橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(36歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。


 そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けするエッセイ連載。今回は「家族会議」のエピソードを綴ります(以下、宇野さんによる寄稿)。

「遺言どうする?」家族会議を決行

 親は(たいていの場合)自分より先に死ぬ。

 昔お布団の中でぼんやりと理解して、めそめそしていたことです。この不安(事実)が、ぼんやりどころかくっきりしてきたアラフォー。

 ええい、この年になったらただ泣いてらんないんですのよ! 泣くのも体力いりますしね!

 ということで、「遺言どうする?」家族会議を決行しました。

なぜか幸楽の小姑扱いをされる末っ子の私

36歳・元子役が家族と遺産について話し合ってみた結果。なぜか...の画像はこちら >>
 大人の解決策は、民主主義は対話から始まる! という気概があったわけではなく。

・たまたま、遠方住まいの姉と実家滞在日がかぶる
・たまさか全員家にいた

 ので、話し合いはゆる~っと始まりました。テーマが「遺言」なのに、そんなゆるく始めてよかったのか。いかにも根がノンキな我が家らしいです。

 我が家は為替のことばかり喋る・好きな言葉は不労所得の私。おっとりしているが堅実な母、10代の子どもがいる姉、父(特に言及なし)という布陣なので、なぜか「私と揉めたくない」から議題が始まりました。WHY?

 何しろ渡る世間は鬼ばかりを見てきた一家です。幸楽の遺産問題について久子さんや邦子さんがさんざん蒸し返してきたシーンを覚えている、どころか、再現までできてしまうほど。


 今書いていて気づきましたけど私、幸楽の小姑扱いされている!! ちょっと!

 余談ですが、私のパソコンには沢田雅美さんと東てる美さんと3人で撮ったにこにこ写真があります。良い写真です。

遺言と「ケース」の想定

 我が家の資産と言えば、持ち家。家自体が古いので、

・リフォーム
・更地にする(売却)
・限界まで住む

 といった選択肢が考えられます。「こういうパターンになったら、こういう行動にしよう」をあれこれ話し合いました。アナウンサー、俳優ふたり、ピアノ講師というキャリアが揃っているため会話が異様によどみない。全員、家族であろうとそれなりに物言いに気を付けることができるので、わりとスムーズでした。

 それでもなぜか、私を敵に回したくない、というフレーズだけは何度も織り込まれました。だから、誰が鬼姑だってばよ。

 閑話休題。近年「終活」ブームにより、エンディングノートや遺言書の事前作成がずいぶん一般的になりました。とりあえずそれぞれに作っといてくれい、という話で解散。

 しかし、わたくしもアラフォー独身。
先ほど言ったように割と投資好きなので株式の保有がちょっとあるのですね。というわけで、自身でも調べてみました。遺言書の作り方を。

遺言書は自分でも用意できるらしい

 遺言書には

・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

 の3種類があるそうで、ミステリーでよくお屋敷に隠されてるのが「自筆証書」ですね。弁護士さんがお預かりしていた……で開くのが「公正証書遺言」。

 秘密証書遺言というのはその名の通り、自分で書いた遺言書を封筒に入れて封印してから、「自分の遺言書」だということを他者(公証人と証人2名以上)に証明してもらう方式だそうです。(参考ページ:日本公証人連合会HP)

 これだと遺言の内容自体はだれにも知られないで作成ができるんだとか。そういえばそういう遺言書が引き出しにしまってあったミステリーもあったような?

 どんだけ遺産問題ミステリーを読んでるんでしょうか、私は。血みどろ愛憎劇ミステリーもたくさん読んでいますよ。そういうことじゃないか。

 なお、自筆遺言書を準備したうえで、法務局で管理・保管で保管してもらうことも可能です。(参考ページ:法務省HP 自筆証書遺言書保管制度について)

 遺言書の形式って法律(民法第968条)で決まっているそうです。知らなかった。
考えてみれば、じゃないと有効無効なんて判断できませんよね。

 そして、こちらの保管制度を使用するにも、紙のサイズや余白など、書式のフォーマットは決まっているもよう。役所の書類と同じで、不備があったら効力がなくなってしまうので注意です。

 粗忽者でめんどくさがりというコンボの私にはハードルが高いですが、いざというときに役立ちそうなので、覚えておきたいですね。

デジタル世代って墓まで持っていく秘密が多すぎるのでは?

36歳・元子役が家族と遺産について話し合ってみた結果。なぜか「敵に回したくない」と警戒される事態に
3年前のピアノ発表会のお手伝い。この数日後、母が倒れることを知らない
 姉や私はアラフォーで、携帯電話普及~スマホ世代。デジタル通帳やアプリを多数使用しています。……生体認証で開けているものは、死んだら二度と開けられなくなるのでは?

 親の話だけではない、我々もパスワードノートくらいは作っておくべきだという結論に。

 エンディングノートと聞くと、分厚いしっかりしたノートを買って思い入れたっぷりに書くというイメージがありますが、意外と

・通帳のある銀行と口座番号
・使っている証券会社の名称・口座番号・パスワード
・加入保険の種類・内容
・不動産の有り無し
・借金の有無
・毎月引き落としのある契約、紐づいているメールアドレスとパスワード

 あたりを紙1枚に書き出しておくだけでもいざというときに役立つようです。(参考ページ:ゴールドオンライン2026.6.23記事)

 母が倒れた折、やれクレカ引き落としだ銀行口座だ手続きだと、おもちゃ屋の入り口で踊るサンタ人形並みに休みなく動き回った経験があるので、書き出してまとめておかねば、改めて思いました。

 でも……めんどくさ~~~い(大の字)。なので、友人とお茶会がてら書き出す、パスワード・パーティーでも開こうかと思います。

転ばぬ先の杖を用意しておけば、ステッキで踊れる

36歳・元子役が家族と遺産について話し合ってみた結果。なぜか「敵に回したくない」と警戒される事態に
近影。山形旅行中、紅花の前で。小姑ではないです
 転ばぬ先の杖とはよく言ったもので、用意さえしておけば、その杖でステッキダンスも踊れようというものです。

 今回の家族会議では、普段バラバラで暮らす家族の考えを知ることができてうれしかったです。
何しろ末っ子なもので、ひとりでなんとかしなくては、と気負いがちなんですよね。「最後にひとり残る」感覚が強い。肩の力が抜けました。

 大切な、身近な人の死は人生の大きな出来事。よく遺族は「悲しむヒマもなく忙殺される」と聞きます。

 エンディングノートや家族会議は、思い切り悲しむための準備なのかもしれません。

 とりあえず、己も必要事項を書き出しておきたいです。ただし、パスワードを全部書き出せる気がしないんですよね……。

<文/宇野なおみ>

【宇野なおみ】
ライター・エッセイスト。TOEIC930点を活かして通訳・翻訳も手掛ける。元子役で、『渡る世間は鬼ばかり』『ホーホケキョ となりの山田くん』などに出演。趣味は漫画含む読書、茶道と歌舞伎鑑賞。
よく書き、よく喋る。YouTube「なおみのーと」/Instagram(naomi_1826)/X(@Naomi_Uno)をゆるゆる運営中
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