南アフリカの最南端・ケープ地方に住むヒョウは、南アフリカ北部に暮らすヒョウに比べ、体重が半分近くしかない。
数十年間、研究者たちはその理由を探ってきたが、英ダラム大学などの国際研究チームがついにその謎を明らかにした。
アフリカ各地に住む43頭のヒョウの全ゲノム解析を行ったところ、約2万年前の最終氷期最盛期に北部との間に砂漠が広がり、ケープ地方のヒョウは孤立した。
ケープ地方はもともと獲物が少なく厳しい環境だったため、取り残されたヒョウは、2万年かけてエネルギーが少なくても生きられるように適応進化し、体が小さくなったのだ。
この研究成果は『Heredity[https://www.nature.com/articles/s41437-026-00822-z]』誌(2026年)に掲載された。
同じヒョウなのに体重が半分、南アフリカケープ地方の個体群
ヒョウはアフリカからアジアにかけて広く分布する大型のネコ科動物で、現在8つの亜種が認められている。そのうちアフリカヒョウ(Panthera pardus pardus )は、サハラ砂漠以南のアフリカに広く生息する亜種だ。
同じアフリカヒョウでも、生息地によって体の大きさは大きく異なる。
南アフリカ北部に暮らす個体は雄で58~63kg、雌で32~38kgある。
ところが南アフリカ最南端のケープ地方に暮らす個体群は雄で約31kg、雌で約21kgと、体重が半分近くしかない。
ケープ地方とは、南アフリカの西ケープ州を中心に東ケープ州・北ケープ州の一部にまたがる地域で、世界のどこにも存在しない固有の植物が密集する生物多様性の宝庫だ。
この特殊な環境に1,000頭に満たない小規模なヒョウの個体群が生息しており、体が小さい理由は長年謎のままだった。
2万年前に北部の個体群から切り離されていた
イギリス、ダラム大学やドイツのグライフスヴァルト大学などの国際研究チームは、南アフリカケープ地方のヒョウ10頭と北部のムプマランガ州のヒョウ10頭を含むアフリカ各地の計43頭からDNAを採取し、全ゲノム解析を行った。
全ゲノム解析とは生き物のDNA全体を丸ごと読み解く方法で、25億7,000万の塩基対(DNAを構成する「文字」の単位)と約19,000の遺伝子すべてを対象とする。
従来の研究はDNAの一部しか調べておらず、細かな違いを見落としていた。
全ゲノム解析にり、約2万~2万4,000年前、地球が最も寒く氷河が最大規模だった「最終氷期最盛期」の頃、ケープ地方のヒョウが南アフリカ北部の個体群から分岐し始めたことが判明した。
この時期、南アフリカ全域が冷涼かつ乾燥し、ケープ地方と北部の間に広大な半砂漠地帯が形成された。
これが障壁となり、ケープ地方のヒョウは北部の個体群から切り離されて孤立してしまったのだ。
ケープ地方の厳しい環境に適応するために小さくなった
ケープ地方はもともと、サバンナとは異なる栄養の乏しい環境で、獲物となる動物が小さくまばらにしか分布していない。
主な獲物はイワダヌキ、クリップスプリンガーと呼ばれる小型のレイヨウ、ケープグライスボックなど、体の小さな動物ばかりだ。
解析の結果、体のサイズ・筋肉・骨・エネルギー利用に関わる約90の遺伝子が、ケープ地方のヒョウに多く見られることがわかった。
孤立したケープ地方のヒョウは、2万年かけてエネルギーが少なくても生きられるよう適応進化し、体が小さくなったのだ。
また、長期間の孤立と個体数の減少から、研究チームは遺伝的多様性が大きく失われていると予想していた。
遺伝的多様性とは個体群の中にどれだけ多様な遺伝子のバリエーションがあるかを示すもので、これが低くなると気候変動や疾病などの新たな脅威への適応が難しくなる。
しかし実際には、他のアフリカの個体群とほぼ同程度の遺伝的多様性が維持されていた。
独自の進化を遂げたケープ地方のヒョウの保護が急務
遺伝的に独自で地域に適応した個体群は「進化的有意単位(ESU:Evolutionarily Significant Unit)」と呼ばれる。
その種の進化の歴史において独自の道を歩んできた個体群であり、将来の環境変化に適応し続けるために特別な保護が必要とされる。
今回の研究により、ケープ地方のヒョウはこの進化的有意単位に相当することが示された。
ケープ地方では大規模な保護区が少なく、ヒョウは農地や都市近郊を移動することが多いため、人間との衝突が頻繁に起きている。
密猟や交通事故による死亡も深刻な脅威だ。
研究チームは、ヒョウが自由に移動できるよう生息地をつなぐこと、土地所有者や地域コミュニティとの連携を強化することが保全の鍵だと訴えている。
2万年以上かけて独自の進化を遂げたケープ地方のヒョウを守ることは、アフリカ大陸で刻まれてきた進化の歴史を守ることでもある。
まとめ
この研究でわかったこと
- 南アフリカ南部、ケープ地方のヒョウは約2万年前、最終氷期最盛期に南アフリカ北部の個体群から切り離され孤立した
- 獲物が少ない厳しい環境に2万年かけて適応進化した結果、体が小さくなったことが判明した
- 孤立と個体数減少にもかかわらず、遺伝的多様性はほぼ失われていなかった
今後の課題
- ケープ地方のヒョウが自由に移動できるよう生息地をつなぎ、密猟や交通事故から守ることが急務
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References: DOI.10.1038/s41437-026-00822-z[https://www.nature.com/articles/s41437-026-00822-z] / Leopards adapted to South Africa’s Cape so successfully that they’re genetically unique – study[https://theconversation.com/leopards-adapted-to-south-africas-cape-so-successfully-that-theyre-genetically-unique-study-275022]











