エアコンのつかない真夏の家で、幼い子どもと過ごす。それだけでも十分辛いのに、さらに思わず目を背けたくなる“問題”があったとしたら……。


 今回は、そんな状況に追い込まれてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

エアコンを頑なに使いたがらない義父

 吉沢彩芽さん(仮名・34歳)は、義父の「極端なまでのケチさ」に、密かに頭を悩ませてきました。

 彩芽さん一家は義父と同居しているわけではなく、年に数回、お正月と8月に、孫である夢乃ちゃん(仮名・3歳)の顔を見せに義父の家を訪れるのが恒例。ところが、その毎回の滞在が彩芽さんにとっては試練でした。

「夢乃の顔を見せに行くのはいいんですが、義父が暖房もクーラーもつけてくれない人なんですよね」

エアコンをつけず、ほぼ裸で歩き回る汗だくの義父…最悪の状況を...の画像はこちら >>
 義父はとにかく冷暖房を使わない人。冬でも暖房は一切つけず、分厚いセーターの上にはんてんを重ね着して平然と過ごしており、夏に至っては、エアコンどころか扇風機すら回さないのだそう。

「ですが不思議なことに、義父は決してお金に困っているわけではなく、むしろ裕福で立派な一軒家に住んでいるんですよ」

 義父はことあるごとに「季節に逆らわず受け入れるのが一番の健康法だ」と言うんだそう。

 たしかに、昔はそれで通用したのかもしれません。しかし近年の夏の暑さは命に関わるレベルで、熱中症のリスクもあります。冬も底冷えする室内ではまったくリラックスできず……何よりそこにはまだ幼い夢乃ちゃんがいるので、彩芽さんはいつも気が気じゃありません。

「夫も何度も義父に『お願いだよ、子どもがいるんだから』と説得しましたが、返ってくるのは決まって拒否の言葉で。最終的には『たった1泊だから、波風立てずに我慢して過ごそう』ということになり、これまで耐えてきたんですよ」

裸に近い格好で、汗だくで歩き回る

 けれど、夏の滞在だけはどうしても苦痛でした。冷房がない暑さに加えて、義父の“服装”が耐え難かったそう。

「時に下着のシャツまで脱いでほぼ全裸に近い格好で、汗だくで歩き回るんです。
見たくもないものを見せられて……夢乃だっているのに、本当にやめてほしいんですよね」

 彩芽さんは思いきって、一度だけやんわりと「せめて下着だけは上下、身につけてくれませんか?」とお願いしてみました。

「ですが義父は露骨に不機嫌になり、『自分の家で自分の好きに過ごして何が悪い?』と一蹴されてしまって」

 一般的な常識も、配慮のお願いも、義父の耳にはまるで届かなかったそう。

娘の一言がきっかけで状況は一変

「そんなある夏の日、義父がいつものようにほぼ全裸に近い格好で居間に現れた瞬間……夢乃がじっと義父を見上げて首をかしげながら、無邪気にこう言ったんですよ」

エアコンをつけず、ほぼ裸で歩き回る汗だくの義父…最悪の状況を一変させた“3歳児のひと言”とは?
※画像はイメージです
「じいじって『はだかのおうさま』なの? でもここ、えほんのせかいじゃないからへんだよね?」と。その場にいた大人たちは思わず息をのみ、空気は一瞬で凍りついて時間が止まったかのようになりました。

「義父は言葉を失い、周囲の視線に気づくと、何も言わずにそそくさと自室へ引っ込んでいったんですよね」

 しばらくして戻ってきた義父の姿を見て、彩芽さんは思わず目を見張りました。そこには、きちんと服を着た義父が少し恥ずかしそうな顔をして立っていたそう。

それからどうなった?

「なぜかそれ以来、義父は薄着を改め、訪問時にはエアコンもつけてくれるようになったんですよね」

 大人がどれだけ言葉を尽くしても動かなかった義父でしたが、悪意のない子どものたった一言が、凝り固まった価値観をあっさり溶かしてしまったようでした。

 それ以来、義父の家は夏も冬も過ごしやすい空間になりました。夢乃ちゃんが何事もなかったかのように安心して遊び回れるようになったことで、彩芽さんもようやく心からホッとできるようになったそう。

「思いがけない形で訪れた、家族の小さな変化でしたね。子どもの素直なひと言が、義父の心を解き、家族の空気をふわりとやさしく変えてくれた……。夢乃のお陰で私のストレスもなくなり、本当に感謝しています」と微笑む彩芽さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。
『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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