デジタルカメラが細部まで正確に写し出すのに対し、フィルム写真には少しやわらかく、わずかな曖昧さを残す独特の魅力があります。光のにじみや粒子感、階調のゆらぎといった偶然の要素が、被写体だけでなく、その場の空気や撮影時の気分まで写し取ってくれるように感じられます。完璧ではないからこそ、写真を見る人の記憶や感情に静かに残るのかもしれません。
そしてフィルム撮影では、シャッターを押した直後に答え合わせはできません。ピントは合っていたのか、明るさの設定は適切だったのか。そんな小さな不安を抱えたまま、次の一枚へ進むことになります。フィルム一本で使えるコマ数も限られているため、何気ない場面でも「本当に今、撮るべきか」と立ち止まる瞬間があります。その緊張感があるからこそ、ファインダー越しに見る時間は長くなり、シャッターを切る行為にも自然と気持ちがこもります。
7月の台湾コスプレ取材では、ミラーレスカメラとともにフィルムカメラも持参しました。今回使ったのは、1971年に登場したニコンの機械式一眼レフ「Nikon F2」です。プロの現場を想定して作られた堅牢なカメラで、基本的な撮影機能は電池なしで動作します。ずっしりとした金属ボディ、フィルムを巻き上げる手応え、そして力強いシャッター音は、撮影体験を豊かにしてくれる魅力です。
そして使ったフィルムは、ヴィンテージ調の色合いを楽しめる「ILFOCOLOR Vintage Tone 400 Plus」、自然な色再現と扱いやすさが魅力の「FUJIFILM 400」です。
スナップ写真
台北カメラ街
台湾ビール工場
三重
台北の街を歩くと、エリアごとに異なる表情に出会えます。近代的な高層ビルが立ち並ぶ景色がある一方で、歴史を感じさせる廟や古い建物、緑豊かな公園も街の中に自然に溶け込んでいます。そんな多彩な台北の町並みを撮影するため、「ILFOCOLOR Vintage Tone 400 Plus」の少し褪せたような色味や、やわらかなトーンが加わることで、日常の街角もどこか懐かしい印象に写し出してくれます。
フィルム撮影の面白さは、レンズだけでなく、選ぶフィルムによっても写真の表情が大きく変わることです。同じ場所、同じ光景でも、フィルムが変われば残る色や空気感も変わります。その違いを楽しめることも、フィルムカメラで街を撮る醍醐味です。
風景写真
高雄駅
高雄(蓮池潭)
高雄(龍虎塔)
美麗島駅
台湾第二の都市・高雄へは、台北駅から台湾高速鉄道を利用してアクセスできます。近代的な都市景観が広がる台北とはまた異なり、高雄には港町らしい開放的な空気と、ゆったりとした時間が流れています。
そんな高雄の絶景を撮影する際に選んだのが、富士フイルムのカラーネガフィルム「FUJIFILM 400」は、街歩きのスナップから風景まで幅広い場面に使いやすいフィルムです。ISO 400の感度を備えているため、晴天の屋外だけでなく、曇りの日や建物の中など、光量が限られるシーンでも撮影しやすいのが嬉しいところです。旅先の景色を特別なものとして誇張するのではなく、そのときに歩いた街の空気や何気ない瞬間ごと記録したい時に頼りになる一本です。
人物写真
猫猫『薬屋のひとりごと』/伊登/Idun(Instagram:yuiyui331)
【2026漫画博覧会】
盈盈『風燕伝:Where Winds Meet』/黎 Rei(Instagram:yayoi_rli)【2026漫画博覧会】
綾波レイ「エヴァンゲリオン」/米(Instagram:s._.zumi)
四巫日モミ(Instagram:momihi__444)、X:@momihi__44)
台湾Vチューバー/小楠(Instagram:naaaaaaam_cos2023、X:@Naaamuumm)
フィルムカメラの楽しさは、街の景色や旅の記録だけにとどまりません。人物を前にすると、光の回り方や肌の見え方、背景の色までが一枚の印象を左右します。デジタルのように撮影後すぐ確認できないからこそ、撮る前に「今日はどんな空気感を残したいのか」を考える時間が生まれます。被写体の表情や服装、撮影場所の光を見ながらフィルムを選ぶことも、シャッターを切るまでの大切な準備です。
ポートレート用フィルムの代表格として知られるのが「Kodak Portra 400」です。自然な肌色を表現しやすく、さまざまな明るさの場面に対応しやすいことから、多くの写真愛好家に選ばれています。 ただし、人物を撮るなら必ずPortra 400を選ぶべき、というわけではありません。人物の存在感を鮮やかに引き立てたい日もあれば、色数を抑えて静かな雰囲気に仕上げたい日もあります。
「ILFOCOLOR Vintage Tone 400 Plus」は、わずかに色褪せたようなトーンが特徴で、街並みや人物に時間の経過を感じさせるような表情を添えてくれました。
「FUJIFILM 400」は、目の前にある色や光を過度に演出せず、人物が映る景色をまっすぐ残しやすかったです。
どちらが優れているという話ではなく、撮影したいテーマや被写体との距離感によって、選ぶ意味が変わります。現像後の写真に残るのは、人物の姿だけではありません。その日に歩いた街並み、撮影の合間に交わした会話、暑さや風の感じまで思い出すことがあります。きれいに撮れたかどうかだけでは測れないことこそが、フィルムカメラで人物を撮る面白さだと思います。
撮影:乃木章(X:@Osefly)


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