2026年はヨーロッパが異常な熱波に襲われた。さらに中国でも猛烈な暑さに見舞われている地域がある。
この酷暑に対応すべく、山西省にある集合住宅が、屋上から大量の霧状の水(ミスト)を噴霧するという、ド派手な冷却システムで注目を集めている。
高圧ミストを利用したこのシステム、なんと噴霧開始から数分以内に、気温を5~8℃も下げることができるのだという。
中国ならではの力技とも言うべき、豪快な暑さ対策なのである。
高層住宅の屋上から噴き出すミストが話題に
2026年7月1日、中国外務省の毛寧報道官がXに投稿した動画が、900万回以上再生された。
動画に写っているのは、山西省運城市のマンションの屋上からスプリンクラーのように大量の水が撒かれる様子である。
投稿の説明欄にはこう書かれていた。
中国中部、山西省のある住宅地では、「屋頂雨(屋上の雨)」と呼ばれるミスト冷却システムが注目を集めています。
このシステムは、数分で周辺温度を5~8℃も下げることができるのです
この「屋頂雨」と呼ばれる、超薄型の屋外用噴霧器が設置されているのは、山西省南西部の運城市にある高層集合住宅群、「西建・天茂国賓府」だ。
7棟ある集合住宅には、それぞれ約200個のノズルが設置されており、加圧された水がそこから細かい霧状のミストとなって噴射される。
合計で1400個以上もの高圧ノズルから放出されるミストが空中で蒸発する際に、周囲の熱を奪うことで気温を下げるのだ。
これは「気化冷却」の原理を用いたもので、我々が汗をかいたとき、その水分が蒸発する際に熱を奪い、身体の表面温度が下がるのと同じ仕組みである。
稼働から数分以内に気温を5~8℃も下げる効果
このシステムの冷却効果は絶大で、稼働からわずか数分以内に、周囲の気温を劇的に下げることができるという。
住人など、実際に「屋頂雨」を体験した人たちからは、極めて好意的な評価が寄せられている。
- 噴霧後は涼しさが際立って、体感温度が数度下がったように感じました
- 「雨」の後は明らかに涼しくなり、空気もずっと新鮮になります。
子供たちはとても楽しんでいました- 運城の夏の気温はかなり高いのですが、「屋頂雨」が降ると、とても涼しく感じます。この取り組みはとても素晴らしいものです
なお、毛寧報道官の説明では「表面温度」が5~8℃下がるとなっているが、中国現地の報道では気温が5~8℃、地表の温度が約12℃下がるとされている。
どちらにしろミストのおかげで、体感ではっきりとわかるほど涼しさを感じるのは間違いないようだ。
運用が始まったのは2024年8月で、以来毎年6月頃から運用が始まり、気温に応じて1回約10分間の噴霧を繰り返しているという。
建設現場のミスト設備を高層住宅に応用
この設備を開発したのは、山西省運城市を拠点とする不動産開発会社「山西天茂房地産開発有限公司」である。発想の原点になったのは、建設現場だったという。
工事中の現場では、以前から粉じんを抑えるために高圧ミスト設備が使われていた。ミストを噴霧した周囲が、他より涼しく感じられることに着目したのだそうだ。
とはいえ、建設現場で使っていた設備を、そのまま高層住宅用に転用できたわけではなかった。
西建・天茂国賓府の建物は棟ごとに高さが異なっているだけでなく、配管の長さも違うため、水圧が均一にならないからだ。
水圧が高過ぎれば、水はミストではなく水滴となって落下してしまう。逆に水圧が低過ぎると、今度は十分な気化冷却が得られないのだ。
開発チームは建物ごとの高さや配管の配置、水圧を何度も計算し直し、最適なノズルの種類や配置を決定したという。
この設備の導入には、それなりに費用もかかる。同社によると、システムの整備には1000万~1650万元(約2億2300万~3億6800万円)以上を投じたという。
また、ミストの1回の稼働時間は約10分程度だが、それにも毎回約1万元(約22万3000円)のコストがかかるんだとか。
とはいえ、この費用はすべて開発会社が負担しており、住民が追加料金を支払うことはないそうだ。
派手なミストと美しい虹が観光名所に
運城市は黄河沿いの運城盆地に位置しており、山西省の中でも夏の暑さが厳しい地域として知られている。
同市の7月の平均気温は27.4℃だが、過去には42.7℃を記録したこともある。年間降水量は約530mmと比較的少なく、強い日差しによって建物や舗装面が熱を蓄えやすい気候である。
設備が話題となった2026年7月上旬には、山西省気象台が高温黄色警報を発表し、運城市を含む地域で最高気温35℃以上、一部では37℃以上になる見込みとして警戒を呼びかけていた。
この「屋頂雨」が稼働し始めると、熱中症を恐れて外出を控えていた高齢者や子供たちも、積極的に外に出て散歩や水遊びを楽しむようになったという。
また、ミストが噴霧される際に現れる美しい虹も人気を呼んでおり、今では観光名所になっているそうだ。
水を大量に使用することで環境への影響は?
この「屋頂雨」には、称賛だけでなく疑問の声もあがっている。
運城市が属する黄河流域は、1人あたりの水資源量が約530立方メートルしかなく、国際的に深刻な水不足とされる基準の半分ほどだ。
運城市を流れる涑水河の流域では、主要なダムが何年も干上がり、地下水のくみ上げも過剰になっている。
開発会社は費用こそ公表しているが、1回の噴霧で何トンの水を使うのかは明らかにしていない。
現地報道は、噴霧した水が粉じんを抑え、植物への散水も兼ねる「一水多用」だと説明しているが、水を回収して再利用する仕組みがあるのかは確認できない。
大規模に運用した場合にどれだけの水が必要になるのか、ノズルがミネラル分で詰まらないのか、室内の気温まで下がるのかは、いずれも検証されていない。
また、効果が出る条件も限られる。
気化冷却は空気が乾いているほどよく効くため、湿度が90%近くまで上がる中国南部や日本の夏では、水が蒸発しきらず蒸し暑さが増すだけになりかねない。
世界的に夏の気温上昇が激しくなっている今、街を冷やす試みは必要だが、限りある資源を冷却に回してしまった場合、将来的に環境にひずみが生じてしまう可能性も否定できない。
References: China’s “Rooftop Rain” Urban Cooling System Goes Viral[https://www.odditycentral.com/videos/chinas-rooftop-rain-urban-cooling-system-goes-viral.html]











