衆議院での審議を通して疑問点が解消されることはなく、むしろ深まるばかりだった。数の力で強引に法案の成立を図るようなことがあってはならない。

 日本の国旗を傷つける行為に刑罰を科す日本国旗損壊罪法案が6月30日、自民党、日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。
 衆院本会議では、法案提出に加わった国民民主、参政両党を含め全ての野党が、与党の強引な国会運営に反発し欠席した。
 前代未聞の異常事態の中で、さまざまな問題を抱える法案が可決されたのである。
 法案の問題点は多岐にわたる。「刑罰をもって臨むことなのか」という疑問は自民党の中にもある。
 なぜ、今、そのような法律が必要なのか。「立法事実」が乏しく、緊急性もない。
 自民は審議の中で、1987年に沖縄で起きた、日の丸を引き下ろし火を付けた事件など4例を立法事実として例示した。だが4件とも器物損壊罪で摘発されている。
 法律を作ることによって守ろうとする「保護法益」は何か。法案を提案した与党側は「国旗を大切に思う国民感情」だと説明する。
 だが刑罰を科すことは結果として、思想統制につながりかねない。

 法案は運用次第では、憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」(内心の自由)や21条の「表現の自由」に抵触する可能性がある。その議論は不十分なままだ。
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 政府のナフサ対策に抗議する意味で、日の丸の真ん中の赤を灰色にしたら、国旗損壊になるのか。損壊の概念自体が極めてあいまいだ。
 国旗の損壊に刑罰を科す法律でありながら、肝心の損壊の概念があいまいであれば、恣意(しい)的な運用を許す結果を招く。
 現代アートの世界は、社会問題への関心が強い。法律が制定されれば、芸術そのものが国家によって萎縮させられる恐れがある。
 憲法で保障された「思想及び良心の自由」や「表現の自由」は、現代のような時代にあっては、意識して守り抜かなければ維持するのが難しい。
 自民党の岩屋毅前外相は採決の際、議場を退席した。彼は言う。
 「国旗を尊重する意識は自然な形で育まれるべきもので、刑罰で強制されるべきではない」
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 衆院内閣委員会の審議で、法案を提出した維新の議員は「愛国心の醸成」に期待感を示した。
 国際的に評価の高い作家の川上未映子さんは、Xでこう記している。

 「そもそも愛国心を育てるために処罰を強化するという発想じたいが矛盾している」
 「罰則で国家への敬意を求めることは愛ではなく服従への誘導だろう」
 私たちはこのような見方に賛同する。法案はいったん廃案にし、議論を継続した方がいい。
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