赤外線をフルカラーで見ることができるメガネが開発される
Image credit:Fu et al., Sci. Adv. 12, eaed0245 (2026)

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 本来なら人間の目には見えないはずの赤外線を、フルカラーで認識できるようにする画期的なメガネが開発され、人類の視覚の限界を超える技術として注目を集めている。

 中国の北京理工大学の研究チームが発表したこのデバイスは、特殊なナノ粒子と有機EL技術を組み合わせることで、赤外線の波長の違いを赤や異なる色調に変換し、網膜に直接映し出す仕組みだ。

 真っ暗闇でも周囲の状況を鮮明に把握できるようになるため、視覚障害の治療や高度な拡張現実の発展など、さまざまな分野での応用が期待されている。

 この研究成果は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aed0245]』誌(2026年7月29日付)に掲載された。

人間が赤外線を見ることができない理由

 光の感じ方について、人間はほかの動物に比べてかなり制限されている。

 人間の目は波長が約400から700ナノメートルの可視光線しか捉えることができず、全電磁スペクトルのわずかな部分しか見えていない。

 赤外線は熱を持つ物体から常に放射され、私たちの周りにあふれている。 しかし、波長が700ナノメートルを超える赤外線の光子はエネルギーが低く、網膜の光感知細胞を刺激できないため、人間は赤外線を見ることができないのだ。

  一方で、ガラガラヘビやチスイコウモリなどの動物は、この赤外線を感知して暗闇で獲物を探す能力を持っている。

 これまでにも赤外線を可視化する暗視装置はあったが、赤外線の強さを緑色などの単色で表示するものだった。

 人間の目はわずかな明るさの差よりも色の違いを見分ける能力に優れているため、単色の表示では視覚の感度を十分に生かしきれていなかったのだ。

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特殊なナノ粒子で波長の違いをフルカラーに変換

 この生物学的な限界を克服するため、中国の北京理工大学の研究チームは、赤外線を捕らえてフルカラーの可視光に変換する新しいシステムを開発した。

 ここで重要な役割を果たすのが、赤外線を検出するテルル化水銀でできた「コロイド量子ドット」と呼ばれる特殊な人工のナノ粒子だ。

 このナノ粒子が赤外線の光子を吸収し、そのエネルギーを電荷へと変換する。

 変換された電荷は、スマートフォンやモニターなどに使われる自ら発光する技術「有機EL(OLED)」の層に送られる仕組みだ。

 有機ELの層には2つのカラーチャンネルがあり、波長が長く弱い赤外線は赤色に、波長が短く強い赤外線は赤とシアン(黄色がかった色調)の混合色にと、赤外線の微妙な違いを異なる色に変換する。

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自然な風景の上に赤外線映像を重ねて表示するメガネ

 研究チームは、この変換システムを重さわずか23gの半透明なメガネ型の試作機に組み込んだ。

 テストにおいてさまざまな文字や図形、動く物体に赤外線を当てたところ、メガネはその情報を色付きの画像として表示することに成功した。

 さらに画期的なのは、装置が半透明であるため、通常の可視光による風景を見ながら、その上に赤外線の情報を重ねて同時に見ることができる点だ。

 着用者は自然な視覚を妨げられることなく、直感的に赤外線の変化を捉えることができる。

 研究チームの計算によると、色と明るさを組み合わせたこのフルカラー表示は、従来の単色表示に比べて約200倍も高い感度を実現しているという。

 フィルターを追加して可視光を遮断すれば、赤外線だけを見る暗視モードに切り替えることも可能だ。

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生物の視覚系への刺激を確認

 研究者たちは、変換装置から出る光が実際に生物の視覚系に届くかどうかも確認している。

 光に反応するタンパク質を持たせた神経細胞や、マウスの脳波、人間の網膜電図を使った実験を行った。

 その結果、変換された可視光が視覚系を確実に刺激していることが示された。

 この新たな技術は生物学的な進化の境界を越えるものであり、将来的には暗所での確実な移動支援や、より高度な拡張現実(AR)デバイスへの応用が期待されている。

 また、損傷した細胞の代わりに機能する人工的な網膜受容体として、人間の視覚機能を修復する可能性も秘めているという。

実用化に向けた課題も残されている

 ただし、実用化に向けてはいくつかの課題も残されている。

 今回の実験は制御された環境で行われており、複雑な現実世界でどこまで機能するかはまだわかっていない。

 また、有機ELを動かすための外部電源が必要であり、量子ドットに使われている水銀を含む材料の安全性や生体への影響についても長期間の検証が求められる。

  誰もが暗闇を見通すスーパービジョンを手に入れるにはもう少し時間がかかりそうだが、技術は確実に進歩している。

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References: DOI: 10.1126/sciadv.aed0245[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aed0245] / Infrared glasses could push the boundaries of human eyesight | Popular Science[https://www.popsci.com/technology/infrared-glasses-human-eyesight/]

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