広島はきょう、長崎は9日に「原爆の日」を迎える。
 81年前。
米軍の原子爆弾投下により、街は一瞬にして灰じんに帰した。広島ではその年の年末までに約14万人、長崎で約9万人が強烈な熱線、爆風、放射線の犠牲となった。
 被害は瞬間的な大破壊と大量殺戮(さつりく)にとどまらない。放射線の影響は戦後も、多くの人々に被爆の苦しみや環境破壊ももたらしてきた。原爆は、戦争を「人類の存亡に関わる危機」へと大きく変えたのである。
 核兵器の非人道性について被爆者たちは、身を削りながら世界へ訴えてきた。日本被団協は10日に結成70年となる。結成宣言には「自らを救うとともに、私たちの体験を通して人類の危機を救おう」との決意がつづられている。
 しかし、「核なき世界」への道は厳しさを増している。
 米国とロシアの間で唯一残っていた核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約(新START)」は2月に失効。中国も核戦力の強化を急ぎ、フランスは3月の大統領演説で核弾頭の増産を表明した。
 核抑止力への依存が高まり、核保有国と非保有国との溝は深まっている。

 5月に開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は成果文書を採択できず決裂した。2015年と22年に続き3回連続となり、1970年の条約発効以来初めての事態に。核保有国が主導する核管理の空洞化は進むばかりだ。
■    ■
 国内に目を向ければ、高市早苗首相の就任後、国是とされてきた「非核三原則」の見直し論が急浮上している。
 昨年12月には安全保障担当の官邸筋が「私は核を持つべきだと思っている」と発言。先月は小泉進次郎防衛相が、安全保障環境の変化を踏まえ「あらゆる政策をタブーなく議論しなければならない」と核兵器に関する議論の必要性に言及した。
 民意はどうなのか。
 日本世論調査会の平和に関する全国世論調査では核兵器を「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を「堅持するべきだ」とした人は76%だった。米国の核兵器を日本に配備し共同運用する「核共有」についても「目指すべきではない」とした人は77%に上っている。
 「唯一の戦争被爆国」として、国民は「非核」を求めているのである。
■    ■
 こうした国民意識と、核抑止力の強化に傾斜する大国に同調するような安保政策は乖離(かいり)していると言わざるを得ない。
 全国では6月下旬までに25都道府県の82議会で非核三原則の堅持や法制化を求める意見書が可決された。

 沖縄県も3月、核廃絶を目指す国際団体「グローバル・アライアンス」に加入した。自治体の加入は広島、長崎に続き3県目だ。
 「核軍拡競争」に日本が加担することがあってはならない。
 政府は平和国家であり続けることを望む国民の声に耳を傾けるべきだ。
編集部おすすめ