メジャーデビュー25周年を迎えたコブクロが、36枚目となる両A面シングル「霞日和/Starry Smile Story」を22日にリリースした。今作には、別れの記憶を描いた王道バラード「霞日和」、心の赴くままに生きることを歌った「Starry Smile Story」、長い時間をともに過ごした男女の何げない会話を描く「Message Card」の3曲を収録。25年を経ても、新しい言葉を探し、より良い音を追い求め、互いに「おもろいの作ったな」と思わせることを楽しみ続ける2人。新作3曲の制作秘話から、AI時代に音楽を作る意味、創作を続けるための日々の過ごし方まで、コブクロの“今”を聞いた。

■ここまで表現できた曲は珍しい 奇跡のような曲

――25周年という節目にリリースされる今作は、「霞日和」「Starry Smile Story」「Message Card」と、それぞれに違う表情があります。まず、おふたりにとってどんなシングルになりましたか。

小渕健太郎】最初にできていたのが「Starry Smile Story」なんです。昨年のツアーのアンコールで歌うために作った曲で、デビュー25周年を迎える前年のツアーの最後に、次を予感させるような曲を届けたかったんです。ものすごくシンプルなメッセージですけど、「夢を見ようよ」とか、「まだまだいろんなことができるよね」ということを込めたかった。そして、年が明けて曲作りを始めたときに、「Starry Smile Story」があったからこそ、「じゃあ、まったく違う曲を」というふうに、3曲で今のコブクロを表せるものにしたいと思ったんです。そうして「霞日和」と「Message Card」ができました。「霞日和」は、今のコブクロをぎゅっと絞ってドリップしたような、そんなメロディーラインと歌詞の世界だと思っています。コブクロがやってきたことの延長線上にありながら、今まで歌えていなかった描き方もできたと思います。

【黒田俊介】僕はちょっと小渕とは違う角度なんですけど、今回はすごくいい音で全部録れたんです。マイクの調子が本当に良くて、ミックスもアナログ要素の強いものになって、マスタリングはロンドンのマット・コルトンにお願いしたんですけど、それがめちゃくちゃ良かった。特に「霞日和」は、家のオーディオで聴いてもめちゃくちゃいいなと思います。楽器の配分も、低音の出方も全部いい。ぜひ、みなさんイヤホンでじっくり聴いてください。

――「霞日和」は一般的には存在しない言葉で、“さよなら”が歌われた楽曲でもあります。改めて、この曲に込めた思いを教えてください。

【小渕】人生の中には数限りなく別れがありますけど、その中にある、たった一つの“さよなら”を描いた曲です。全部の別れを忘れられないと言っていたら大変ですけど、その中でも、たった一つのさよならだけは、今もそのさよなら自体とさよならできていない自分がいる。でも、それは悲壮感に暮れているということではなくて、あの日から自分の生きる道を決めなければいけなくなった覚悟だったり、さよならしたけれど、今も見守ってくれているような気がするほどの思いだったり。そういうものを描いてみたくなったんです。

それでメロディーから浮かんでくる情景から「霞日和」という言葉がぽんと出てきました。小説や映画などに同じ言葉がないか調べたんですけど、文献にもないし、映画にもない、辞書にも載っていない。もし「霞日和」という風景があるとするなら、それは聴いた人の中にしか浮かばないものということになるんです。誰も見たことがないものを、音楽の中だけに存在させることができる。答えもないし、僕たちが「こんな色です」と説明する必要もない。それって音楽ができる最高のマジックだと思うんです。

――後半に向けてのアレンジも印象的でした。

【小渕】間奏部分で転調して、そこからまた転調するんです。本当に坂道を登っていくようなイメージのアレンジで、その坂道がどこに続いているかは、聴いた人の想像にお任せしたいですね。悲しい記憶ではなくて、思い出すと気持ちがふわっと明るくなっていくような、今も自分にとって大切な人を想像してもらえたらうれしいです。

――黒田さんは「霞日和」を受け取ったとき、どんな印象でしたか。

【黒田】最初は、後半に向けて盛り上がっていく部分を強く出して、湿っぽくなりすぎないほうがいいのかなと思いました。「霞日和」なので、“霞”だけではなく“日和”というポジティブな言葉も入っていますから。でも、やっぱりAメロの雰囲気を考えると、しっとりした“霞”のほうにいったほうがいいのかなと思って。レコーディングで歌を録りながらいろいろ話して、最終的には少ししっとりした世界観に落ち着きましたね。

――サビのエモーショナルな歌唱も印象的です。

【黒田】エモーショナルに、どこまでいくべきかというのもありましたね。そこはもう、小渕プロデューサーの判断で(笑)。

【小渕】本当に見事な歌を歌ってくれました。せっかく黒田が思い描いた形で歌えたとしても、それをきちんと録音できていなかったらもったいないじゃないですか。今回は、黒田が思い描いた歌を歌えて、それをきちんと録音できて、さらにリスナーの方にきちんと届けられる音源になった。イントロの1音から、黒田の歌のすべて、間奏、アウトロの1音まで、ここまで表現できた曲は珍しいと、ファンブログにも書きました。なかなかそうはいかないんですよ。それは一つの奇跡だと思います。それがきちんとパッケージに収められて、この曲をツアータイトルにもして全国を回れる。ライブでどうなっていくのかも楽しみですね。■25年かけないとたどり着けなかった場所

――「Starry Smile Story」は、メジャーデビューから25年を経て、改めて“YELL”を歌っているようにも感じました。25年前のエールと、今のコブクロが届けるエールには、どんな違いがありますか。

【小渕】歌詞に“ハートに掛けた鍵を外して”という言葉があります。あまり使ったことがない言葉ですけど、「生きたいように生きられていますか?」という投げかけも含んでいるんです。生きたいように生きられていない人のほうが多いかもしれないし、それが当たり前なのかもしれない。みんなが生きたいように生きていたら、世の中がむちゃくちゃになるかもしれないですしね(笑)。でも、その中でも、1週間に2日ぐらいはものすごく自分らしくいられるとか、あの店でご飯を食べているときは楽しいとか、仲間で集まっている時間は最高だとか。あるいは、一念発起して「来年は会社を辞めて好きなことをやろう」と思うことかもしれない。そういうところにつながっていけばいいなと思っています。生きたいように生きることの難しさと素晴らしさは、いつも背中合わせですから、それを少し気楽に、硬くならずに歌いたかったんです。

――小渕さんも、生きたいように生きることの難しさを感じますか。

【小渕】音楽はもちろん、人間としても「こうしたい」「ああしたい」と思います。でも、50歳を手前にして、やりたいことの半分もできないですよね。「今年もできなかったな」「やっぱり無理か」と思いながら、少しずつ好きなこともやっている。でも、好きなことだけをやるのが人生ではないと思う部分もあります。そういうことを乗り越えて成長するからこそ、人に何かを伝えられるという意味もあるでしょうし。本当に悲しい出来事がなかったら、歌を作る意味もないと思うんです。そういうところは、25年かけないとたどり着けなかった場所でもあると思います。

――黒田さんは「Starry Smile Story」を歌ううえで、どんなことを考えましたか。

【黒田】こういう曲が、実は一番難しいんです。「Starry Smile Storyって、どういう意味!?」って(笑)。デモテープが送られてきたときも、そこから始まるんですよ。まずメロディーを覚えて、歌詞を読んで、最終的には曲の中身がわかる。でも、「結局、Starry Smile Storyってどういう意味なん!?」って(笑)。前向きでポジティブなメッセージだということはわかるんですけどね、どうなん!?

【小渕】ハハハ!歌詞の最後に“今日は 満天の笑顔だ”という言葉が出てきます。もう最後はその言葉しかないなと思ったんです。満天の星空が全部笑顔に変わるぐらい、前向きな気持ちを持ってほしいという思いですね。

【黒田】その辺が25年やって変わったんですよ。デビューした時は「桜」とか「YELL~エール~」とか「轍-わだち-」とか、誰でもわかる言葉だったのに。今はもう「霞日和」とか(笑)。

――そこまで新しい言葉に向かうのはなぜなのでしょうか。

【小渕】今は文章もそうですけど、質問すればAIが何でも答えてくれるじゃないですか。でも、それは過去の文献や蓄積された情報から出てくる言葉でもあると思うんです。だからこそ、新しい言葉や、誰も聞いたことがないものを作るべきなんじゃないかと、どこかで思っているんでしょうね。僕らが面白い音楽に感じてきた「何、この歌詞?」「何、このアルバムタイトル?」という感覚は、やっぱり人間にしかできない。さらに言えば、コブクロしか書かないであろうものを書かなかったら意味がないと、すごく思っています。物語一つにしても、過去にない物語じゃないと意味がない。だから、黒田が「どういう意味!?」って言ってくれれば言ってくれるほど、僕はガッツポーズです(笑)。■マッサージカード…!?

――「Message Card」は、会話劇のような歌詞が印象的です。この曲が生まれた背景を教えてください。

【小渕】家に大事なギターを置いている部屋があって、そこに好きなCDやいただいたメッセージカードがあるんです。すごくていねいに、思いを込めて書いてくれているメッセージカードなんですけど、僕自身も、大切なときにはメッセージカードを書いて渡すんです。年に何回もないかもしれないけど、書くときの気持ちは今でもくすぐったいんですよね。普段メールやメッセージでやり取りしている言葉とは違って、実は思っていることがある。だからこそ恥ずかしい。でも、カードだったら書けるっていう。でも、そこにこそ本当に伝えたいことがあるんだろうなという発想が、メロディーを聴いていたときにぽんと浮かびました。

メロディー自体がすごくポジティブで明るくて、みんなで肩を揺らしながら聴きたくなるようなサビだったんです。それで、「Message Card」というテーマで1曲書けるかなと思いました。歌詞の2人を、長い時間をともに過ごしてきた関係にしたのは、時間が経ったからこそ言いたいことを言えない関係もあると思ったからです。付き合いたての2人なら、毎日メッセージカード以上のことを言い合っているかもしれない。でも、長い時間が経って、ものすごい信頼関係ができた2人には、そこにしかない思いがあるんじゃないか。片方はそれを受け取って、ちょっと恥ずかしそうにしている。そんなやり取りがいいなと思ったんです。

――黒田さんはメッセージカードを書きますか?

【黒田】メッセージカードなんて書いたことないですから。カードといったら、ツアー中に整体へ行って、そこでもらうカードくらいですよ。

――それはマッサージカードじゃないですか(笑)。

【黒田】15回行ったら1回ただになるみたいなポイントカードね(笑)。

――では「Message Card」の世界観にかけて、25周年の今、お互いに一言ずつ“メッセージカード”を贈るとしたら、どんな言葉を届けたいですか。

【黒田】「どうやって痩せたん?」。それしかない(笑)。もう、すごく痩せたんですよ。

――どうかしたんですか!?

【小渕】全然!一般的なトレーニングです!

【黒田】それしか言わないからね。

【小渕】食事管理して。めちゃめちゃベタベタな健康管理です。何もそこにはございません(笑)!50歳手前なので、一念発起しないとなと思って。でも、無理をするのは嫌だったので、何か続けられることはないかなと思ったんです。■「楽しいか?楽しんでるか?」それだけでいい

――小渕さんから黒田さんへは?

【小渕】シンプルですけど、「楽しいか?楽しんでるか?」でいいんじゃないですかね。お互い、もう「楽しいか」ということしか確認し合わないというか。「これでいいのか」とか、そういうことではなくて、楽しくないなら別にやらなくてもいいんじゃない、ということの連続です。僕が黒田にそう思うということは、たぶん黒田も、僕が楽しそうに曲を作っていなかったら、でき上がったものをそういう気持ちで受け取るしかないと思うんです。でも、僕は曲を作ることが大好きだし、作れと言われたら、放っておいたらなんぼでも作るという精神状態でいられている。だから楽しく作れるわけです。無理に「何曲も作らなきゃ」ということもないし、僕が楽しく作れば、黒田も楽しく歌ってくれるだろうし。もっと言えば、「おもろいの作ったな」と思われてこそ楽しい。そういう気持ちを、お互いに投げ合っているところはあると思います。

――「放っておいたらなんぼでも曲を作る」という言葉が印象的です。25年を経ても、そういう状態でいられるために心がけていることはありますか。

【小渕】自分が出向きたいところに、とにかく出向くことです。そこには本当に変わらない情熱があって、「あとリハーサルまで3日しかないけど、この2日間でライブに行けるな」とか、「この映画を観てから、あれをやって、これをやって」とか。行きたいところには、とにかく絶対に行く。そこから一つでもコブクロに持って帰ってこられたらいいなと思っています。でも、その時に歌詞を書こうなんて1ミリも思っていないんです。僕にとって、日常は休憩なんですよ。「さて!」と思う日にスタジオへ入る。その日に何も出てこなくなったら、もう僕は終わりやなと思っています。今もそれをやり続けられている。それは、日々休んでいるからだと思います。脳みそをぷかぷか浮かばせているというか、ぎゅっとならないようにする。昔は日々メモを取ったり、録音したりしていた時代もありました。でも、それだと頭が休めないんです。柔軟に、ふっと思いつくことがなくなってしまう。だから、できるだけ考えない。ただ見る、感じる。考えずに、本当に感じるということに必死です。一生懸命、休んでいます。

――黒田さんは、活動を続けていくうえで大切にしていることはありますか。

【黒田】僕が最近一番ハマっているのは、ChatGPTに家のオーディオのセッティングを聞くことです(笑)。ものすごく的確なんですよ。家にスピーカーが5セットぐらい、アンプも10個近くあって、CDプレーヤーも5、6台あるんですけど、「どれが相性ええかな?」と聞くと、完璧に答えてくれる。例えば歌の相談も、「もうちょっとこういうふうに歌いたい」と聞いたら、いろいろ教えてくれる。本当にすごいですよね。

――そうした日々の積み重ねも歌につながっていそうです。

【黒田】どんどん自分の好みが明確になってくるんです。それは自分のレコーディングにも生きてくる。音に触れていると、最終的には「どうやって歌えばいいのか」というところにもたどり着くんですよ。

――そんな黒田さんのご自宅のオーディオで聴いても、今作はいい音で聴けそうですね。

【黒田】本当、めちゃくちゃいいですよ!

――デビュー25周年の記念日には、25年前のジャケットを再現した写真も公開されました。25年前の自分たちにメッセージを送るなら、どんな言葉を伝えたいですか。

【小渕】あの頃は自分たちも不安で、「やっとメジャーデビューできる」「夢のようなメジャーデビューだ」というときでした。25年前の自分たちには、「25年経っても応援歌を歌ってるぜ」と言いたいですね。自分たちが頑張るために作っていたつもりの曲を、数え切れないほどの人たちが自分自身へのエールとして受け取ってくれた25年だったんだぞ、と。それによって、僕らもまたエールをもらっている。がむしゃらにやって、気づけば25年経っているような気もしますけど、「その道を信じて頑張れ」ということだけですね。

――黒田さんは?

【黒田】難しいな、それ。ChatGPTに聞こうかな…(笑)。うん「まず、頑張りましょう!」ですかね!

――7月25日からは全国ツアーも始まります。どんなツアーになりそうですか。

【黒田】前回の単発ライブから、音響スタッフを含めてスタッフ体制に変化があって、今回はその体制になって初めてのツアーになります。前回もすごくいい手応えがあったので、それがもっと良くなっていくんじゃないかというのが楽しみですね。

【コブクロ】
小渕健太郎(ギター&ボーカル)、黒田俊介(ボーカル)によるデュオ。1998年、大阪の堺市でストリートミュージシャンをしていた黒田と小渕が出会い結成。2001年、シングル「YELL~エール~/Bell」でメジャーデビュー。2005年、『第56回 NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす。昨年開催の大阪・関西万博では、公式アンバサダーを務め、オフィシャルテーマソングとして書き下ろした「この地球(ほし)の続きを」は、同年4月12日の開会式でも披露され反響を呼んだ。7月22日に両A面シングル「霞日和/Starry Smile Story」をリリース。25日からは全国ツアーを開催する。

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