アメリカの住宅地で、女性は体が短く丸みを帯びている動物の姿を見かけ、スマホで撮影した。
首も短く尻尾も短い。
女性はそのスペシャルなアライグマに「ジモシー」と名前を付け、ネット上で公開すると、瞬く間に人気に火が付いた。
丸い体つきは生まれつき背骨が短くなる短脊椎症候群によるものと見られているが、よろめきながら塀に登ったり、餌を探して懸命に生きる姿に、世界中の人々から応援の声が集まっている。
短くて丸い。特別な姿をした野生のアライグマのジモシー
2026年7月13日の夕方、アメリカ・ワシントン州シアトル北西部のバラード地区で、住民のキアナ・ホールさん(33歳)は夫と散歩をしていた。
すると、駐車場に停めてあった車の下に動物がいることがわかり、猫かと思ってスマートフォンで撮影を始めた。
だが、車の下から姿を現したのは猫じゃなかった。
体は丸みを帯び、尻尾は短く首も短く手足は長い。これまで見たこともない姿をしていたがその顔を見てアライグマだと気づいたという。
「私は今、何を見たの?」という音声とともに、その様子を撮影した動画をInstagramに投稿したところ、一気に拡散された。
ホールさんは動画のアライグマを見ているうちに「ジモシー(Jimothy)」という名前がひらめき、「ジモシー」と名付けた。
ジモシーはジムとティモシーを混ぜて作られた造語だが、アライグマはジモシーと呼ぶのが一番しっくりきたのだという。
オスかメスかは今も確認されていないが、名前が定着するとともに「彼」という呼び方も広まった。
話題が話題を呼び世界中で人気爆発
7月16日に地元紙シアトル・タイムズが動画を紹介するとジモシー人気は加速し、他の住民からも近年の目撃情報が次々と寄せられるようになった。
バルコニーの手すりの上を歩く姿や、幼いころのジモシーが家族と一緒にいる映像が相次いで投稿された。
幼いころのジモシーを知る住民のベン・トランメルさんが、当時撮影した映像をインスタグラムに投稿した。
トランメルさんによると、ジモシーは隣家の木立で長年暮らしてきたアライグマの家族のもとに生まれたという。
「ジモシーはとても小さくて不器用だったけれど、母親ときょうだいはいつも辛抱強く愛情深くて、転ばないように見守ったり、時には抱きかかえたりしていた」とトランメルさんは投稿コメントに書きこんだ。
なぜジモシーは特別な体なのか
専門家は、ジモシーの丸い体つきは短脊椎症候群という生まれつきの病気によるものとみている。
短脊椎症候群は、背骨を作る一つ一つの骨である椎骨が、母親の体内で育つ段階でうまく分かれず、短く縮んだりくっついたりする珍しい病気だ。
ペンシルベニア州立大学の生態学者ジュリアン・D・エイブリー氏によると、原因は劣性の欠陥遺伝子にあり、父親と母親の両方から1つずつ受け継いだときにだけ症状が現れるという。
背骨は、もとは一続きだった組織が母親の体内で一定の間隔ごとに区切られ、椎骨という個々の骨に分かれていく。
エイブリー氏によると、欠陥遺伝子を持つ動物ではその区切りがうまく進まず、椎骨が短いまま残ったり、隣り合う骨どうしがくっついたりする。
短脊椎症候群は犬や牛など他の哺乳類でも起こるが、欠陥遺伝子を持つ個体同士が出会う確率が低いうえに、生まれた後の負担も大きいため、報告例そのものが極めて少ない。
ただしジモシーを直接診察した専門家は誰もいないので、公式な診断結果ではない。
ジモシーの健康状態は?
直接調べられていないため、ジモシーの健康状態は推測することしかできない。
ワシントン州立大学獣医教育病院の准教授マーシー・ログスドン氏は、体が短いにもかかわらずジモシーの見通しは明るいと語っている。
この年齢まで生きてきたこと自体がうまく環境に適応している証拠であり、たくましく成長していることに驚かされたと述べている。
エイブリー氏によると、短脊椎症候群の動物は、変わった体つきとそこから生じる困難を抱えていても、脳の働きと内臓の働きはたいていの場合正常に保たれているという。
エイブリー氏は、最初の難関である発達過程を乗り越えており、ジモシーは、普通のアライグマと同じ一生を送れると予想している。
一方でコーネル大学獣医学部のブライアン・コリンズ氏は、体の変形によって木に登ることや餌を探すこと、捕食者から逃げることが難しくなり、寿命が短くなる可能性を指摘している。
アライグマの生態を研究するネッシー・オニール氏は投稿した動画[https://www.youtube.com/shorts/typ1Opc0MSg]の中で、もし、短脊椎症候群ならば、ジモシーが痛みを抱えている可能性があることを指摘した。
飼い主がいる犬とは違って野生のアライグマは治療を受けたり、お世話をしてくれる人もいない。
癒着した椎骨や肋骨に負担がかかっているかもしれないという。
短い体で生き抜く姿が人々に勇気と希望を与える
ジモシーは今や世界中の人々に応援されている。
ジモシーのファンが集まる掲示板[https://www.reddit.com/r/JimothyTheRaccoon/]が作られ、目撃情報を追跡する専用サイト[https://whereisjimothy.com/]まで登場した。
地元のプロ野球チームであるシアトル・マリナーズ[https://www.reddit.com/r/Mariners/comments/1uzjpn1/make_noise_for_jimothy/]、シアトル美術館[https://www.instagram.com/p/Da6yXpED5a_/]、シアトル公共図書館[https://www.instagram.com/p/Da56Wlbn4bq/?img_index=1]もろってSNSでジモシーを取り上げ、ワシントン大学は冗談として名誉学位を授与した。
イギリスの慈善団体である脳卒中支援団体は、ジモシーがくつろぐ姿を見ると血圧が下がるという冗談をSNSに投稿している。
「この小さな生き物にただただ驚かされるばかりだ」とあるユーザーは書き込んだ。「私たちは何としてもジモシーを守らなければならない。」
短い体で木に登り、餌を探し、ここまで生き延びてきたジモシーの姿は、ただかわいいだけではなく、困難を乗り越える力を持つたくましさの象徴として受け止められ、壁画やイラスト、タトゥーの題材にまでなった。
つらい話題が並ぶ日々の中で、アライグマが懸命に生きる姿が、人々に勇気と希望を与えているのだ。
人間ができる最善の支援は餌を与えず遠くから見守ること
人気が高まる一方で、ワシントン州魚類野生生物局は、人間にできる最善のことはそっとしておくことだと呼びかけている。
同局は、生まれつきの障がいがあるように見えるが、ジモシーは誰の助けも借りずに問題なく動き回っているとして、そのまま見守ってほしいと述べた。
野生動物への餌やりは、アライグマを人に慣れさせて車にはねられる危険を高めるうえ、人慣れしすぎたと判断されて行政に排除される事態も招く。
一か所に多くのアライグマが集まれば、病気や寄生虫が広がる原因にもなる。
エイブリー氏は、ジモシーにとって最大の危険は病気そのものではなく人間の反応だと指摘し、餌を与え始めると野生動物は危険への警戒心を失って苦しむことになると語っている。
ただし遠くから見守ることをやめる必要はない。エイブリー氏は、多くの人が敬意ある距離を保って応援するのはむしろ素晴らしいと述べている。
アライグマを見た人が、次はヤマアラシや庭の茂みに巣を作るアメリカコマツグミを見たいと思うようになり、身の回りで起きている野生動物たちの環境へ関心を広げていくとエイブリー氏は考えている。
7月26日には、シアトル市議会議員のアレクシス・メルセデス・リンク氏がジモシーをたたえる公式宣言を出し、地域の美術コンテストも開かれる予定になっている。
References: An Unusual-Looking Raccoon Nicknamed Jimothy Is Winning Hearts Across the Internet for His Short, Round Body[https://www.smithsonianmag.com/smart-news/an-unusual-looking-raccoon-nicknamed-jimothy-is-winning-hearts-across-the-internet-for-his-short-round-body-180989157/] / Meet Jimothy, the unusually round Seattle raccoon capturing hearts worldwide | CBC News[https://www.cbc.ca/news/world/jimothy-raccoon-seattle-9.7276241] / The 'sad' truth about Jimothy, Seattle's uber-viral raccoon[https://nypost.com/2026/07/17/us-news/the-sad-truth-about-jimothy-seattles-uber-viral-raccoon/]











