いったい何があったのか。知事選を巡る不可解極まりない事態が、告示の2日前に表面化した。

 選挙戦に向けて立候補を表明していた元郵政民営化担当相の下地幹郎氏が、一転して出馬を取りやめると発表した。これまで政策面などで繰り返し批判してきた元那覇市副市長の古謝玄太氏を支援するという。
 立候補取り下げは、自民党側から話を持ちかけられたようだ。下地氏は、子どもの貧困対策や普天間飛行場の返還期日の明示など4項目の合意を交わしたことで、政策を前に進めると強調した。
 しかし、こうした合意は本来、選挙に出馬する人と政党が政策を実現するために結ぶものだ。選挙から降りることを条件にした密室のやりとりには、「裏取引があったのではないか」との疑念が付きまとう。
 合意の文面も「実現に向けて努力する」となっている。これでは努力目標の域を出ない。
 普天間返還期日については、「(移設工事を)2036年に終了させ、その後速やかに返還する。その期日を明らかにする」とされた。とはいえ政府の説明通りなら、もともと36年に返還される計算だ。どの部分が新しいのかはっきりしない。

 辺野古移設を工程通り進めるとの記述もあり、下地氏のこれまでの主張と食い違う。
 下地氏は集会や座談会、公開討論会などで政策を訴えてきた。告示直前での撤退表明は、耳を傾けてきた有権者を愚弄(ぐろう)するものだ。
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 さらに問題なのは、自民党本部の姿勢だ。
 今回の合意は、党本部が党県連を飛び越えて下地氏に直接働きかけたとされる。県連からも「寝耳に水だ」などと批判や戸惑いの声が上がっている。
 党本部の狙いは保守系を一本化し、選挙を有利に進めることだ。
 しかし下地氏が「右でも左でもない」と主張してきたように、2人の政策や支持層には相当な違いがある。わずか数日の話し合いで、下地氏が出馬取りやめという重大な結論を出した経緯には違和感が残る。
 下地氏側は今後の選挙での自民党復党や比例での公認を否定しているが、後援会関係者は「ギブアンドテイクだ」とも話している。
 これまでも沖縄の選挙で自民党中央や政府がさまざまな形で選挙に関与していきたが、今回は一線を越えた印象がある。
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 下地氏の出馬取りやめで、現職の玉城デニー氏と古謝氏とによる事実上の一騎打ちとなりそうだ。
下地氏は古謝氏を支援する方針を打ち出したが、これまで「第三極」を標榜(ひょうぼう)してきた下地氏の票が、どちらに流れるかは見通せない。
 古謝氏を推薦する公明県本や維新内にも、下地氏との連携に否定的な意見は少なくない。自民党本部の強引な手法が、選挙態勢に影響を与える可能性がある。
 密室の合意で有権者の政治不信も高まれば、下降線をたどる投票率がさらに低迷しかねない。
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