中国の軍備増強や威圧的な軍事行動、国内締め付けがエスカレートしている。
 中国共産党の創建105年を記念する行事で、習近平党総書記(国家主席)は、台湾統一への決意を表明するとともに、こう強調した。

 「強国には強軍が不可欠だ。世界一流の軍隊建設を加速させる」
 同じ日に施行されたのが「民族団結を破壊する行為」を禁止する民族団結進歩促進法である。
 同法は「台湾同胞の中華民族に対する帰属意識を増進する」と規定。ウイグル族、チベット族などの少数民族を念頭に「外部勢力の干渉を受けない」との立場を鮮明にしている。
 懸念されるのは、同法が国外の団体や個人も対象としている点だ。何が違反に当たるのかもはっきりせず、「国境を越えた弾圧だ」との批判が国際的に高まっている。
 市民に対しては民族団結破壊行為を「通報する権利がある」と明記し、当局への密告を奨励しているのも異様である。
 そして6日。中国海軍とロシア海軍による合同演習が始まったその日、中国は、太平洋に向けて潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行った。
 中国が米国の軍事力に対抗し、核戦力の強化を急いでいるのは明らかだ。
 トランプ米政権は中国に対し、核軍縮の枠組みに加わるよう求めているが、中国と米ロの核戦略に大差があるとして交渉に応じていない。
■    ■
 一方で中国は、高市政権下で進む急速な防衛力強化を「新型軍国主義」だと批判。
軍民両用品の対日輸出規制の対象を広げるなど、経済面でも圧力を強めている。
 日中対立の構図は、台湾海峡だけでなく、南シナ海にも及んでいる。
 4月から5月にかけて実施された米軍とフィリピン軍の大規模合同演習に、自衛隊が初めて本格参加した。 
 国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が、南シナ海の大半に主権が及ぶとする中国の主張を否定する判断を示してから今月で10年となった。
 日本など14カ国が共同声明を発表し、あらためて「中国の主張には法的根拠がない」と指摘したのに対し、中国外務省は「拘束力のない紙くず」だと批判した。
 今ほど法の支配と紛争の平和的な解決が求められている時はない。
■    ■
 日本政府は緊張緩和と東アジアの軍縮に向け、歴史の歯車を転換させる役割を果たすべきである。 
 だが、高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中の政府間交渉はほとんどないに等しい。
 政府間対話がなく、けんか腰の批判と双方の軍備増強・防衛力強化だけが進む現状は、不健全であるだけでなく、日中双方にとって極めて危険である。
 対立をあおるような日中関係を巡る社会の空気も、政府間関係が変化すればおのずと変わる。
 関係の再構築が急務だ。
編集部おすすめ