2026年7月30日に発売された『ほの暮しの庭』は、日本一ソフトウェアが手がける生活シミュレーションゲームです。奥深い山間にある小さな村で、庭の野菜を育てたり、弓や罠で獲物を狩ったりと、自分のペースで過ごすスローライフな毎日を楽しむことができます。


ただし、そうした日常だけが本作の醍醐味ではありません。村に根付く謎めいた掟や、夜ごとに村を彷徨う怪異など、「常ならざる異変」がもたらすホラーテイストも、『ほの暮しの庭』が備えている魅力のひとつです。

こうしたホラー要素は、当初はっきりと明かされていませんでした。想像を促す妖しいシーンや雰囲気などはあったものの、ホラー作品であることが明示されていたわけではありません。

2025年9月に実施したインタビューでも、企画・ゲームデザインを担当する溝上侑氏が「明るくてほのぼのした平和的なゲーム」と語り、ホラーについても「怖いのはやり尽くしましたよね」とコメント。さらに、開発責任者の勝又美桜氏も「みんなもう『ネタが出ないよ』って」と応じています。

しかし、『ほの暮しの庭』にホラー要素があったことは、皆さんすでにご存じの通りです。2026年2月には、「怖いことが起きない」あんしん暮しモードの存在が発表されました。つまり、通常進行となる「ほの暮しモード」では「恐ろしいことが起きる」ことも明らかになったのです。

実際に製品版を遊んでみたところ、ホラー要素は間違いなく「ほの暮しモード」に盛り込まれており、当初からホラー要素を伏せていたことがうかがえます。その意味では、2025年9月のインタビューにおける回答は「とぼけていた」、意地の悪い言い方をするなら「嘘だった」と言えるでしょう。

しかし、あのとき語られていた発言の全てが嘘だったのでしょうか。
製品版をプレイした今、当時の発言を改めて振り返ってみましょう。

■「明るくてほのぼのした平和的なゲーム」は、嘘とも言い切れない
まず、「明るくてほのぼのした平和的なゲームが作れて嬉しい」という発言から見ていきましょう。『ほの暮しの庭』の全体を見た場合、「ほのぼの」や「平和的」という表現が、あまり適切とはいえないのは確かです。

しかし、昼間の彼ヶ津村に限ってみれば、畑を耕し、動物を育て、魚を釣り、村人と交流し、自分の家や庭を整えていく、まさにスローライフそのものです。

そして、こうした部分だけを抜き出して遊べる「あんしん暮しモード」に絞れば、あながち嘘とも言い切れません。……かといって、これだけで「平和的なゲーム」と呼ぶには色々足りなさすぎますが。

■「怖いのはやり尽くしました」は、明らかに100%ダウト
一方、「怖いのはやり尽くしました」という発言については、擁護の余地がないでしょう。「怖いのはやり尽くしましたよね」「ネタが出ないよ」とまで言っていたのに、本作にはホラー要素がこれでもかと盛り込まれています。

夜の彼ヶ津村は、昼間とはまったく違う顔を見せ、怪異が村のそこかしこに現れます。しかも、単一の怪異が出てくるだけではありません。

姿や行動パターンの異なる様々な怪異が登場し、その恐怖の見せ方も千差万別です。「ネタが出ない」と言っていた人たちが作った作品とは思えないほどです。
この発言は、やはりダウトと言うほかありません。

■「毎日、可愛い動物や綺麗なお花、美しい川とか見ながら」作ったゲームなの?
当時のインタビューでは、「毎日、可愛い動物や綺麗なお花、美しい川とか見ながら開発しています」とも述べています。実際、開発中にどのような環境を見ていたのかまでは分かりませんが、そうした影響が盛り込まれていると解釈できる発言です。

これについては、実際のところうなずける点が多数あります。ゲーム内の景観は美しく、自然豊かなことは間違いありません。四季によって移り変わる村の景色や、農作物、花、川、野生動物など、昼間の彼ヶ津村には「生」を感じさせる光景が広がっています。

そして、登場する動物も可愛らしく描かれていることが多く、最初期に登場するヤギには愛らしいリボンが結ばれているほどです。

そのため、「可愛い動物」という言葉に嘘はありませんが……可愛い動物は(一部)死にます。可愛かろうと、残酷な運命は降り注ぐ。なんとも、『ほの暮しの庭』は罪深いゲームです……。

■「ジョウロ片手に歩き回って、好きな植物でガーデニング」は間違いない
本作が生活シミュレーションであることは、当初から明らかになっていました。しかし、後にホラー要素が判明したことで、いわゆる「スローライフ」な部分は単なるデコレーションに過ぎないのではないかという懸念も生まれました。


しかし、その懸念はまったくの杞憂で、発言通り「ジョウロで水を撒き、好きな植物を育てる」という要素はしっかりと盛り込まれています。むしろ、生活シミュレーション部分だけを抜き出しても成立するくらい、しっかりとしたゲーム性を楽しめます。

もちろん、その楽しさは昼間に限った贅沢ですが……!

■「寝ちゃうくらいリラックスできる」はその通り……だが、しかし……?
インタビューにて、四季に合わせて音楽が変化し、また雨の日には落ち着いたチルい音楽が流れるなど、聴覚に訴える魅力も語られました。そして、「寝ちゃうくらいリラックスできる」とも明言しています。

確かに、音楽面も魅力的で、情景に合わせて豊かな楽曲が耳をくすぐります。一日の労働が終わった後、宵闇に身を委ねれば、美しい調べと共に眠りにつく至福のひとときを味わえることでしょう。

しかし、眠りにつくまではよくとも、その後に問題が持ち上がります。

戸を叩く音が主人公の安眠を破るため、穏やかな時間はほんのわずか。そして強制的に起こされた後は、恐怖の時間が訪れます。『ほの暮しの庭』の眠りは、必ずしも朝の訪れとセットではないのです。

発言は正しかったものの、それが穏やかな一日の終わりを意味するものではありませんでした。

■「朝日を待つゲームです」は、まさにその通り
今回もっとも注目したい点のひとつが、「朝日を待つゲームです」という発言です。


インタビューの時点では、「明日は何をしようかな」と、先の楽しみが待ち遠しいといったニュアンスで語られていますが、村に住む住人たちにとっては、「恐るべき怪異が去る時を、ただ待ちわびている」というのが実態ともいえるでしょう。

夜に姿を現し、朝日と共に消えていく──世に伝わる怪異の多くと同じように、『ほの暮しの庭』の怪異たちも、日の光を避けるように去っていきます。そのため、「朝日を待つゲームです」という表現は、『ほの暮しの庭』の世界観を的確に表しているとも言えるでしょう。

この表現を特に評価したいのが、まだホラー要素を隠していた時に述べたという点です。一見なんでもない発言のようですが、実際の『ほの暮しの庭』を知った上で振り返ると、ホラー要素の示唆とも受け止めることができ、まだ明かせない要素をできる限り伝えていたのかもしれません。

視点を変えてみると、解釈も変化する。ホラー作品でもお馴染みの手法ですが、それをインタビューに織り交ぜるあたり、さすがの手腕と言わざるを得ません。

■「今後も変わらず」「可愛らしいものをどんどん」という発言に、胸が震える……!
当時のインタビューの締めくくりに、勝又氏は「今後も変わらず可愛らしいものをどんどん作り出していけたらと思います」と述べました。

『ほの暮しの庭』は、「可愛らしさ」も盛り込まれたゲームでした。もちろん、それだけではないことは、皆様もご承知の通りです。

そんな『ほの暮しの庭』のような、「可愛らしいもの」を「今後も変わらず」「どんどん」作り続けると発言した勝又氏。それが現実になるかどうかは、これからの展開次第ですが……『ほの暮しの庭』のように、可愛く、そして恐ろしいゲームが続々と出てくることを想像するだけで、胸が震えます。
期待と恐怖で。
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