スマホを見ている無駄な時間を減らすにはどうすればいいのか。行動経済学の専門家で青森大学客員教授の竹林正樹さんは「必要なのは根性や我慢ではない。
充電場所を変える、画面を白黒にする、SNSを開きにくくするなど、小さな手法を積み重ねることで行動は大きく変わる」という――。
※本稿は、竹林正樹『すぐやる人の脳のクセ!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■起きてすぐスマホを見ると疲れが溜まる
「直感」はとても単純です。起きてすぐのぼんやりした時間に「なんだかいい朝だ」と感じられれば、その日1日をポジティブに過ごせるようになります。とはいえ、現実はなかなかそうはいきません。目が覚めた瞬間、反射的にスマホを手に取り、SNSやニュースなどを見てしまう人が多いのです(現在バイアス※)。
※現在バイアス……目先の欲に弱く、将来の利益より今の快楽を優先してしまうバイアスのこと
大量の情報が目に入ると、寝ぼけたままの直感を混乱させ、一気に疲れが押し寄せます。理想的なのは、寝室にスマホを持ち込まないことです。しかし、「緊急の連絡が来るかもしれない」「ワンルームだから寝る場所とスマホの距離が取れない」などの問題もあり、むずかしいものです。そこでオススメなのが、スマホの充電コードを短いものに変えること(逆アクセスナッジ※)です。
※逆アクセスナッジ……望ましくない行動にアクセスしにくくして遠ざける設計
コードが短くなることで、スマホはコンセントの近くにしか置けなくなります。結果として、ベッドの中でスマホを使うことがなくなり、「気がついたら手にはスマホ」という状態から解放されます。
さらに、コードが短いと絡まりづらく、見た目もスッキリします。
■アナログの目覚まし時計に変えると…
これにより物理的にも心理的にも、スマホとの距離を自然に作ることができます。毎朝スマホのアラームで起きているという人は、思い切って「アナログの目覚まし時計」を買うのがいいです。
また、すぐに買えない場合は、解約したスマホやガラケーで代用できます。スマホのアラームを目覚ましにしていると、起きた瞬間に手に取り、そのままニュースやSNSに流れてしまう望まない動線ができてしまいます。
これでは、せっかくの朝のさわやかな時間を情報の洪水で台無しにしてしまいます。アナログの目覚まし時計を使えば、スマホに触れる理由が1つ減り、朝の時間を自分のために取り戻すことができます。音だけで確実に起きることができ、余計な誘惑は一切なし。これこそ、直感に優しいナッジです。
POINT 自制心ではなく、「仕組み」でスマホとの上手な距離を保つ
■スマホを手放せないのは仕掛けがあった
赤ちゃんにスマホを渡すと笑顔になり、取り上げると大泣きするという動画を見たことがある人も多いでしょう。これはスマホのカラフルな画面が、視覚的に強い刺激となり、赤ちゃんの直感を興奮させているからと考えられます。同様に私たちがスマホを手放せないのも、「楽しいから」だけではなく、その視覚刺激そのものに、直感が反応してしまっているのかもしれません。

アプリの開発者たちは、ユーザーが夜になると現状維持バイアス(※)が強まることを熟知しています。だからこそ、手放せなくなる時間帯に合わせて、通知やオススメコンテンツを集中させてくるのです。その誘惑に乗って夜にスマホを見続けると睡眠障害や脳の過覚醒を引き起こすリスクがあり、長期的に見るとデメリットのほうが大きくなります。
※現状維持バイアス……「新しいことに手を出して、面倒なことが起きたら嫌」と考え、変化しないことを正当化すること
そこで必要なのが、刺激を鎮静化するナッジです。たとえば、スマホの画面をモノクロ(白黒)に設定すると、途端に画面が味気なく、事務的な印象になります。その結果、キラキラ感が薄れ、スマホに対する魅力が下がり、用事が済めば自然と手放したくなります(反印象ナッジ※)。これは1分でできます。ぜひ試してみてください。
※反印象ナッジ……物ごとや物体の印象を悪くして、魅力を下げることで手放す設計。
〈iPhoneの場合〉設定→アクセシビリティ→画面表示とテキストサイズ→カラーフィルタ→スイッチをOFF

〈Androidの場合〉設定→ユーザー補助→色と動き→色補正→補正モードで「グレースケール」を選択→「色補正を使用」をON

(※設定方法は機種によって異なります。「機種名 画面 白黒」で検索してみてください)
POINT スマホの色彩を奪うとワクワク感が消え、自然と心が離れる
■決まった時間に電源を切ることの効果
前述した通り、夜は現状維持バイアスが強まりやすい時間帯のため、一度スマホを触ると手放せなくなります。そんなスマホの誘惑を無効化するために効果的なのは、決まった時間にスマホの電源を切ることです(実行意図ナッジ※)。

※実行意図ナッジ……行動する具体的な計画をあらかじめ決めることで、その場の行動を迷わなくする設計。
一度電源を切ると、またスマホの電源を入れ直すという一手間が面倒に感じるので、行動を抑制する仕掛けになるのです。ちなみに私は、毎日21時になるとスマホの電源を切ります。それでも3日に一度くらいはわざわざ電源を入れてしまうことがあります。でもそれは、3日に2日はスマホを見ずに過ごせているということであり、それは十分な成功なのです。
ここで必要なのは、完璧さをあまり求めず、少しでもできた日には自分を褒めてあげる姿勢です。
POINT 21時にスマホの電源を切ることで、スマホの誘惑を避けられる
■夜は感情的になりやすい時間帯
スマホを見ているうちにイライラする一因として、SNSがあげられます。とくに夜は否定的バイアス(※)の影響で、感情がネガティブになりやすくなります。そんな状態でSNSを開くと、人と比べて落ち込んだり、つい感情的な投稿をしてしまったりすることもあります。
※否定的バイアス……「いいところ」よりも「悪いところ」が気になること
スマホと距離を空けるためには、電源を切ったり、画面をモノクロにしたりするナッジが効果的です。しかし、それでも手放せない人は、SNSのアイコンをフォルダの奥底に移動させてはいかがでしょうか(逆アクセスナッジ)。というのも、私には、忘れられない黒歴史があります。

3年前、局部麻酔の手術直後にぼんやりした頭のまま、SNSに自作のポエムを投稿してしまったのです……! それも、かなり意味不明な内容でした。気づいてからすぐに削除しましたが、すでに50以上の「いいね」や「笑顔マーク」がついていました。
麻酔後は、酔っぱらったときのような状態で、理性が機能しづらくなります。それなのに、SNSがすぐ手の届く場所にあるのはあまりにも危険なのです。この反省を踏まえ、SNSアプリのアイコンをフォルダを2つ経由しないと到達しない場所にまで移動させました。
また、SNSはオートログインではなく、毎回ログインIDとパスワードを入力する設定にすると、開くのが面倒くさくなり、自然と見る回数が減少していきます。このように、SNSアプリを開くまでのプロセスから「簡単、便利」の要素を取り除くことで、「まずはSNS」という習慣から脱却できるようになります。
POINT SNSは、すぐ開けない場所に隠すことで、感情的になることを防ぐ

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竹林 正樹(たけばやし・まさき)

青森大学客員教授

青森県出身。立教大学経済学部、米国University of Phoenix大学大学院(Master of Business Administration)、青森県立保健大学大学院修了(博士〈健康科学〉)。行動経済学を用いて「頭ではわかっていても、行動できない人を動かすには?」をテーマにした研究を行い、「ホンマでっか⁉TV」(フジテレビ)をはじめ、各種メディアでナッジの魅力を発信。

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(青森大学客員教授 竹林 正樹)
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