「性的な写真や動画を基に相手を脅し、心身の支配や金銭を脅し取るなどの『セクストーション』被害の相談が急激に増えています。2025年度には、前年度比で1.6倍の約3000人の方からセクストーションを含める新規相談を受けました」

こう話すのは、デジタル性暴力と性的搾取の相談窓口「ぱっぷす」(NPO法人)理事の内田絵梨さんだ。

「セクストーションとは、セックスとエクストーション(脅迫)の合成語で、『性的脅迫』という意味です。セクストーションには、支配型と金銭型の2種類があり、支配型には女性の被害者が多く、金銭型に男性の被害者が多いという特徴があります」(内田さん、以下同)

おもにスマホやPC上で発生するデジタル性暴力は、被害者が「誰にも相談できずに犯罪に巻き込まれる」ケースが多いという。また、夏休みのこの時期、未成年者の被害にも気を付けたいところ。内田さんに、ぱっぷすに寄せられた被害事例から、どんな言葉(メッセージ)で犯罪に巻き込まれてしまうのか、詳しく聞いた。

「まず、支配型のセクストーションは、女性の相談者さんが圧倒的に多いです。相手は、恋愛感情などを利用して性的な画像を入手しようとします。元恋人や、過去に性的な関係があった人、推しの配信者など、好意を持っている相手が多いです」

次のような言葉(メッセージ)で、画像を送るように仕向けてくるという。

(1)オレのこと、信用してないの? オレのこと、好きじゃないの?
(2)ボクも写真を送るからさ~、好きだったら、いいよね?

「このように、男女関係で、『信用してないの?』といわれると、その気持ちを証明しなきゃいけないという心理に駆られてしまいます。好きな人に自分を疑われているのだから、証明しなきゃいけないと思い、『なんか変だぞ』と思っても、送ってしまう方がいるんです」

いまの交際相手や、元恋人なら、直接の人間関係があるが、「推しの配信者」といえば、ある種のインフルエンサーとなる。そのような「立場のある人」からも画像送信を指示されるのだろうか?

「『推しの配信者』といっても千差万別で、チャットアプリのなかでは有名だけれど、ネット全体で有名かというと、そうではない人はいます。そういう人のなかには、じつは犯罪をしている場合もあるということです」

■「嫌われたらどうしよう」そんな気持ちを利用して……

また、学校などの「先輩・後輩」の関係でも、セクストーションが起きるという。

「それまでの人生で、『デジタル性暴力』というものがなんなのか、教わってきてもいないため、デジタル性暴力の知識がない人は少なくありません。

意図的でなくても、無意識に加害行為をしている人がいると思います。また、知識がないから、自分が被害者かどうかもわからない人も、少なくないでしょう」

(3)元カノも撮ったことがあるんだけど……
(4)ほかの女性は送ってくれたんだけどな……

「相手に『元カノも撮ったんだけど』とか『ほかの女性も撮ったんだけど』と言われれば、平常時で冷静なら『なに言ってるの?』と思えるところでしょう。でも、誰かと比べられると『負けたくない』という気持ちが勝って、送ってしまうケースもあります」

特に、断ることが苦手な性格の場合、被害に遭う可能性が増す恐れがあるようだ。

「昨今の日本人というか、特に若い世代は、断らなきゃいけないとき、どう断ればいいか、わからない人が増えています。本心では『元カノは関係ないだろ!』と思っても、その気持ちを伝えられない……。『嫌われたらどうしよう』とか『飽きられたら困る』という気持ちが勝ってしまう場合もあります。これは、ある意味、デートDV(ドメスティック・バイオレンス)の一種でもあります」

支配型には、リベンジポルノ(復讐や嫌がらせ目的で性的な画像・動画を拡散する行為で、罰金や拘禁刑もある犯罪)など「誰かに共有されてしまったり、脅迫だけにとどまらなくなってしまう」ケースもあるという。さらに……。

「拡散されて困るのは、画像や映像だけではありません。相手だけに送ったつもりの言葉(メッセージ)でも、『そのまま拡散されたら困る』という文言は、多くの人が思い当たるのではないでしょうか。これらの言葉をスクショなどして、さらされてしまうケースもあるんです」

■“金銭型”の被害者はほとんどが男性

次に、金銭型セクストーションについて。

「金銭型は、本人からお金を取ることが目的です。

大きな特徴は、ほとんど男性が相談者です。たとえば『海外の人とコミュニケーションしたい』という夢に付け込む特殊詐欺のようなもの。闇バイトにつながることがあります」

近年では、言語交換アプリで、海外の人と容易にチャットなどができてしまう。

「それらのアプリで知り合った海外の人と、ほとんどの場合は『インスタグラム』を交換します。そこで、テレビ通話をして、向こうはビデオがオフだったりするのですが、言葉巧みに画像送信を誘導されるんです」

(5)キミ、体つきいいよね、みせてよ!
(6)みせてくれるなら、私のも見せてあげる

「被害相談は、男性が圧倒的に多いといいましたが、相手は当初は女性と思わせるものが多いようです。『みせてくれるなら、私のも見せてあげる』と言われるケースもあります」

(7)さっきのは録画してるよ、ばらまかれたくなければギフトカードを送って
(8)キミ学生だったんだ、キミだけ特別に1万円にしてあげる

最初は女性が窓口でも、途中で人が変わったりするケースがあるようだ。

「最初は女性でも、途中で男性とのやり取りに変わってしまう場合があります。性的な画像などを送ってしまって、電話を切った後に『さっきのは録画してるよ、ばらまかれたくなければ、○○(ECサイト)ギフトカードを送って』と」

そこで思いとどまれないのには、「その場で急がせる手口がある」という。

「支払をカウントダウンされるんです。『15分以内にギフトカードを買ってください』と言われ、次に『あと10分です』といわれると、『どうにかしなければいけない』という考えでいっぱいになってしまう。コンビニの前で、『買っていいのでしょうか?』というご相談をいただいたケースもありました」

■米国、欧州で流行…今は日本がターゲットに

特に、児童に関する相談が2025年度は前年度比で2倍に急増しているという。

「みんな、親には言い出せないんです。

相手に『学費も払ってもらい、生活の面倒をみてもらっているので、5万円は払えないです』というと、相手は『キミ学生だったんだ、キミだけ特別に1万円にしてあげる』と、値切ってきます」

特に、お年玉をもらったあとや、夏休みのお小遣いをもらったあとなどは、要注意だろう。これらの犯罪は、特殊詐欺グループによる犯行の恐れもあるという。

「海外では事件化されています。アメリカがターゲットの特殊詐欺では、FBIも力を入れて摘発しています。そこで、アメリカ以外の国……第二外国語が英語の国が狙われるようになっています」

アメリカの次は、ヨーロッパ各国などが狙われたのだが……。

「ヨーロッパ各国などでも取り締まりが強化され、いまでは日本もターゲットにされてきていると思われます」

一度、特殊犯罪グループにお金を払ってしまうと、「何度でも繰り返し要求されてしまいます」と内田さん。

「子どもでは貯金も尽きてしまうので、『○○(スマホ決済)の口座を持っているよね?』といわれるケースがあります。要求に応じて、スマホ決済のアカウント情報を渡してしまうと、『闇バイト』などに使われてしって、“犯人”になってしまうケースもあるんです」

では、セクストーション被害を、私たちはどう防げばいいのだろうか?

「金銭型では、すぐにブロックすることです。詐欺グループが狙っている場合、一度払ったら何度も繰り返される恐れがあります。気づいたらブロック、アカウント自体も替えるのがベストです。また、『インスタ』以外のアカウントを交換していた場合、そこから脅迫される場合がありますので、ブロックや着信拒否をして、そして警察に伝えることです」

では、支配型の被害を防ぐには?

「なにが『デジタル性暴力』に当たるのかを、まず理解・把握しましょう。『ぱっぷす』では『撮ること、持つこと、見せること、見ること』の4つとしています。

これが性暴力だとキチンと知れば、『ダメ』とわかります。児童ポルノの法律も、知らない人が多い。18歳以下の性的な画像などを持つことも犯罪です。彼女の写真を撮ったり、送るように指示することも処罰される可能性があります」

まずは、ここに挙げたセクストーションの事例と、性暴力の4項目の理解・把握から!

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