よい睡眠をとるためには、どんな寝室がいいのか。睡眠医療が専門の医師の小林義昭さんは「寝室はあまりに無機質な空間よりも自然物を取り入れたほうが、睡眠にとってよい場合がある」という――。

※本稿は、小林義昭『「やること多すぎ世代」の快眠図鑑 忙しくても“自然と眠れる”ルーティン50』(小学館クリエイティブ)の一部を再編集したものです
■「ベッドでダラダラ」は睡眠に良くない
× 寝る前にベッドの上でダラダラするのが好き
◯ ベッドには眠くなってから入る
夕食や入浴を済ませた後、早めにベッドに入ってリラックスタイムを楽しむことが習慣になっている人はいませんか。ベッドから見える位置にテレビを置いてドラマや映画を観たり、ベッドサイドテーブルに飲み物を置いて飲んだり、本を読んだり、スマホをいじったり……。
たしかに、究極のパーソナルスペースとも言えるベッドや寝床は、だれにも気兼ねすることなくリラックスできる場所かもしれません。しかし、良質な睡眠をとるための習慣づけや環境整備である「睡眠衛生」の観点からは、ベッドは睡眠(および性交)のためだけに使用するべきだといわれています。
就寝前のスマホは、交感神経を優位にするなど睡眠にとってよくないことだらけですが、ほかにもデメリットは存在します。不眠症に効果的とされる治療法のひとつに「認知行動療法」があります。
この治療では、「ベッド=眠る場所」と脳が認識しづらくならないために、長い時間をベッドの上で過ごさないよう指導されます。アプリやインターネットは人を“離さないよう”に設計されているので、ベッド上でスマホを触ると、ついつい長い時間を過ごしてしまいます。
■ベッドでの読書は15分以内
なお、本書で「就寝前には読書がオススメ」と述べましたが、できればベッド以外で読書をするのが望ましいでしょう。どうしてもベッドの上で読書をしたい場合でも、最長15分程度までにしてください。
ちなみに「認知行動療法」には、あえて普段より遅い時間にベッドに入ることで、ベッドに入ってから眠るまでの時間を短くするというアプローチがあります。これは前述のとおり、不眠症の人の多くが悩む「ベッド=眠れない場所」という心理的な条件づけを解くため。

つまり、ベッドの上で長時間だらだら過ごすのは、この認知行動療法と逆の行動なのです。ぜひ「ベッドは眠るためだけの場所にする」という習慣を意識してください。
〈今日から試そう〉
・寝室に行くのは眠くなってからにする
■寝室には「緑色」を取り入れるといい
× 寝室は無機質な空間になっている
◯ 寝室に緑色を取り入れる
「部屋にはなるべく何も置きたくない」という人もいるでしょうが、寝室はあまりに無機質な空間よりも自然物を取り入れたほうが、睡眠にとってよい場合があります。 特に、緑色には不安やストレスを和らげる心理的効果があります。
非常に興味深いのは、緑色といっても植物だけでなく、緑色を多く使った風景画や写真を飾るだけでもこれらの効果が期待できることです。公園の写真を見た人は、都市の光景を眺めた人よりも副交感神経が活発になり、心拍数も低下したという報告もあります(※1)。
一方で、生きた観葉植物に関しては、ほかにもメリットがあります。植物を育てる行為(水やりや剪定)は、セロトニンやオキシトシンを生み出し、心の安定に貢献します。ただし、生きた植物を育てる場合、カビや虫が発生する可能性があり、寝室の環境を悪化させてしまう危険性を含みます。また、ペットの犬や猫が食べてしまったとき、害がある植物もあるので注意が必要です。
■木製家具や畳を取り入れるのもオススメ
最近では、おもに酸化チタンなどの光触媒加工を施したフェイクグリーン(人工観葉植物)が販売されています。これは、光が当たることで酸化力(分解力)を発揮し、空気中の有害物質を分解する優れものです。
人工物であるため虫がつくこともなく、寝室に置くにはふさわしいといえるでしょう。
また、森林総合研究所と筑波大学、帝京大学が行った研究によると、寝室に木材・木質の内装や家具、建具がある人のほうが精神的な安らぎを感じる割合が高く、不眠症状の緩和などが期待できるとしています(※2)。さらに、畳に使われるイグサの香りには副交感神経の働きを活発化させ、睡眠効率を向上させる効果があるとする九州大学の研究も存在し(※3)、寝室に自然物由来の家具などを置くこともオススメできそうです。
〈今日から試そう〉
・寝室の壁に緑の多い風景画や写真を飾る

・フェイクグリーンを置く

・木製家具や畳など自然物由来の家具を使う
■ものの置きすぎは逆効果
× 部屋が乱雑でベッドから服や書類などが見える
◯ 部屋を片づけ、なるべく寝室から“現実感”をなくす
前ページで寝室には緑色の風景画やフェイクグリーンなどを飾ったほうが睡眠にはよいと述べましたが、あまりに色々なものを置きすぎるのは問題です。視覚から入ってくる情報が多すぎると、脳がリラックスできなくなってしまうからです。
米セントローレンス大学が行った心理学研究の調査によると、なかなか物を捨てられず、部屋が散らかって物であふれている「ためこみ症(Hoarding disorder)」を患っている人は、睡眠障害や睡眠相後退症候群などのリスクが高まることがわかっています(※4)。
ちなみに、ためこみ症は2013年に改訂されたDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)で正式に独立した疾患と認められた病気で、症状が進行するといわゆる「ゴミ屋敷」とよばれる状態にまで発展してしまいます。自然寛解はほとんど期待できないため、精神科医による認知行動療法などの治療が必要です。
■「脱ぎ散らかした服」が目に入るのもNG
片づけが苦手で寝室が乱雑に散らかっていると、寝室に入っただけで気分が滅入ってしまいます。これは、「片づけられない自分」を常に意識してしまうことで自己肯定感が低下するためともいわれています。そんな心理状態で質のよい睡眠は望むべくもありません。質の悪い睡眠の結果、起きているときにやる気が起こらず、ますます部屋を片づけられないという悪循環に陥りかねないのです(※5)。

また、特に脱ぎ散らかした服や仕事の書類の束などがベッド上から見えてしまうと、“やらなければならない未完了タスク”を意識させられます。乱雑な状態が脳を刺激し、覚醒にかかわるホルモン・コルチゾールの分泌量が増え、スムーズな入眠が妨げられるともいわれているので、寝室からは現実感をなくすぐらいのほうがよいでしょう。
〈今日から試そう〉
・寝室にはあまり物を置かない(緑が多い風景画やフェイクグリーンは除く)

・特にベッドから見える位置の物は片づける
<参考文献>

※1van den Berg MM, Maas J, Muller R, Braun A, Kaandorp W, van Lien R, van Poppel MN, van Mechelen W, van den Berg AE. Autonomic Nervous System Responses to Viewing Green and Built Settings: Differentiating Between Sympathetic and Parasympathetic Activity. Int J Environ Res Public Health. 2015 Dec 14;12(12):15860-74. doi: 10.3390/ijerph121215026. PMID: 26694426; PMCID: PMC4690962.

※2 Morita E, Yanagisawa M, Ishihara A, Matsumoto S, Suzuki C, Ikeda Y, Ishitsuka M, Hori D, Doki S, Oi Y, Sasahara S, Matsuzaki I, Satoh M. Association of wood use in bedrooms with comfort and sleep among workers in Japan: a cross sectional analysis of the Sleep Epidemiology Project at the University of Tsukuba (SLEPT) study. J Wood Sci. 2020;66(1):10. doi: 10.1186/s10086-020-1852-y.

※3 森林圏環境資源科学研究室. LOHASを志向した天然素材の新規生理活性機能解明とその応用 [Internet]. 九州大学大学院農学部生物資源環境科学府; 2021 [cited 2026 Mar 12]. Available from: https://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/shinrinken/wp-content/uploads/2021/09/191128.pdf

※4 American Academy of Sleep Medicine. People at risk of hoarding disorder may have serious complaints about sleep [Internet]. 2015 Jun 8 [cited 2026 Mar 12]. Available from: https://aasm.org/people-at-risk-of-hoarding-disorder-may-have-serious-complaints-about-sleep/

※5 トキオ・ナレッジ. 睡眠にいいこと超大全. 宝島社; 2021.

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小林 義昭(こばやし・よしあき)

医療法人社団やまと日高見会理事長・こばやし内科クリニック院長

平成5年富山医科薬科大学医学部医学科卒業、新潟大学医学部大学院にて医学博士号を取得。新潟大学附属病院など県内の基幹病院にて内科・呼吸器内科の研鑽を積み、佐渡総合病院では平成14年に国内でいち早く睡眠時無呼吸外来を立ち上げた。平成24年、新潟大学医学部臨床准教授。平成28年、新潟市中央区に「こばやし内科クリニック」を開設。医療業の傍ら、在宅医療分野では令和元年「ご近所訪看リハビリステーション紫竹山」、介護事業分野では令和4年「ご近所ホーム山木戸」の運営を開始した。現在、睡眠時無呼吸症候群を中心とする睡眠医療において、日本有数の睡眠外来患者の診療実績を有する。日本睡眠学会指導医/日本内科学会総合内科専門医/日本呼吸器学会指導医/日本感染症学会指導医/日本アレルギー学会専門医。

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(医療法人社団やまと日高見会理事長・こばやし内科クリニック院長 小林 義昭)

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