絶滅危惧種のキタケバナウォンバットの地下に広がる巨大トンネルをレーダーで解析
Image credit:Brad Leue/Australian Wildlife Conservancy

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 世界で最も希少な大型哺乳類のひとつである、絶滅危惧種「キタケバナウォンバット」。彼らが掘る巣穴は、ときに100mを超えることもある巨大な迷宮だ。

 今回、オーストラリアの研究者たちは、最新の地中レーダー技術を使って、この地下世界を3Dマッピングで調査。

 その結果、キタケバナウォンバットは、これまで考えられていたよりも幅広い環境で暮らせる可能性があることが明らかになった。

 この発見は研究者たちが想定していた生息条件を見直すきっかけとなり、今後の移植・保全計画の選択肢を大きく広げる重要な成果として注目されている。

絶滅危惧種のキタケバナウォンバット

 キタケバナウォンバット(学名:Lasiorhinus krefftii)は、オーストラリアに生息する3種のウォンバットのうち最大種で、体長は約1m、体重は25~40kgに達する。

 ずんぐりとした頑丈な体格と強力な爪を持ち、名前の通り、鼻先が毛で覆われているのが特徴で、地中に長く複雑な巣穴を掘って生活する。

 かつてはオーストラリア東部の広い範囲に生息していたが、家畜との競合や生息地の破壊、外来種の影響などによって激減してしまった。

 1980年代には、野生での個体数は、クイーンズランド州のエッピング・フォレスト国立公園(EFNP)に残るわずか35頭まで減少した。

 その後の保護活動によって、EFNPの個体数は400頭前後まで回復した。世界全体では約450頭が生息していると推定されている。

 だが、長年にわたって単一の個体群だけに依存してきたため、大規模な山火事や感染症が発生すれば種そのものが壊滅する危険性が指摘されてきた。

 そこで現在は、EFNPから個体を移送して設立されたリチャード・アンダーウッド自然保護区(RUNR)など、複数の生息地に新たな個体群を築き、絶滅リスクを分散する取り組みが進められている。

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地中レーダーで巣穴の構造を3D解析

 キタケバナウォンバットの移植作戦を成功させるには、まずその生態を詳しく知ることが不可欠である。

 だが彼らは夜行性で大半の時間を地中で過ごすため、巣穴の正確な内部構造を把握することは困難だった。

 この課題を解決するため、オーストラリア野生生物保全協会(AWC)とウォンバット財団(TWF)、クイーンズランド州政府環境・観光・科学・イノベーション省(DESI)などによる共同研究チームは、調査に地中レーダーを導入した。

 地中レーダーは地面に電波を送り、その反射を解析することで地下構造を可視化する技術である。

 巣穴を物理的に掘り返すことなく、トンネルの形状や深さを調べることができるため、絶滅危惧種への負担を最小限に抑えられるのだ。

 研究チームはこの地中レーダーにより、地下にあるキタケバナウォンバットの巣穴の様子を、3Dマッピングすることに成功した。

 今回の研究メンバーの一人であり、オーストラリア野生生物保護協会(AWC)の元上級フィールド生態学者で、現在はブッシュ・ヘリテージ・オーストラリア所属の生態学者アンディ・ハウ氏は、次のように述べている。

私たちが当初から取り組んできたことのひとつは、リチャード・アンダーウッド自然保護区のウォンバットと、クイーンズランド州内のほかの個体群の間で、巣穴を作る方法に違いがあるかどうかを調べることでした

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土壌の性質によって巣穴の構造が変化することが判明

 間にわたる調査の結果、キタケバナウォンバットの巣穴構造は、土壌条件によって変化することが明らかになった。

 野生個体群の故郷EFNPの土壌は、深く固まりにくい砂質である。そのため研究チームは、ウォンバットがより深い位置に巣穴を作る傾向があると考えている。

 これに対し、移植先であるRUNRの土壌は、地表近くでも十分な強度が保たれる「砂混じりの粘土質」である。

 RUNRのウォンバットはこの地質に対応し、より浅い位置に巣穴が作られていることが確認された。

これまで私たちは、エッピング・フォレストに残る個体群の研究に基づいて、移送候補地に必要な土壌の種類を判断してきました。

しかし今回の研究と、ヨーロッパ人入植以前の分布に関する歴史的証拠を組み合わせることで、キタケバナウォンバットは、これまで考えられていたよりも幅広い土壌条件で機能的な巣穴を作れることがわかりました。

これは、今後の保全活動において、適した移送先の候補地が広がることを意味します

 つまり、キタケバナウォンバットは、これまで考えられていたほど厳密に特定の土壌だけを必要としているわけではない可能性があるということだ。

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 この発見は、将来の移送候補地として検討できる場所が、これまで想定されていたより広くなる可能性を示している。

 異なる地質でも十分に巣穴を作る適応力が実証されたことで、今後は新たな移植候補地の選択肢が大幅に広がることになるだろう。

新天地で繁殖に成功している様子が確認される

 さらに嬉しい発見もあった。RUNRの設置されたカメラが、1頭のメスの育児嚢が大きく膨らみ、生後約4~5ヶ月との子供を育てている様子をとらえたのだ。

 下の画像の右側にいるのが、子育て中とみられるメスの個体。下腹部が膨らんでいるのがわかるだろうか。

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 オーストラリア野生生物保護協会(AWC)の生態学者ベン・ステプコビッチ氏は、次のように述べている。

世界に残るキタケバナウォンバットは約450頭しかいません。しかし今、その数は451頭になったと言えます。

私たちは、この画像にとても興奮しています。新たな子供が1頭増えるたびに種全体の個体数が増え、この先も長く生き延びていけるという希望につながるからです。

この子は生後約9か月になる10月ごろには、育児嚢から顔を出すようになると考えています

 キタケバナウォンバットたちは、移植先の新しい環境で巣穴を作り、生活を営み、繁殖に成功している兆しを見せている。

今回の研究によって、キタケバナウォンバットが従来考えられていたより幅広い土壌環境で巣穴を作れることが示されたことで、こうした成功例をほかの地域でも再現できる可能性が高まった。

 新たな生息地を見つけることは、キタケバナウォンバットの未来を左右する重要な課題となっている。今回、地下に広がるウォンバットの迷宮を詳しく調べたことで、絶滅寸前のこの動物を守るための新たな道筋が見えてきたようだ。

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References: Spying on rare wombats reveals their elaborate 'underworld'[https://refractor.io/environment/spying-wombats-underworld/] / Ground-penetrating radar hopes to help solve wombat’s housing crisis | Australian Wildlife Conservancy[https://www.australianwildlife.org/news-and-resources/press-release/ground-penetrating-radar-hopes-to-help-solve-wombats-housing]

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