電車の中で、誰かの大声にうんざりした経験……ありませんか?

 今回は、そんな状況に直面したある女性のエピソードをご紹介します。

帰宅ラッシュの電車で大声おじさんに遭遇

 ある日の夕方、飯田麻美さん(仮名・33歳)は、帰宅ラッシュの電車で吊り革を握り揺られていました。

電車で怒鳴る迷惑おじさんが…近くにいた女性の「見えてますよ」...の画像はこちら >>
 仕事終わりの車内はどこか重い空気で満ちており、誰もが静かに時間が過ぎるのを待っているような雰囲気でした。


「その日はかなり疲れきっていて『あと少しで家。そしたら推しの動画を観ながらご飯……』となんとか自分を励ましながら、窓からの景色をぼんやり眺めていたんです」

 すると突然「だから今すぐやれって言ってんだろ!」という怒鳴り声が響き渡り、静寂は一瞬で破られました。空気がビリビリと震えたような気がしました。

相手を見下すような口調にもゲンナリ

 声の主はスーツ姿の男性。スマホを耳に押し当て、身体をわずかに前のめりにしながら、まるで相手を見下したような口調でまくし立てていました。

電車で怒鳴る迷惑おじさんが…近くにいた女性の「見えてますよ」で慌てて退散! 一体何が見えてたの?
電車で遭遇した大声パワハラおじさん
「その大声男性は『何回言わせんだよ、使えねぇなホント』と威圧感全開で通話相手を詰めていて。その怒鳴り声と相手をねじ伏せて悦に入っている感じの話しっぷりに、私は余計に疲れてしまいクラクラしました」

 言葉の端々には、相手を人として扱っていないような冷たさが感じられ、周囲の乗客たちは明らかに不快そうな表情を浮かべながらも、視線を逸らし、関わらないように距離を取るばかりでした。

見えてしまった、男性の胸元の「あるモノ」

「でも耐えるしかないか、とため息をついた瞬間、男性の胸元の社員証がふっとこちらを向いたんですよね」

電車で怒鳴る迷惑おじさんが…近くにいた女性の「見えてますよ」で慌てて退散! 一体何が見えてたの?
社員証
 揺れた拍子に表向きになったそれには、会社名、顔写真、フルネームがはっきりと記されていました。

 にもかかわらず男性は気づく様子もなく、「お前のせいでこっちがどれだけ迷惑しているか分かってんのか? 無能が!」と、さらに声を荒げます。その無防備さと横暴さのアンバランスさが、かえって異様さを際立たせていたそう。

 その瞬間、気がついたら麻美さんは一歩前へ出ていました。

静かな一言でひっくり返った立場

「つい我慢できず『いい加減に通話をやめてもらえませんか? マナー違反です。それに、見えていますよ』と言うと、男性が『は?』と私を見たので、男性の胸元の社員証を指差したんですよ」

 麻美さんが「会社名も、お名前も、顔写真まで……」と言葉を重ねると、男性の表情が一瞬で凍りつきます。

電車で怒鳴る迷惑おじさんが…近くにいた女性の「見えてますよ」で慌てて退散! 一体何が見えてたの?
注意する、怒る女性
「男性は『ち、違っ……これは』と明らかに動揺していて。おいおい、さっきまでの威圧感はどうしたの? という感じでしたね」

 あれほど強気だった声は急にしぼんで落ち着きを失い、視線は泳ぎ始め……まるで別人のようでした。


 麻美さんは淡々と「私がそういうの、ネットに上げるタイプじゃなくてよかったですね」と言うと、男性の喉がゴクリと動きました。

 その一言は脅しでも怒鳴り声でもなく、ただ事実を突きつけただけ。それでも十分すぎるほどの重みがありました。

「男性は冷や汗をかきながら『あー、もういい!』と通話を切り、スマホを乱暴にポケットへ。次の駅で、大慌てで転がるように降りていきました」

男性がいなくなった後、後ろから声をかけられた

 ドアが閉まると同時に、車内の空気がふっと和らぎます。

「男性がいなくなった途端、ふと自分の足が震えていることに気がつきました。疲れていたのもあってつい、勢いで普段なら言えないようなことを言ってしまったんだと思います」

 さっきまでの冷静な言葉とは裏腹に、心臓はバクバクと激しく打ち続けていました。

「『ちょっと調子に乗っちゃったかな?』そんな不安がよぎったそのとき。『あの、ありがとうございます。助かりました』と、すぐ後ろにいた女性が声をかけてきて、振り向くとほっとしたような表情で軽く頭を下げてくれたんですよ」

 さらに別の乗客も、目が合うと笑顔で小さく頷いてくれたそう。

「その瞬間、なんだか周りの乗客の皆さんと繋がれたような……そんな温かな余韻が胸に広がっていきました。あぁやっぱり、あのおじさんに注意して本当によかったなと思えたんですよね」と微笑む麻美さんなのでした。


<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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