地球上で最も強力な太陽望遠鏡が、太陽表面の驚くべき真の姿を捉えた。
アメリカ国立太陽天文台らの研究チームは、ハワイにあるダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡を用いて、太陽表面に無数の渦を巻く構造が存在することを初めて確認した。
これまで理論上では予測されていたが、この渦が太陽の爆発を引き起こし、外側の大気だけが数百万度に熱せられる謎を解く鍵になるかもしれない。
この研究成果は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10871-3]』誌(2026年8月5日付)に掲載された。
世界最大の望遠鏡が高解像度の太陽の表面を撮影
ハワイのマウイ島にあるハレアカラ火山の山頂近くに、ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡がある。アメリカ国立太陽天文台が運用する、口径4mの世界最大の太陽望遠鏡だ。
研究チームは、この望遠鏡を太陽の黒点の近くに向けた。黒点は磁場が特に強くはたらき、まわりより温度が低いために黒く見える場所である。
撮影された画像は、史上最高の解像度となった。
太陽の表面にある幅20kmほどの構造まで見分けられる細かさで、直径がおよそ140万kmある太陽では、これまでどの望遠鏡も届かなかった領域である。
そこには、磁場の境目に沿って、無数の渦巻き模様が写っていた。
理論だけの存在だった渦がついに姿を見せた
この渦巻き模様は、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性と呼ばれる現象である。
密度の違う二つの流れが違う速さですれ違うと、境目に摩擦が生まれ、波状やらせん状の渦ができる。
地球では海の波やうろこ状の雲として見られ、木星や土星の大気でも観測されてきた。
太陽の表面をおおうプラズマも激しく入り乱れているため、科学者たちは太陽にも同じ渦があると考えていた。
プラズマとは、気体がさらに熱せられて電気を帯びた状態のことで、太陽はほとんどがプラズマでできている。
ところが渦があまりに小さく、これまでの観測機器では解像度が足りず、理論上の存在だった。
研究チームは、物理の法則をもとに太陽の表面を計算機で再現し、観測画像と見比べたところ、この渦巻き模様がケルビン・ヘルムホルツ不安定性であると確定した。
太陽で確認されたのは、これが初めてである。
さらに研究チームを驚かせたのは、渦の数だった。
まれに起きる局所的な現象ではなく、磁場の境目のいたるところに渦があったのだ。
アメリカ国立太陽天文台のデヴィッド・クリゼ博士は、これほど遍在しているとは予想していなかったと語っている。
渦が太陽の爆発とコロナの謎を解く鍵になる
渦が太陽の表面全体に広く存在しているとすれば、渦を巻きながらプラズマと磁場を混ぜ合わせ、太陽の大気全体のエネルギーの流れに影響を与えている可能性がある。
太陽の磁力線は、髪を編むようにねじれ合うと張力がたまり、限界を超えるともつれが切れて一気にエネルギーを放出する。
これが太陽フレアなどの巨大な爆発の正体だが、何が磁力線をねじっているのかは分かっていなかった。今回見つかった渦は、その答えの候補になる。
太陽の表面温度は約6,000度だが、外側にある大気層のコロナは数百万度という異常な高温になっている。
外側のほうが熱い理由は太陽最大の謎とされてきた。
クリゼ博士によると、渦があるとエネルギーは次々と小さな規模へ移っていき、やがて熱として散っていく。それがコロナを熱くしている可能性があるという。
太陽フレアやコロナ質量放出と呼ばれる巨大な爆発は、地球の通信網やGPS、電力網に深刻な被害をもたらす宇宙天気を引き起こす。
今回見つかった無数の渦のような現象を理解することは、太陽の謎を解き明かし、爆発による被害を予測するための重要な第一歩となるだろう。
References: NSF Inouye Solar Telescope Enables Major Discovery of a Hidden Solar Process - NSO - National Solar Observatory[https://nso.edu/press-release/nsf-inouye-solar-telescope-enables-major-discovery-of-a-hidden-solar-process/] / DOI.s41586-026-10871-3[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10871-3]











