南極の血の滝に古代海洋微生物の子孫が生息。かつての海だった痕跡が残されていた
南極の血の滝 Image credit:Peter Rejcek, National Science Foundation

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 南極東部のテイラー氷河の崖から、血のように赤い水が湖に流れ出す「血の滝」がある。

 これまでの研究で、古代の微生物に由来する鉄分が、空気に触れることで滝の水が赤くなることがわかっていた。

 アメリカのスクリップス海洋研究所などの研究チームの新たな研究によると、これらの微生物の一種は海にしか生息しておらず、現在もその子孫が生きていることが明らかとなった。

 ここは海から30km以上も内陸にある。かつて南極が暖かかったころ、テイラー氷河の谷まで海が広がっていた可能性があるという。

 この研究成果は『Nature Geoscience[https://www.nature.com/articles/s41561-026-02054-6]』誌(2026年8月3日付)に掲載された。

南極の氷河から流れ出す「血の滝」が赤い理由

  南極大陸の東部にあるテイラー氷河の中に、そこだけ真っ赤に染まっている場所がある。

 白い氷河の崖から血のような色の水が流れ出し、氷におおわれたボニー湖へと流れ落ちていく。

 1911年にイギリスの地質学者トーマス・グリフィス・テイラー氏が探検の途中で見つけて以来、この場所は「血の滝」と呼ばれてきた。

 赤い水のもとをたどると、氷河の下にたまった塩水にたどりつく。塩がとても濃く溶けているため、氷点下でも凍らずに液体のまま残ってきた。

 2023年に発表された研究によると、この塩水には古代の微生物に由来する鉄分が、ナノスフェアと呼ばれる非常に小さな球の形でたっぷり含まれていることがわかった。

 鉄分は氷の下に閉じ込められている間は色がついていないが、崖から外に出て空気にふれると、釘や自転車がさびるときと同じ変化が起こり、赤茶色に染まる。

 血の滝の血のような赤色はこうして生まれていたのだ。 

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血の滝だけに生息していた海洋微生物

 氷河の下に微生物がいることはわかっていたが、調べられてきたのは細菌の仲間ばかりで、細胞の中に核を持つ微生物にはほとんど目が向けられてこなかった。

 スクリップス海洋研究所のアンジェラ・ゾンプリス氏らの研究チームは、まだ調査されていない微生物を調べるため、血の滝の周辺と、周りの谷や湖、さらに比較のため、30km以上離れた海から、合計167点の試料を集めて分析を行った。

 その結果、赤くそまった塩水の泥に集まっていたのは、海にしか生息しない微生物だったことがわかった。

 少し離れた谷の湖や川では、淡水や陸にすむ微生物が大半を占めており、血の滝の周りだけに海洋微生物が生息していたのだ。

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古代海洋微生物の子孫だった

 海か淡水かを見分ける手がかりになったのは、珪藻(けいそう)と呼ばれる単細胞の藻である。

 ガラスの成分でできた殻を持つ小さな藻で、海にすむ種類と淡水にすむ種類がはっきり分かれている。

 赤い泥では、見つかった珪藻の6割以上が海にすむ種類だった。

 しかも見つかったのは死んだ細胞の残りかすではなかった。

 研究チームはRNAという物質を手がかりにしている。RNAは細胞が遺伝子を働かせるときにつくられ、壊れやすいのですぐに分解されてしまう。

 RNAが残っていれば、その微生物は今まさに活動している。

 調べてみると、光合成のための遺伝子や、濃い塩水の中で細胞を守るための遺伝子が働いていた。

 南極の乾いた谷では強い風が吹くため、海にあった小さな細胞が空を運ばれた可能性も考えられる。

 そこで研究チームは風によって集められた試料も調べたが、海の微生物はほとんど含まれていなかった。

 さらに血の滝の微生物を今の海にいる近い仲間と比べると、遺伝子に違いがあった。

 血の滝にいた海洋微生物は、大昔に海からやってきた微生物の子孫だったのだ。

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かつて血の滝があった場所は海だった可能性

 研究チームは、血の滝がある谷にかつて海が入り込んでいたと推測している。

 南極が今よりずっと暖かく、海面も高かった時代に、海水がテイラー谷まで入り込み、やがて海面が下がり、氷河が前進して谷の底に海水を閉じこめたのだ。

 塩が濃いおかげで水は凍らず、中にいた海の微生物も生き延びた。

 厳しい時期には硬い殻に閉じこもって休眠し、環境が良くなるのを待つ性質を持つものもいる。

 100万年以上の時が流れ、南極は今の凍りついた大陸に変わった。それでも氷河の下では、海からやってきた微生物の子孫が生き続けてきたのだ。

 ただし、現在血の滝に生息している海洋微生物はそのままの姿ではない。厳しい環境を生き抜いたものだけが残ったと研究チームは説明している。

 それでも、かつて南極の谷まで海が広がっていた痕跡が、微生物の体に記録されていたのだ。

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References: DOI.s41561-026-02054-6[https://www.nature.com/articles/s41561-026-02054-6] / Ancient Marine Life May Be Hiding In Antarctica's Blood Falls | Scripps Institution of Oceanography[https://scripps.ucsd.edu/news/ancient-marine-life-may-be-hiding-antarcticas-blood-falls]

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