人間にも眠っている再生能力があり、呼び覚ますことができるかもしれない
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 サンショウウオやイモリ、ウーパールーパーは、手足を失ってもいずれは完全に元通りになる。

 米テキサスA&M大学の研究チームが発表した研究によると、人間を含む哺乳類の体にも再生能力はもともと備わっていて、ただ眠っているだけかもしれないという。

 研究チームは2種類のタンパク質を順番に投与することで、これまでどんな処置をしても再生しなかったマウスの指の部位から、骨・関節・靭帯・腱の再生に近い応答を引き出すことに成功した。

 再生できないのではなく、再生する力は備わっているが、機能できずにいた可能性があるのだ。

 この研究成果は『Nature Communications[https://www.nature.com/articles/s41467-026-72066-8]』誌(2026年4月17日付)に掲載された。

哺乳類の再生能力

 人間も皮膚の浅い傷なら自然に治るが、切断された指が骨・関節・腱ごと元通りになるような再生は起こらない。

 失った体の部位をまるごと作り直す力が哺乳類にはないと、長い間考えられてきた。

 とはいえ実際には、哺乳類が再生能力をまったく持っていないわけではない。

 マウスは指先の骨・肉・皮膚を再生できることが以前から知られており[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18234177/]、再生できるかどうかは切断した位置によって決まる。

 指先より付け根に近い部位を切断した場合は、マウスでも再生できない。

 人間も同じ哺乳類として、再生できる範囲が極端に限られているにすぎない。

 米テキサスA&M大学のケン・ムネオカ博士らの研究チームは、アリストテレスの時代から問われてきた「なぜある動物は再生できて、人間はできないのか」という問いを長年追い続けてきた。

傷口の細胞は、条件次第で再生に向かって動き出せる

 哺乳類が傷を負うと、体は真っ先に傷口を閉じようとする。

 このとき活躍するのが線維芽細胞(せんいがさいぼう)という細胞だ。

 線維芽細胞は、傷口に素早く集まりコラーゲンという繊維状のタンパク質を作って傷をふさぐ。

 感染や出血を防ぐ上で欠かせない反応だが、失った構造を元通りに作り直す力はなく、傷の修復だけだ。

 ところが、イモリやウーパールーパーでは同じ場面で違うことが起きる。

 傷口に集まった細胞が「再生の足場」となる塊を作り、失った部位を丸ごと作り直していく。哺乳類の傷口にはこの仕組みが働かない。

 研究チームは、傷口に集まる線維芽細胞は、傷口を修復する方向と再生に向かう方向のどちらにも動ける可能性があるのではないかと考えた。

 適切な指示さえ与えれば、その再生能力を呼び覚ますことができるかもしれない、と。

2種のタンパク質投与で、マウスの指が再生に近い反応

  研究チームはマウスの、通常では再生しない指の部位を切断し、傷が完全に閉じた4日後に1種類目のタンパク質を投与した。

 FGF2と呼ばれるこのタンパク質は、線維芽細胞の働きを調整する役割を持つ。

 傷口を修復する方向に動いていた線維芽細胞を、再生に向かう方向へ切り替えることを狙ったものだ。

 体がまず通常の傷口修復反応を終えた後に投与した理由は、次の反応を別の方向へ転換するためだった。

 すると、FGF2を投与された傷口の線維芽細胞は、哺乳類では通常起こらない「再生の足場」に似た構造を作り始めた。

 さらに数日後に2種類目のタンパク質であるBMP2(骨形成タンパク質2)を投与した。

 BMP2は骨や軟骨を作るよう細胞に指示するタンパク質で、再生の準備が整った細胞に何を作るべきかを伝える役割を担った。

 切断したマウスの指44本すべてで新たな骨の形成が確認された。

 詳しく調べると関節の軟骨・腱・靭帯まで形成されていた。

 形がいびつだったり小さかったりする場合もあり、元の構造の完全な複製ではなかったが、切断によって失われた主要な構造が戻っていた。

 今回の再生に近い応答を担ったのは外部から移植した幹細胞ではなく、もともと傷口に存在していた細胞だ。

 2種類のタンパク質が細胞の振る舞いを変えただけで再生に近い反応が始まったことから、研究チームは、プログラムできないと思われていた細胞が実はプログラム可能であり、再生能力は欠如しているのではなくただ隠れている可能性が有ると述べている。

人間にも再生能力が隠れているかもしれない

 ただし今回の実験はマウスを対象にしたものであり、人間の手足で調べられたわけではないが、すでにこの技術は人間の医療現場に応用されようとしている。

 研究で使用されたBMP2はFDA(米食品医薬品局)承認がすでに下りており、事故や病気で損傷した体の部位を修復する手術の一部での使用が可能な状態となっている。

 FGF2の方も、複数の臨床試験で評価中でFDAの認可を待つ状態となっている。

 まだまだ完全な利用には時間がかかるが、まずは切断後の傷跡を減らし組織の修復を改善するという方向での応用が現実的な次の一歩になる。

 研究チームは、傷口を修復する細胞が再生に向かわない理由を解明できると述べており、今回の成果を足がかりに人間への応用に向けた次の一歩を踏み出す予定だ。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 人間を含む哺乳類の体には、失った部位を作り直す能力が眠っている可能性がある
  • 2種類のタンパク質を順番に投与するだけで、マウスの再生しない指に骨・関節・腱・靭帯が戻った
  • 再生を担ったのは外から入れた細胞ではなく、もともと傷口にあった細胞だった

まだわかっていないこと

  • 今回はマウスの指が対象で、人間の手足で同じことが起きるかはまだわかっていない
  • 再生した組織は形がいびつで不完全なものがあり、完全な再生を実現するには研究を重ねる必要がある

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References: DOI: 10.1038/s41467-026-72066-8[https://www.nature.com/articles/s41467-026-72066-8] / What If Humans Could Regrow Tissue? Texas A&M Study Moves Science Closer[https://vetmed.tamu.edu/news/press-releases/human-tissue-regeneration-texas-am-study/]

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