白亜紀の地球で史上最強と言われた陸上肉食恐竜ティラノサウルス。その赤ちゃんは猫とほぼ同サイズであることが、新たな化石の分析により明らかとなった。
イギリスのバース大学などの研究チームが、博物館に眠っていた小さな骨の化石の中から、1歳未満で死んだティラノサウルスの赤ちゃんの化石が複数発見した。
化石から大きさを導き出したところ、全長75cm、体重わずか1.7kgと、イエネコほどの体長で、体重はそれよりもかなり軽いことがわかった。
さらに1回に20~30個もの卵を産んでいた可能性が高いことも判明した。
ジュラシック・パークとは全く違う展開で、これから恐竜映画を作る場合にはティラノサウルスの描き方を変える必要がありそうだ。
この研究成果は『Biology[https://www.mdpi.com/2079-7737/15/13/1090]』誌(2026年7月7日付)に掲載された。
3つの小さな化石はティラノサウルスの赤ちゃんのものだった
恐竜の研究では、大きくて見栄えのする骨の化石ばかりが注目され、小さくばらばらになった化石は博物館の収蔵庫に眠ったままになる。
イギリスのバース大学の古生物学者ニコラス・ロングリッチ氏率いる研究チームは、複数の博物館に所蔵されたまま、きちんと調べられていなかった小さな化石を調べ直した。
すると、カナダ・サスカチュワン州で見つかった足の甲の骨、アメリカのサウスダコタ州で見つかった下あごの骨、アメリカのワイオミング州で見つかった複数の歯の化石が、ティラノサウルスの赤ちゃんのものであることが判明した。
足の甲の骨の化石には、表面が多孔質(無数の細かい穴が開いた構造)になっていた。
骨が成長する際、栄養を送る血管が密な網目をつくって無数の穴を残すため、これは成長途中の子どもの証拠となる。さらに骨の裏側にある出っ張りの形が、ティラノサウルス・レックスの特徴と一致した。
下あごの骨の化石は、内側の隆起の形がティラノサウルスの特徴を示していた。
複数の歯の化石は、先端の摩耗や形がティラノサウルスのものと一致した。
これらの化石は、姿が似ているため長年ティラノサウルスの赤ちゃんと混同されてきた小型肉食恐竜ナノティランヌスとは異なっていた。
3つの化石はいずれも別々の個体だが、これまで知られている中で最も小さなティラノサウルスの赤ちゃんのものだったのだ。
死んだ時点の年齢を割り出す
次に研究チームはこれらの化石の死んだ時点の年齢を割り出した。
足の甲の骨の断面には密度の違う2つの層があり、内側は卵の中でつくられた密度の低い骨、外側は孵化して自分の体重を支えて歩くようになってからつくられた密度の高い骨になっていた。
この構造から、足の甲の骨の持ち主であるティラノサウルスは、孵化後、数週間から数か月だけ生きて死んだ1歳未満の赤ちゃんだとわかった。
下あごの骨は、歯の根や生えかけの歯の様子から、まだ卵の中の胚ではなく、孵化した直後の赤ちゃんのものであることがわかった。
複数の歯の化石は大人のティラノサウルスよりもかなり小さく、根が溶けて抜け落ちた跡があり、先端がすり減っていた。
餌を食べて歯を使っていた証拠であり、胚ではなく孵化後の赤ちゃんのものだと確かめられた。
こうして3つの化石はいずれも1歳未満の赤ちゃんだと裏づけられた。
赤ちゃんはイエネコサイズ、孵化直後はさらに小さかった
さらに研究チームはティラノサウルスの赤ちゃんの大きさを割り出した。
手がかりとなったのは、足の甲の骨の化石だ。
研究チームは、シンクロトロンという強力なX線を使い、この化石を壊さずに内部を撮影した。
その結果、ティラノサウルスの赤ちゃんが死んだ時点で、全長75cm、体重2.5kgであると推定された。
体の大きさはほぼイエネコサイズだが、体重はそれよりも軽い。
孵化した瞬間までさかのぼると体重1.7kgと、大人のティラノサウルスの体重の0.1%にも満たないことがわかった。
従来、ティラノサウルスの赤ちゃんは孵化時に全長1mほどあると推定されていたが、実際にはもっと小さかったことになる。
卵を一度に20~30個産んでいた可能性
ティラノサウルスの卵の化石はこれまで1つも見つかっていないが、赤ちゃんの体重がわかれば卵の大きさを割り出すことが可能となる。
現生のワニと鳥では、孵化した赤ちゃんの体重が卵全体の65~67%を占める。
この法則を当てはめると、ティラノサウルスの卵は2.5kg前後になる。10トンを超えると言われている恐竜が産む卵としてはとても小さい。
ティラノサウルスは体が大きく、現生の恐竜である鳥類が少ない卵を大切に育てることから、これまでは少数の卵を産んで育てたと考えられてきた。
しかし親の体が大きいほど一度に産む卵の総重量も大きくなるという法則から推測すると、ティラノサウルスは1回に21~32個の卵を産んでいたことになる。
研究チームは、条件によっては50個や100個の可能性も否定できないとしている。
1つの巣に数十個の卵があったのなら、そこには数十匹の赤ちゃんがひしめいていたのかもしれない。
生まれてすぐ歩き、骨ごと肉に噛みついていた
赤ちゃんティラノサウルスの足の骨の化石には、体重をかけて動いたときにできる、骨の内部が作り替えられた跡が残っていた。
卵の中でじっとしている段階では起こらない変化で、関節の面もしっかり発達していたことから、赤ちゃんは孵化してまもなく巣を離れ、自分の足で歩いていたと考えられる。
歯にも痕跡が残っていた。歯はずんぐりと太く、先端のエナメル質がすり減って内側の象牙質が露出していた。
大人のティラノサウルスがトリケラトプスの骨を噛み砕くのと同じように、赤ちゃんも骨ごと噛みついていたのだ。
現生のワニの子どもは昆虫や小さな動物を食べるが、ティラノサウルスの赤ちゃんは体の大きさに比べて大きな獲物を食べていた。
アメリカのオクラホマ州立大学の古生物学者エリック・スナイブリー氏は、孵化直後のティラノサウルスの化石が大人のものとよく似ていたことに最も驚いたと語っている。
足の骨は長さに対して細いだけで、大人の特徴をすべて備えていたのだ。
大量に産む爬虫類と、少数を育てる鳥類の中間にいた
生き物が子孫を残す方法は、子をたくさん産むか、少なく産んで手をかけるかで大きく2つに分けられ、r-K戦略説と呼ぶ。
子をたくさん産み、その中から生き残る子に子孫を託すのがr戦略で、産む数を少なくし、確実に育て上げるのがK戦略だ。
赤ちゃんが小さく数も多かったティラノサウルスは、r戦略に近かったことになる。
とはいえ、親がまったく世話をしなかったわけではない。
現生のワニも鳥類も巣と子を守っており、その仲間であるティラノサウルスも、ある程度は子を守っていたと考えられる。
ロングリッチ氏は、ティラノサウルス類がワニやカメのような爬虫類と、現生の鳥類との中間にいたと語っている。
手厚い子育ては中生代を通じて少しずつ進化し、その流れの中にティラノサウルスもいたのである。
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まとめ
この研究でわかったこと
- ティラノサウルスの赤ちゃんは全長75cm、体重1.7kgと、猫くらいの大きさしかなかった。
- ティラノサウルスは卵を一度に20~30個も産んでいた可能性が高い。
- 赤ちゃんは生まれてすぐ歩き、自分で獲物に噛みついて食べていた。
まだわかっていないこと
- ティラノサウルスの卵の化石はまだ1つも見つかっておらず、卵の本当の大きさや形はわかっていない。
References: /doi.org/10.3390/biology15131090[https://www.mdpi.com/2079-7737/15/13/1090] / 'Vanishingly Rare' Discovery: T. Rex Hatchlings Were Smaller Than a Cat And Born by The Dozen : ScienceAlert[https://www.sciencealert.com/neglected-museum-fossils-turn-out-to-be-the-first-t-rex-hatchlings-ever-found]











