キリンは数が多いか少ないかを理解できることはこれまでの研究でわかっていた。では数を記憶し、足し算することは可能なのか。
スペインの動物園でおこなわれたバルセロナ大学の実験によると、キリンが頭の中で足し算をしていた可能性が示された。
ただし引き算になると、途端に正解できなくなったこともわかった。
だとすると動物園でキリンを見に来ている人間のことも、「あれ、昨日より今日はいっぱい来たな」なんて思ってるかもしれない。
この研究成果は『Scientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-026-54126-7]』誌(2026年6月26日付)に掲載された。
キリンは数の多い、少ないがわかる
そもそもキリンが数を理解できるのか。実はできるのだ。
スペイン、バルセロナ大学の研究チームは2020年、バルセロナ動物園のロスチャイルドキリン(ウガンダキリン)が2つの量を見比べて多いほうを選べることを確かめ、Animal Cognition[https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-020-01442-8]誌に発表した。
さらに2023年には、同研究チームが同動物園のキリンを対象に実験をおこなったところ、好物のニンジンがたくさん入っている容器を見極め、多いほうを選べることをScientific Reports[https://www.nature.com/articles/s41598-023-32615-3]誌に発表した。
正確にキリンが1、2、3と数えたわけではないが、「こちらのほうが多そうだ」というおおよその量の感覚で判断したとみられている。
キリンはある程度の数が理解できることは分かっていたものの、見たものを記憶して頭の中で足したり引いたりできるかどうかは、これまで調べられていなかった。
実は、キリンは賢さの研究があまり進んでいない動物なのだ。
今回の実験を率いた研究チームにも、この研究に参加した研究者が加わっている。
箱を隠してニンジンを足す実験、キリンは合計数を記憶していた
今回、バルセロナ大学のイケル・ロイディ氏らの研究チームが、バルセロナ動物園で4頭のキリンを対象に行ったのは数の記憶だ。
ナクル、ニャノ、ヌル、ヤリンガという4頭が参加し、いずれも好物のニンジンを使っって実験を行った。
まず、黄色い箱を2つキリンの前に置き、それぞれに違う数のニンジンを入れて、キリンに中を見せる。
数秒後に箱の中をキリンから見えなくする。
次に、別に用意した緑の箱からニンジンを1つずつ取り出し、2つの黄色い箱のうち片方にだけ入れていく。
もう片方の黄色い箱には何も足さない。
箱にニンジンを入れる動作はキリンに見せるが、箱の中が最終的に何個になったかは見えない。
キリンは最初に見た数と、あとから足された数を頭の中で合わせないと、どちらの箱が多いか分からない。
2つの箱に最初から違う数を入れてある点も、実験の大切な仕掛けだ。
たとえば1個と2個を見せ、少ないほうの1個に2個足すと、3個対2個になって多い少ないが逆転する。
最初に多く見えたほうを選ぶだけでは間違えてしまうため、キリンは足し算をしないと正解できない。
箱の位置も最後まで動かさないので、キリンは左右どちらの箱がどうなったかを覚えておく必要がある。
その結果、4頭すべてが偶然を上回る成績を出した。
正解率は平均68%で、でたらめに選んだ場合の50%をはっきり超えている。
キリンは合計で最大5個までを頭の中で追い、多いほうの箱を選ぶことができた。
だが引き算は当てられなかった。人間と同様の傾向
研究チームは他に、引き算にあたる課題も試した。
手順は足し算の時と同じで、2つの黄色い箱に違う数のニンジンを入れて見せてから中身を隠す。
今回は緑の箱を最初は空にしておき、2つの黄色い箱のうち片方からニンジンを抜いて緑の箱へ入れていき、もう片方の黄色い箱には手を加えない。
ところが引き算になると、成績は50%前後まで落ちて偶然と変わらなくなった。
同じ傾向は人間にも見られる。子どもは足し算を先に身につけ、引き算はあとから覚える。
大人でも、1桁の簡単な数を暗算で答えさせる実験では、足し算より引き算のほうが時間がかかることが分かっている。
文化の違う複数のグループで同じ結果が確認されており、大人の頭にとっても、引き算のほうが手間のかかる作業だと考えられている(Journal of Experimental Psychology: General誌, 2001年[https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2F0096-3445.130.2.299])。
チンパンジーやサルの研究でも、引き算のほうが難しいという結果が出ている。足すより引くほうが頭に負担がかかる点で、キリンは人間や霊長類と同じ壁にぶつかった。
同じ傾向は人間にも見られる。子どもは引き算を足し算より後に身につけるし、大人でも引き算のほうが時間がかかる。
チンパンジーやサルの研究でも、引き算のほうが難しいという結果が出ている。足すより引くほうが頭に負担がかかる点で、キリンは人間や霊長類と同じ壁にぶつかった。
本当に足し算ができていたのか?
ただし気をつけたいのは、キリンは本当に足し算をできているのかどうかだ。
キリンが計算せずに正解できる方法として、研究者は足し算のとき、片方の箱にニンジンを入れる際、箱を触ることになる。
触れた箱には元の中身に足した分が加わるので、触った箱のほうが多くなる場面が多い。
キリンが「人間が触った箱を選ぶ」と決めた場合も、正解に近づけてしまうのだ。
研究チームはこの点に着目して確かめてみた。
その結果、ナクルとヤリンガの2頭は、多く触れた箱に多く入っている時しか偶然を上回らなかったため、この2頭が足し算できたとは言い切れない。
一方で、ヌルとニャノの2頭は、この方法が通用しない場面でも正解を続けたため、ヌルとニャノは頭の中で数を追っていた(足し算していた)可能性が高い。
となると、キリンも人間同様、個体によって能力が異なるようだ。
特にヌルは、過去の研究でも優秀な成績を残していた個体だった。
集団生活とエサ探しがキリンの数の能力を育てた可能性
研究チームは、キリンに数を追う能力が備わった理由として、野生での暮らし方にあると考えている。
野生のキリンは、群れが分かれたり合わさったりを繰り返す社会で生きている。
仲間が増えたり減ったりする中で、周りに何頭いるかを数えて覚える必要があったのかもしれない。
エサの取り方も関係している。キリンは広い範囲に散らばった葉を食べて回るため、どこにどれだけエサがあるかを覚えておく力が役立つ。
数を追う力は、より多くのエサを見つけたり、天敵の多い場所を避けたりするのに有利だったと考えられる。
今回の実験は、対象がわずか4頭と少なく、結論を出すには慎重さが要る。
それでもキリンのような大きな動物が、数を覚えながら頭の中で追えることができるとしたら、その能力は霊長類だけのものではないことを示している。
まとめ
この研究でわかったこと
- キリンは、隠された箱の中でエサが足されても、多いほうを選べる。頭の中で足し算をしていた可能性がある。
- 引き算になると成績が偶然と変わらないレベルまで落ちた。足すのは追えても、引くのは追えない。
- 4頭のうち2頭は、当てずっぽうでは説明できない場面でも正解を続けた。
頭で数を追った可能性が高い。まだわかっていないこと
- なぜキリンは足し算はできても引き算はできないのか、はっきりした理由はまだ分かっていない。
- 対象がわずか4頭と少ないため、キリン全体に当てはまるかどうかは今後の研究待ち。
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References: A study by the University of Barcelona shows that giraffes combine quantities similarly to addition - Current events - University of Barcelona[https://web.ub.edu/en/web/actualitat/w/arithmetic-abilities-ungulates] / DOI: 10.1038/s41598-026-54126-7[https://www.nature.com/articles/s41598-026-54126-7]











