「あれって、ずいぶん前に流行ってなかった?」は本当だった。近ごろ街やSNSで見かける服に「昔っぽいのに新しい」ムードが漂っている。
たとえばゆるっとしたデニム、短めトップス、厚底シューズ、光を跳ね返すメタリック素材など。
実際にはタイトとルーズが混在したりもしているが、すでに消えたと思っていたスタイルが復活したようなファッションに既視感を覚える人もいるだろう。
業界でまことしやかに唱えられてきたトレンド周期「20年ルール」。それはやっぱり正しかった。
米ノースウェスタン大学の研究チームが、1869年から現代までの約3万7,000着を数値化し、流行の波を“科学的に”可視化。その現象を数理モデルとして説明できることが明らかになった。
この研究成果は、米国物理学会(APS)グローバル物理学サミット[https://summit.aps.org/smt/2026/events/MAR-J62/6](2026年03月17)で発表された。
その数3万7,000着!100年以上にわたる服のデザインを数値化
本研究で、米ノースウェスタン大学の研究チームが行ったのは、1869年から今までに生み出されてきた女性服のデザインの解析だ。
資料にしたのは、米ロードアイランド大学のアーカイブからランウェイコレクションまで。その数なんと約3万7,000着におよぶ。
19世紀後半~20世紀の商用パターン、歴史的なドレスや数万点、服飾資料を含む、膨大な画像を数値化。
襟や首元のデザイン、ウエストの位置といった要素を独自ツールで測り、すべて数値化することでデータベースを作り上げた。
これにより、業界で漠然と言われてきた流行の変化が、数字として見えるようになった。
研究を率いたノースウェスタン大学の元博士課程研究者で、現プリンストン大学のポスドク研究員のエマ・ザイデラ氏はこう語る
これほど精密で広範囲なファッションのデータベースは、これまで存在しませんでした。20年周期という結果が業界の経験則と一致したことは非常に興味深いです
流行を動かすのは「同調」と「差別化」のバランス
研究チームが作った数理モデルは、流行の根本にある、人々の気持ちに基づいたものだという。
チームによると、たいていの人は「みんなと同じでいたい(同調)」と思う反面、「みんなとは少し違っていたい(差別化)」と思ったり。いつも2つの気持ちの間で揺れている。
デザイナーも普及しすぎたスタイルを避けたりするが、前のスタイルのものが着られなくなるほど極端にデザインを変えることはないという。つまり、くっきりとした流行はやはり一般の人々の中から生まれるようだ。
ファッションの流行と人の気持ちの関係について、ザイデラ氏はこう語る。
時間とともに、“今までのとは違うものにしたい”という力が働くため、スタイルは振り子のように揺れ動きます
データにもその周期がはっきり現れている。この“揺れ”が、約20年の周期を生むというわけだ。
歴史が示すトレンド20年周期の波
研究チームのデータには、波がくっきり刻まれていた。そうしたスタイルの盛衰として、特にわかりやすい例の一つがスカートやドレス丈だ。
- 1920年代:短めの丈のドレス。軽やかなシフォン素材でできた、ふんわりしたデザイン
- 1950年代:落ち着いた長め丈。ウール素材で保守的なシルエット
- 1960年代後半:鮮やかな色のミニスカート。
元気ではつらつとしたムード
このように素材も色もシルエットも、ファッションのトレンドが波のように押し寄せては引いていたことが、データベース化で明確になった。
これまでの”なんとなく”といったものではなく、時代ごとに激変していることが数値となってようやくはっきりしたことになる。
1980年代以降、流行は“分裂”する時代へ
ただ、この流行のくり返しにも実は変化が起きている。1980年代を境に流れが変わっているのだ。
スカートは、ミニ、ミディ(ふくらはぎぐらいまでの中間丈)、ロング、マキシ(床につくほど長い丈)というあらゆる丈が同時に存在し、かつてのような「これが主流!」という一本化が起きにくくなったという。
以前は“短いか長いか”の二択だったんですが、このごろは選択肢が増え、ばらつきが大きくなっっています。ファッションの同質性が弱まってるんです(ザイデラ氏)
SNSの登場で、個人のスタイルが可視化されるようになり、流行が一つにまとまりにくくなったのだ。
最近再び注目されている“懐かしいスタイル”、たとえば2000年前後に流行した、光沢素材や、色鮮やかなビビッドカラーを多用した未来感のあるファッション(いわゆるY2Kスタイル)なども、この多様化の流れの中で再評価されている。
流行は繰り返す。ただし戻り方には変化が
20年周期の波は確かに存在する。
とはいえ、1980年代からのファッションは、ひとつの流行がすべてを支配する時代から、複数のスタイルが同時に生きる時代へと変わった。
そうした意味では、これまで言われてきたように、クローゼットに眠る服を次の波でまた生かせる可能性はまだ残っている。
ただし、その“戻り方”は、昔よりずっと自由で、ずっと多様といえそうだ。
リバイバルでも微妙に違う説も。ファッションも多様性で”個”の時代か
まあなんだ、ファッションに詳しい人の話では、微妙に形が違ったり、質感や色使いが違ったりするようなので、”また流行ってる”といって昔のものを引っ張り出してただ着ても違和感があったりするそう。
たとえば、もとは軍用で第一次世界大戦から普及したトレンチコートも、以前はかっちりした印象だったが、近ごろはゆったりだったりショートだったり。生地も軽くてソフトなものをラフに羽織る着こなしが多い気がする。
そもそも前より立体的な形を見かける。素材も進化しているし、実現できる服のデザインも増えたんだろうな。
あと昔は知名度があるハイブランド、もちろん新品を着ること自体がステイタスという時代もあったが、今は古着も流行っているし、本当に多様だ。
やはり発信源が世界中の個人となった現代は、それぞれがSNSで見かけた好みのスタイルを追求しやすくなったのだろう。
ハイブランドに費やすよりも、手ごろなものでどう見せるかといった、コーディネートセンスに注目する層が増えてるような。
自己表現という意味では、ゆくゆくはアバターなんかもできそうだし。そうなるとみんなで一緒みたいなリアルファッショントレンドもそのうちなくなっちゃうかもだ。
References: Statistical Physics of Networks and Complex Social Systems[https://nautil.us/mathematics-suggest-that-fashion-is-on-a-20-year-cycle-1279018] / Bell-bottoms today, miniskirts tomorrow: Math reveals fashion’s 20-year cycle | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1119841]











