「契約満期と移転白紙という現実の中でも、『この場所をなくしてはいけない』という想いで継続を決意しました。音楽の原点を未来へつなぐための挑戦に、どうか力を貸してください」
6月上旬、クラウドファンディングのサイトにこのように書き込んだのは、東京目黒区のライブハウス・鹿鳴館のオーナーの山口高明氏だ。
しかし昨年12月、同ライブハウスは入居するビルの老朽化などを理由に営業終了を発表することに。様々なアーティストから営業終了を惜しむ声が上がっていた。そんななか、一縷の望みをかけたのが“クラウドファンディング”だった。今回、山口氏が“ロックの聖地”の再起をめぐる経緯やその葛藤を本誌に語ってくれた。
「本来、‘24年1月をもって契約満期により移転する予定だったのですが、発表直後から大きな反響が起き、その声にビルのオーナーが応える形で営業を延長する事ができたんですね。ですが1年の延期後、移転先予定の話が白紙となり、再び“続けられないかもしれない”という現実に直面したのです」
そこで山口氏が思い当たったのが、クラウドファンディングという手段だった。
「当初は抵抗があったのです。例えばコロナ禍のころに様々な人たちがクラウドファンディングをはじめたじゃないですか。その時は世界中が大変なときに、ライブハウスなんかが被害者のように“お金を恵んでください”なんて言うのは許されるのだろうか……と。
しかし、移転先の話がなくなってしまった以上、背に腹は代えられない。
■限定20着のコラボTシャツはわずか1分で完売
第一目標額は500万円に設定。今後、新しい店舗が決まった際の契約金、防音などを含めた内装費、倉庫レンタル代、人件費などを踏まえた金額だったが――。
「すると、わずか9日で500万円に到達したのです。こんな短い期間で皆さんからの支援がいただけるとは思っていませんでしたから驚いたのと同時に、感謝の念でいっぱいになりました。“まだ鹿鳴館を求めてくれている人たちがこんなにいるんだ”と」
かつて鹿鳴館で数多くのライブをこなした“あのヴィジュアル系ロックバンド”もクラウドファンディングに力を貸してくれた。
「DIR EN GREYが支援リターン品として鹿鳴館とのコラボTシャツを、制作費全額負担で出品してくれたのです。20着限定のこのレアTシャツは、なんと1分で完売。これには本当に助けられました。もし今後いろいろなバンドのご支援をいただけたら、大変ありがたいと思います」
6月15日現在の支援総額は、約597万円。新店舗の費用には約3000万円を予定しており、「新鹿鳴館を、目黒時代以上に理想的な場所にしたい」との思いから、ネクストゴールを1000万円に設定した。
「まだ新店舗は決まっていませんが、知り合いの不動産関係の方々が動いてくださり、複数のところから内見の話などをいただいている状況です。
私は‘87年に鹿鳴館に入社し、照明や音響を実地で学んで、オーナーという立場を引き継ぐことになりました。このライブハウスは、いわば私の人生のほとんど全てといっても過言ではありません。これからも新鹿鳴館を通して、“アーティストの全て”を届ける空間を提供していきたいと考えています。
すでに多くの方々からご支援を頂いていますが、実際の目標額には達していないため、もし引き続きご協力していただける方がいましたら大変ありがたく思います」

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