タイの標高の高い山奥で、頭に角が生え、首から背中にかけて棘が並ぶ、ファンタジーの世界から飛び出してきたかのようなトカゲが発見された。
タイの研究チームが調べたところ、これまで知られていない新種であることが確認された。
黄色がかった体色や卵をたくさん産むという特徴が、ドラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』に登場するドラゴンにそっくりだったため、「シアラックス」の名がつけられた。
この研究成果は『ZooKeys[https://zookeys.pensoft.net/article/186636/]』誌(2026年7月31日付)に掲載された。
タイの高山の森に潜んでいた未知のトカゲ
タイのチュラポーン王立アカデミー、カセサート大学などの共同研究チームは、同国西部にあるメーウォン国立公園の生態調査を行っていた。
過去の記録から、この地域の山林には「ベニクシトカゲ(Acanthosaura lepidogaster)」というトカゲが生息していると考えられていた。
イグアナに近い仲間であるアガマ科のトカゲで、後頭部から背中にかけて棘状のうろこが櫛のように並んでいる。
しかし、研究チームが標高1,340mの場所を調査した際、ベニクシトカゲは見つからなかった。
ところが2025年4月23日、研究チームはリストに載っていない、未知の小さなトカゲを3匹発見した。
研究チームが1か月後の5月26日に同じ場所へ戻ると、さらに5匹のトカゲが見つかった。
合計8匹の標本を調べた結果、科学的にまったく新しい種であることが判明したのだ。
ハウス・オブ・ザ・ドラゴンから命名。小さく多産な「シアラックス」
この新種は、クシトカゲ属で23番目の種として「Acanthosaura syrax(アカントサウラ・シラックス)」と名づけられた。
名前の由来は、大ヒットしたファンタジードラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』に登場する、レイニラ・ターガリエン女王が乗るドラゴン「シアラックス」である。
学名はラテン語読みするため、発音は「シラックス」となる。
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、世界的に人気を集めた『ゲーム・オブ・スローンズ』の前日譚にあたる作品で、ドラゴンを操るターガリエン家の物語が描かれている。
研究者たちがこの名前を選んだのには、明確な理由があった。
ドラマの中に登場するシアラックスは、黄色い体色をしており、ほかのドラゴンと比べて小柄で、卵をたくさん産むという設定がある。
今回発見されたトカゲも、オスの唇や首の周りが黄緑色で、メスには淡い黄色やクリーム色の模様があった。
さらに体の大きさは、一番大きなオスで約6.9cm、最大のメスでも約10.1cmと非常に小柄である。
なお、この数字は頭の先から胴の後端までの長さで、尾は含まれていない。
それに加えて、調べたメスのほとんどが一度に6個から16個という、体のサイズにしては多くの卵を抱えていた。
これらの特徴が架空のドラゴンと見事に一致したため、特別な名前が与えられることになったのだ。
英語での呼び名としては「シアラックス・マウンテンホーンドドラゴン」が提案されている。
独自の進化を遂げた、新種トカゲの特徴
クシトカゲ属の仲間は、首から背中にかけてギザギザとしたトゲ(クレスト)を持っているのが大きな特徴である。
この姿からクシトカゲ属は、英語では「マウンテンホーンドドラゴン(mountain horned dragon)」と呼ばれている。
ミャンマーや中国南部からマレー半島にかけて、東南アジアの広い範囲に生息している。
しかし、新種のトカゲは同属のどの種よりも首と背中のトゲが短い。
また、近縁のトカゲによく見られる目の周りの黒い模様がなく、首を横切るようにひし形の暗い模様が入っている。
研究チームは、これら51に及ぶ身体的な特徴を、ほかのクシトカゲ属の種と細かく比較した。
さらにDNA解析を行った結果、もともと生息していると思われていたベニクシトカゲを含む、ほかのすべての種とは異なる独自の進化系統であることが科学的に証明された。
生態も少しずつ明らかになっている。
朝から昼にかけて岩や倒木の上で日光浴をし、夜明けにミミズなどを探して食べる。
活動のピークは乾季の終わりから雨季の始まりにあたる4月から6月中旬で、雨が強くなったり、気温が10℃まで下がるような寒い時期には活動を低下させ、木のうろや岩の下に隠れて過ごす。
孤立した環境。山のドラゴンの未来を守るために
現在までのところ、新種のトカゲはメーウォン国立公園の標高1,300m以上の限られた場所でしか確認されていない。
わずか50km北の低い標高の暖かい場所には、別の種であるベニクシトカゲが生息している。
アカントサウラ・シラックスは、涼しい高山の気候に特化して適応してきた。
生息域は険しい地形によって自然に分断されており、個体群が孤立している状態だ。
研究者たちは、これ以上生息環境が脅かされれば、グループ同士の接触が絶たれ、種そのものが存続の危機に陥る可能性があると警告している。
研究チームは、メーウォン国立公園の高地林に対する保護をさらに強化するよう呼びかけている。
ファンタジーの世界から名前を借りたこの小さな本物のドラゴンが、絶滅が危惧されるビルマムツアシガメやインドシナトラなどとともに、地域の豊かな自然を守るためのシンボルになることが期待されている。
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References: New mountain dragon lizard from Thailand named after Syrax from House of the Dragon | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1139290] / DOI: 10.3897/zookeys.1287.186636[https://zookeys.pensoft.net/article/186636/]











