたというのは「次のプレミアシリーズに参戦したいと思ってもらえるきっかけ」も作れたと考えています。

──ということは、来年以降のプレミアシリーズでも、また今回のオーディションに近いような一般公募を実施するということでしょうか。

川上:はい、来年度 「Shadowverse Premier Series 27-28」につきましても、一般公募からオーディション選考を実施する予定ではあります。

──来年も楽しみです。話を戻すと、このオーディションというのは、プレミアシリーズの選考でありながらも、ひとりでも多くのシャドバプレイヤーに、チャンスを与える施策だったと。ちなみに今回のオーディション三次選考の形式が「合宿」になったのはなぜでしょうか。

川上:今回の企画を考えるうえで、世の中にあるオーディション番組やリアリティショーを片っ端からチェックして、構想を練っていきました。

最終的に合宿形式であれば、共同生活を送る中で「各候補者の人柄など、私たちが見たい部分が出るんじゃないか」と判断しました。

スケジュールの都合上、どうしても選考期間には限りがあるので、2泊3日という短期間で、皆さんのことを知ることができるのも合宿の利点でした。

◆いま明かされる合宿のボツ案とは?──途中で「脱落者が出る」が却下となった理由
──ここから合宿の話に入っていきたく。
合宿のメニューでは、けん玉やフリースロー、動画作成といった、ゲームとは関係がないものが多く見られました。これにはどんな意図があったのでしょうか。

川上:けん玉やフリースローなどは、チームの仲を深めるレクリエーション的な部分も兼ねていて、事前準備なく誰でも楽しみながらできる種目として導入したのですが、合宿に来ている皆さんが「シャドバ」のことを好きなのは大前提として「シャドバ以外のことも頑張れるか」を判断する意図がありました。特に動画作成については発信力を課題とする選手が非常に多かったため意図的に実施しました。

プレミアシリーズの選手に選ばれた場合、シャドバの試合だけに取り組めばいいわけではありません。現時点で自身が苦手としているような配信や動画作成、SNS発信やファンとの交流など様々なことに取り組まなければならない場面が多く出てきます。そういったときにプレミアシリーズの選手としての自覚をもって、頑張れるかどうかの素養も選手選考における判断軸として見させてもらいたかったというのが理由としては大きいですね。

──たしかに、今やプロゲーマーは、試合や練習だけでなく、興行イベントへの参加や宣伝活動など、競技とは距離のある活動をするのが当たり前になっています。

川上:そうですね。よって、ゲーム以外の自分が苦手なことや興味がないようなことに対して主体的に取り組めるか、周囲の人たちが困っていたら自主的に助けられるか、そういう姿勢やホスピタリティを見たかったんです。なので、けん玉やフリースローなど、ゲームとはかけ離れた種目を設定しました。そういったものにでも一生懸命になれるかチームメイトを応援できるか、そういった姿勢を見させていただきました。


その姿勢が表れた人たちに対して、私たちは「プレミアシリーズに参戦する覚悟がある」という判断をするようにしていました。

結果として、合宿に来てくれた皆さんは、とても頑張ってくれました。

提示された課題に対して「これってシャドバと何の関係あるんだ?」と感じた人もいたと思いますが、それがプレミアシリーズの選手になるために必要なことだと理解して、全力で取り組んでくれていた印象です。

──合宿のメニューを決める際、ボツになった案もあるのでしょうか。

川上:合宿場には、芝生のグラウンドがあったので、そこでサッカーのPK戦やマラソンなど、激しく体を動かす課題も検討しました。走ったり体を動かしている姿のほうが番組の映像的には面白いですし、わかりやすく頑張っているという画も撮れます。

ただ、運動が苦手な候補者たちもいるなかで、怪我の危険性があるのと、彼らにとってマイナスな見え方になる可能性もあるので、過度にフィジカルに負荷を掛ける企画はボツとしました。

また、チームメンバーの決め方についても別の案がありました。

1人の代表者を決めて、代表者が好きな選手を取っていくドラフト形式を検討していましたが、最終的には、そこまでの選考の評価などを加味しながら運営側でチームを決める形に落ち着きました。

──たしかに、それはそれで番組としては盛り上がりそうですが、最後まで残ってしまう候補者が可哀そうです…。様々な配慮がされている印象を受けました。ちなみに世の中のオーディション系の番組では「途中で脱落させる」というシビアなタイプもありますが、そのような案もありましたか。


川上:その案もありました。勿論、リアリティショー的な面白さを考えた時、脱落者を初日で帰らせたほうが、番組としては「画になる」部分もあるのかもしれません。

ただ、1日だけで候補者たちのことを知るのは難しく、しっかりと3日目のチーム戦まで戦って、やり切ってもらった上で評価をしたいと判断しました。

また今回の選考で残れなかったとしても、候補者たちの「シャドバ」の活動が終わるわけではありません。今回プレミアシリーズの選手になれなかったとしても、合宿の経験が彼らにとって何かプラスになってほしいという想いがありました。

◆何を基準に選んだのか?──積極的に発言をしているか、チームのために頑張っているか
──最終的には、どのような「基準」で最終ドラフトに進む選手を選んだのでしょうか。

川上:いくつかの基準がありますが、3日間の中で「どれだけチームに貢献しようとしていたか」「自分が苦手だと思うことにも前のめりに主体的に行動できていたか」を重視して見ていました。

動画制作に対してどれだけ主体性を持って取り組めていたか、そしてチーム戦も実施をしたので、その成績や試合までの準備過程などももちろん評価しています。

チームの中で、まとめ役になる人もいれば、黒子に徹する人もいます。自分がどういう役割を持ってやろうとしているか、積極的に発言をしているか、チームのために自身の強みをどう生かして頑張っているかなど。総合評価で選びました。

──選考基準については、読者も気になる部分なので、もう少し突っ込んで聞きたく。
ふぇぐさんが最終ドラフトに残ったことについて、LASTDRAW内での演出もあり「運営の忖度なのではないか」という、やや意地悪な勘ぐりもできてしまうのですが、実際、ふぇぐさんはどのような判断で選ばれたのでしょうか。

川上:ふぇぐ選手は、忖度なく、プレミアシリーズで選ばれる選手としてふさわしいと考えて、最終ドラフトに進んでもらいました。

ふぇぐ選手が最初のドラフトで選ばれなかったとき、SNSの声でも「配信をしていないからな」「明らかに頑張っていなかったよね」という声がすごく多かったんです。元世界王者という肩書がある中で選ばれなかったことには、悔しさもあったと思います。

ただ、番組の中でもありましたが、実際、ふぇぐさん自身もドラフトの結果を受けて「必死さや泥臭さ、ストイックさが足りていなかった」と自身に足りていなかった部分を自覚して、それを日々の配信活動や合宿の場でちゃんと力に変えて、汚れ役や年下のチームメイトのサポートに回る姿勢を見せてくれていて、チーム戦でもしっかりと結果を残してくれていました。

それらの点を考慮して、ふぇぐ選手には最終ドラフトに進んでもらう判断をしました。

──たしかに合宿でのふぇぐ選手は、自身のアピールだけでなく「チーム全員で最終ドラフトに残ろう」という、利他的な言動が多かったように思えます。そのほかの候補者で印象に残っている方はいますか。

川上:Stylish_deko選手です。シャドバに懸ける思いがすごく強い方で、最初の個人面談でも「選手になりたい」という気持ちが前面に出ていました。

合宿でも、2日目の夜に「みんなで最後に花火をしよう」と、積極的に参加者全員に声をかけて合宿自体にいい雰囲気を作ろうとしてくれていました。

「本当に花火がやりたかったのか」「狙ってやった立ち回りなのか」は誰もわかりませんが、そこは問題ではなく、そういう空気作りをしてくれる人がチームに入ることで、チーム自体にも見ている人たちにも良い影響を与えてくれると考えました。

◆オーディション選考からリーグに参加する選手たちに期待すること
──オーディションを勝ち抜いた選手たちに、どんなことを期待していますか。

川上:オーディションを勝ち抜いた選手たちには、ドラフトで選ばれた人たちとは違う役割を期待しています。獲得したチームの皆さんも同じ考えをお持ちだと思います。

勿論、プレミアシリーズでの試合で結果を出してくれることも期待していますが、今回のテーマの1つである「発信」の部分であったり、または這い上がってきた、必死さや執念などの気持ちの部分にも期待したいです。

初回のドラフトで選ばれなかったというのは、そのタイミングでは「何か」が足りていなかったということなので、「その足りない部分をどう個性や努力で補ってくれるのか」に注目しています。

ぜひチームの人たちともしっかり話して、自身の個性や強みを生かせる方法を考え、チームに足りない部分を補ったり、さらに強化できるような存在となってほしいです。

──最終ドラフト後、各チーム4名~5名の選手が所属することになります。ただ今回のプレミアシリーズのルール上、試合に出場する選手は3名。所属する選手全員が出場するとは限らないということでしょうか。

川上:そうですね。よって仕組み上、年間を通じて1試合も出場しない選手が出てくる可能性はゼロではありません。

ただ、そこはチーム内でのレギュラー争いになるので、ライバルとして切磋琢磨してもらえることを期待しています。

──先ほど(オーディションを勝ち抜いた選手たちには)「個性を発揮してほしい」という話がありましたが、プレミアシリーズの中で個性を発揮できる場は、用意されているのでしょうか。ゲームの対戦をするだけだと、個性を出しづらいのかなと思いまして。

川上:当然、試合運営はしっかり行っていきますし、日々の発信活動を評価するような仕組みは準備予定ですが、選手が個性を発揮するための何か特別なものを用意するということは現時点では考えていません。

自分の持っている能力や個性をどう発信していくかは、チーム次第、その選手次第だと考えています。

勿論、対戦中はしっかりと試合をやっていただき、それ以外の状況では「チームの人間としてどのような発信をしていくか」になると考えています。

配信、SNS、動画投稿、もしくはアナリストとして貢献するのか。またはシャドバの実力でレギュラーを勝ち取って、チームの勝利という形で貢献するのか。全てはチームの方針と本人の選択次第です。

あくまでも、自分にできることを自分たちで考えてもらって、どのように動いてもらうのかはお任せする想定です。

──本日はありがとうございました!2026年7月11日の「プレミアシリーズ」開幕戦を楽しみにしています。

「Shadowverse Premier Series」特設サイト:https://ps.shadowverse-wb.com/26-27/

「Shadowverse Premier Series」公式YouTube:https://www.youtube.com/@Shadowverse_PS

「Shadowverse Premier Series」公式X:https://x.com/shadowversePS
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