40歳を超えてから、スタートアップ企業「令和トラベル」に転職。
第51回は、旅行会社勤務の大木さんが、かつては「古い」と言われた添乗員同行ツアーの人気再熱とその秘密に迫ります(以下大木さん寄稿)。
旅行業界で新たなリバイバルブームとは?
AIに聞けば、世界中の情報が一瞬で手に入る時代になりました。旅先のおすすめスポットも、現地のレストランも、移動ルートも、スマホひとつあれば簡単に調べられます。そんな時代の中で、意外なものが流行っているのを目にすることはありませんか?
旅行業界でも密かにリバイバルブームとなっているものがあります。
それが「添乗員同行ツアー」です。
かつて添乗員同行ツアーといえば、旗を持った添乗員の後ろを団体でついて歩く、少し古いスタイルの旅行というイメージを持つ人も少なくありませんでした。「海外旅行に慣れていなかった時代のもの」という印象を抱く人もいるでしょう。
ところが今、その添乗員同行ツアーに新たな価値を見出す人が増えています。
スマホもAIもある。自分で航空券もホテルも予約できる。
そこには、AIには代替できない旅の価値が隠されているのです。
最適解では満たされない旅がある
AIの進化によって、旅行のあり方は大きく変わりました。例えば、弊社の旅行アプリ「NEWT」では、航空券やホテルの予約はもちろん、旅行中のお問い合わせにもAIが瞬時に対応しています。旅行の計画を立てる際も、AIに相談すれば、おすすめの観光地や効率的な移動ルート、お得なプランまであっという間に提案してくれます。
今や「最適解」にたどり着くこと自体は、とても簡単になりました。
しかし、その一方で旅行情報があまりにも充実したことで、旅そのものが少し予定調和になりすぎているのではないかと思うのです。実際に旅先で向き合うのは、AIが予測しきれない出来事ばかりです。
その日の天気や街の空気感。偶然立ち寄った店との出会い。思いがけないハプニング。そして、ときには失敗ですら旅の思い出になります。
もしかすると人は、旅行において「効率のよさ」だけを求めているわけではないのかもしれません。
どれだけAIが進化しても、人間は効率だけでは心が満たされません。特に旅という非日常の場面では、その傾向がより強く表れるように思います。だからこそ今、添乗員の存在が改めて見直されているのかもしれません。
添乗員は単なる情報提供者でも道案内役でもありません。その場の空気を感じ取り、参加者の年齢や体調、興味関心を見ながら、その時々で旅をデザインしなおしていく存在です。
予定通りに進めることではなく、その場にいる人たちにとってより良い体験をつくること。そこには、まだAIだけでは担いきれない価値があるように感じています。
大学時代のヨーロッパ旅行での原体験
大学時代、女友達3人でヨーロッパをバックパッカーのように旅したことがあります。そのとき、母の知人がたまたまイタリアに住んでいて、イタリアとドイツの一部を案内してもらったんです。
今振り返っても、あの時間は旅の印象を大きく変えた出来事でした。
その方は現地で暮らしていたからこそ、「イタリアではね」「このレストランにはこんな意味があるんだよ」「パスタにはこんな歴史があってね」といった話をたくさんしてくれました。
さらに、その方はイタリア語が話せたので、現地の人たちとの会話の橋渡しもしてくれました。
私たちが大学生だと知ると興味を持ってくれて、お店の人や街の人との会話が自然と生まれていく。現地の方との交流が自然とできた時間となりました。
もちろん当時はスマホもAIもない時代。それでも私たちなりに一生懸命調べて旅程を組んでいましたが、その方が加わったことで旅はまったく違うものになりました。
自分たちだけでは見ることのできなかった景色が見え、知ることのできなかった文化や人とのつながりに触れることができた。
旅の情報量が増えたというより、旅の解像度が一気に上がった感覚でした。
ハワイにいるからこそ感じること
ハワイに住んでいる私自身も、ハワイで観光に来られた方とお話しする機会がよくあります。例えば、「ノースショアに行きたい」という方に、おすすめのルートや立ち寄るべきスポット、現地ならではの楽しみ方をお伝えすることがあります。
もちろん、ガイドブックやスマホがあれば必要な情報は手に入ります。それでも、「もし一緒について行けたら、もっと伝えられることがあるのにな」と感じることが少なくありません。
シュノーケリングスポットは、シャワーがあるところの右手の方に行くと、深さがちょうどいいとか、Googleマップには案内されていないけど、あの道を通ると時間をロスしないとか、今日は風が強いから、まわり方を変えたほうがいいとか……。
その日の天気や混雑状況、その場の雰囲気。現地で暮らしているからこそわかる小さな発見や、その土地ならではの価値観。
ツアーという「同じ空気」を一緒に体験するからこそ、伝えられるものが確かに存在するのです。それは情報をただ伝えることとはまた違った意味があります。
だからこそ今、添乗員同行ツアーが見直されているという話にも納得感があります。
令和の進化した添乗員同行ツアーとは
けれど見方を変えれば、面倒な判断やトラブル対応をプロに任せることで、自分は目の前の体験を存分に味わうことができる仕組みとも言えます。安心というセーフティーネットがあるからこそ、旅を楽しむことに集中できるのです。
「NEWT」のツアーもそうですが、現在はそうした旅の“まどろっこしさ”をできるだけ取り除きながら、自由度を保つ。限られた時間の中でいかに深い体験ができるかに重きが置かれています。
AIが得意な「正解を探すこと」と、人が得意な「体験を豊かにすること」。
タイパやコスパといった数字では測れない価値を求める人が増えている今だからこそ、添乗員同行ツアーは再び注目されているのかもしれません。
<文/大木優紀>
【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母
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