政府、与党が今国会成立を目指す皇室典範改正案は、「国民の総意」とはかけ離れている。成立強行は社会の分断と対立を深めることになりかねない。

 高市早苗首相と日本維新の会の吉村洋文代表が連立合意を重視し、皇族数確保のための皇室典範改正案を今国会で成立させる方針を確認した。
 10日に審議入りし、同日中にも衆院を通過する見通しというが、立憲民主党は反対の方針を示している。
 憲法は天皇の地位を、主権者である国民の「総意に基づく」と定め、皇位は「世襲」によると明記している。
 男性・女性の別については何も規定していない。憲法でいう「世襲」とは男性・女性、男系・女系を含むというのが従来の政府の解釈だ。その一方、戦後の皇室典範は、男系男子による継承を定めている。
 あす審議入りする改正案は(1)女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する(2)旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える-という二つの案を制度化したものだ。
 養子は皇位継承資格を持たないが、養子の子が男性なら皇位継承資格を持つ。この考え方は、衆参正副議長がまとめた「立法府の総意」にはなかった。
 女性皇族については、一般男性と結婚した場合、住民基本台帳に記録されるが、配偶者と子は皇室の戸籍に当たる「皇統譜」に載らない。これも唐突に示されたものである。
 改正案は、現行の「男系男子」による皇位継承を絶対視し、社会に根付いているジェンダー平等の視点がまったく見られない。

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 与野党協議で議論されていない項目が改正案に盛り込まれたということは「立法府の総意」が体裁を取り繕うだけの虚構だったということになる。
 野党からは「だまし討ち」「立法作業をやり直すべきだ」との反発の声が出ている。
 共同通信の世論調査で、72・3%が女性皇族の身分保持案に賛成しているのに対し、養子案への賛成は44・0%、反対が45・4%と、わずかだが上回っている。
 旧宮家の男系男子のみを皇族の候補にするのは「門地(家柄)による差別」を禁じる憲法14条に違反する恐れがある。
 戦前の旧皇室典範は敗戦後に廃止されたが、「男系男子による皇位継承」の原則は、現行の皇室典範にも引き継がれた。
 その妥当性が問われているのである。
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 皇位継承制度に構造的な欠陥があるのは明らかだ。民間から天皇家に嫁いだ女性は「男系男子による皇位継承」というプレッシャーにさらされる。だが、これだけはどうすることもできない。
 欧州の王室は男女平等に基づき、王位継承を「男子優先」から「長子優先」へ変革してきた。
 旧宮家や国民各層からの意見を聞くことなしに、連立合意にこだわって今国会成立を強行すれば、大きな禍根を残すことになるだろう。
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