古代ローマの人々は、呪いの力を本気で信じていた。鉛の板に神と悪魔を呼び出す呪文を刻み、地面に埋めることで呪術が発動される。
オランダ南東部の旧ローマ軍事集落跡で約1800年前の古代ローマの小さな鉛板が発見された
ドイツのハイデルベルク大学の研究チームが最新技術を駆使して解読したところ、古代ギリシャ語で呪いの言葉と4人の奴隷の名前が記されていた。
紀元前から続く呪術の風習
古代ギリシャ・ローマの人々は、神々や冥界の力を借りて特定の相手を罰したり、自分の願いを叶えたりするために、鉛の薄板に呪文を刻んで地中に埋めた。
この「呪いの板」は紀元前6世紀から紀元後6世紀にかけて広く使われた風習だ。
鉛という素材が選ばれたのは、その重さと冷たさが相手を「縛りつける」力を持つと信じられていたからだ。
裁判の相手、競技のライバル、恋のライバルなど呪いの対象はさまざまで、これまでにイギリスから北アフリカにかけて1500枚以上が発見されている。
古代ローマ軍の集落跡の地下に1800年眠っていた鉛板
オランダ南東部の都市ヘールレンの市庁舎広場の地下で、オランダの考古学者チームが小さな鉛板を発見した。
かつてローマ帝国の軍事集落「コリオウァルム」が置かれていた場所だ。
縦9.3cm、横4.8cmと手のひらに収まるサイズで、紀元後2世紀、今から約1800年前のものだった。
ドイツのハイデルベルク大学パピルス学研究所の研究チームが解読を行った。
表面の摩耗がひどく肉眼では文字がほとんど読めなかったが、異なる角度から光を当てた複数の写真をコンピュータで合成する撮影技術を使い、刻まれた文字の解読に成功した。
呪いの言葉、魔法のシンボル、4人の奴隷の名前
解読の結果、鉛板には3つの内容が刻まれていた。
古代ギリシャ語で書かれた相手を呪い傷つけるための呪文。
次に超自然的な力へのメッセージを届けるために使われたとされる、「カラクテレス」と呼ばれる3つの魔法のシンボル。
最後に2人の男性と2人の女性の名前で、4人はいずれも「仲間の奴隷」と記されていた。
男性2人の名前はラテン語由来、女性2人の名前はギリシャ語由来だった。という点が研究者の注目を集めた。
この鉛板は4人の奴隷を呪うために作られたか、あるいは4人の奴隷が特定の誰かを呪うために作ったか、どちらかわからないという。
呪文はエジプト様式で刻まれていた
オランダなど、北ヨーロッパで出土する呪いの鉛板のほとんどはラテン語で書かれているが、今回解読された呪いの鉛板は古代ギリシャ語で刻まれており、呪文の内容はエジプト様式に則ったものだった。
エジプト様式の呪文は、神々の名を呼び出し、その力を借りて相手を縛る呪術で、古代エジプト特有のものだ。
古代エジプトでは魔術と宗教の区別がほぼなく、呪文を口にすること、あるいは文字に刻むこと自体が強力な力を持つと信じられていた。
さらに男性2人はラテン語名、女性2人はギリシャ語名という構成も特徴的だ。
研究チームは、女性のうちの1人がローマ領エジプトからその知識を持ち込んだ可能性を指摘している。
紀元後初期の数世紀、エジプト・近東・ユダヤなど各地の文化と宗教はローマ帝国内で混ざり合いながら広まっていった。
ヘールレンで発見された呪いの鉛板は、その文化の流れが帝国の北の端まで届いていたことを示す希少な証拠となるかもしれない。
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References: “Magical” Artifact: Heidelberg Researchers Decipher Ancient Curse Tablet[https://www.uni-heidelberg.de/en/newsroom/magical-artifact-heidelberg-researchers-decipher-ancient-curse-tablet]











