人は見た目や肩書ではないとわかっていても、無意識に相手の印象をつくりあげてしまっていることはないでしょうか。このような思い込みによる決めつけは心理学でアンコンシャスバイアスと呼ばれ、誤った判断につながらないよう注意が必要だともいわれています。


 今回は、まさに思い込みによる決めつけで失敗したと悔やむ溝内美香さん(仮名・30代)のお話です。

“キラキラまぶしい知人”の紹介で、企業の広報に転職

 美香さんの悲劇は、フリーのマナー講師として活動する傍ら会社員としても働く知人・芳江さん(仮名・40代後半)と再会したことからはじまりました。

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「芳江さんとは、共通の知り合いを通じて仲良くなったんです。ある日、私がその知人とご飯を食べている店にフラリとやってきたのが芳江さん。ひとりならいっしょに食事をしようということになり、3人でご飯を食べたのがキッカケです」

 名刺やSNSを交換し、会話も弾んで楽しい時間を過ごしたものの、その後はとくに連絡を取り合うこともなく数年が経過していました。そんな芳江さんと久しぶりに会って会話が弾み、当時の職場がほぼブラック企業で、仕事を辞めようと考えていることについてもポロリとこぼしてしまいます。

「久しぶりに会った芳江さんは自信たっぷりという感じで、立ち居振る舞いも素敵な印象。離職を考えていた私にとってはとくにキラキラとまぶしく映ったのだと思います。そんな芳江さんから、自分が働いている職場の面接を受けてみないかと誘われました」

 芳江さんからは「いつもSNSを見ていて、美香さんみたいな人が広報に入ったら新しい風を吹かせてくれるんじゃないかと思ってたのよね」「私のほうからぜひお願いしたいくらい。社長とは親しい仲だからうまく伝えておくね」と言われ、トントン拍子に話が進みます。

なぜか強引に、写真に入るよう仕向けてくる

「芳江さんの推薦ということもあって広報部で働けることになったときは、すごく嬉しかったです。広報部といっても年配の方ばかりだったので、自分の日常や気に入ったものをSNSで発信していた私を可愛がってくれましたし、すごく重宝してくれました」

 ですが、楽しく働いていたのも束の間。何か撮影があるごとに広報部でもない芳江さんがやってきて「美香さんも入って」としつこく誘われるのが嫌になっていきます。……というのも美香さんはSNSで様々な写真をアップしてはいましたが、顔出ししているものはゼロ。
自分が写るのは大の苦手だったのです。

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取材・撮影
「会社では私が撮影する係だったので、自分が写らずに済むよう立ち回ったり、『写真は苦手なので』と軽く断ったりしていました。なのにそのうち『今度は私が撮るから、入って入って!』と強引に体を押されて、写真に納まることになってしまったのです」

 いちど写真を撮られたあとはさらにしつこくなり、ほかの社員もいるなか断ることが難しく追い詰められていきます。このままでは写真に写ることが当たり前になってしまうと感じた美香さんは、芳江さんを食事に誘い、写真が苦手だと打ち明けることにしました。

ワインが飛び散るほどの剣幕でブチ切れ

「幼少期に容姿をからかわれたことがコンプレックスになっていることもきちんと話したのですが、芳江さんの態度が豹変。『写るのが苦手なのにSNSで発信している意味がわからない』と、飲んでいたワインがテーブルクロスに飛び散るほどの剣幕でブチ切れたのです」

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怒る女性
 さらに「広報部は自分自身も前に出てどんどん宣伝する場所。自分が写真に写りたくないなら、SNSをやっているなんて言ってこないで。写真を嫌がる人間を広報に紹介したなんて、こっちの面目が丸つぶれ」とまで言われ、とりつく島もありません。

無視をされて退職、SNSも削除する羽目に

「一方的に悪者扱いされ、次の日からは無視されるようになりました。入社するときに確認があったわけでもないのに、『写真に写りたくない』と言っただけでいじめのようなことをしてくる芳江さんのことが怖くなり、会社にも居づらくなって退職しました」

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職場 先輩後輩
 その経験がトラウマとなり、SNSは削除することに。そっと新しいアカウントを立ち上げた美香さんですが、「マナー講師だから常識があって立派な人だと、勝手に思い込んでいた自分にも原因があると反省しています。皆さんも気をつけてください」と話してくれました。

 知人の紹介だからと安心せず、仕事内容や求められる役割については、双方で事前に確認しておくことも大切ですね。


<取材・文/夏川夏実>

【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。X:@natukawanatumi5
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