動物の食べ残しが、クラフトビールや和菓子になって戻ってくる、そんな循環型プロジェクトが注目を集めている。川崎市と三菱化工機は7月27日、夢見ヶ崎動物公園(川崎市幸区)で出る餌の残さを堆肥にし、地域で育てた作物を商品にする実証実験「夢見ヶ崎プロジェクト」を開始。
同園は6月末現在で51種274点を飼育し、餌を調理する過程で1日およそ12キロの残さが出る。設置したコンポストの処理能力は1日10キロだが、当初投入するのは2キロにとどめた。三菱化工機企画部の山田宏一氏は「まずは安定的な品質を作っていく」と説明。肥料として地域の手に渡る以上、成分のばらつきを避けるためだ。
月60キロの堆肥は3カ所へ配布。ホップを育てる幸区日吉出張所、レモングラスの北加瀬こども文化センター、レモングラスとよもぎのコミュニティーファームVOVOだ。苗の植え付けは7月3日と6日に済ませ、収穫は10月上旬を見込む。ホップは年10キロでビール450リットル、レモングラスは3~4キロで菓子1000~1500個分にあたる。
商品にするのはいずれも地元川崎のアイコニックな企業で、東海道ビール、老舗和菓子店の東照、元祖ニュータンタンメン本舗の3社。8月に中身を詰め、9月にサンプルとパッケージを固め、11月1日に川崎駅周辺で開かれる「Colors, Future! Summit」で売り出すという。ビールだけは作付けが間に合わず、来年度を予定している。
技術ではなく座組みを試す
福田紀彦市長は4期目のテーマに「回る、つながる、循環都市へ」を掲げ、民間企業との実証実験は他都市より数多くこなしてきた。
それでも「実証だけでは、実証疲れというものがある。本当に具体化して実装できるのかが気になっていた」と振り返る。対等な立場で企画を練る総合窓口として5月に「川崎フューチャーコラボ」を設け、6月に三菱化工機と循環型社会の実現に関する連携協定を締結した。今回はその第1弾。
三菱化工機は1935年、化学工業機械の国産化を目的に川崎で創業した。排水処理や大気汚染防止を手がけて91年になる技術系の企業だが、田中利一社長は自社技術が同プロジェクト内のどこで使われるかについては「現時点で具体的にこの技術が使えるというものはない」と答えたが、将来は食品残さのバイオガス化などへの応用を見据えるという。
数ある未利用資源から動物園の残さを選んだ理由を、山田氏は3点挙げた。毎日ほぼ同じ品質のものが安定して出ること。
夢見ヶ崎動物公園は1950年に加瀬山の公園として開かれ、1974年に動物園となった。園内に民有地が混在してエリアを囲えないため、当初から入場料を取っていない。市が再整備の検討過程で示した資料では、直近5年の平均収入は一時使用料などで約14万2000円。これに対し、人件費や飼料代などの平均支出は約1億5000万円に上る。
来園者はピーク時の1980年代終盤に約60万人を数えた。2010年代後半以降は10万~20万人程度で推移している。施設の老朽化も進み、市は今年5月に再整備計画を策定した。寄付やサポーター制度の拡充など、付加的な収入の確保はそこでも課題に並ぶ。
数パーセントが持つ意味還元率は「数パーセント程度からのスタート」(山田氏)。
この収支構造は同園に限った話ではなく、入場無料や低料金で運営する公立園の多くが似た事情を抱えている。それだけに、その最初の答え合わせとなる同プロジェクトには、大きな期待が集まっている。
取材時の写真から
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