■年に一度届く、税金の「答え合わせ」
毎年6月頃、会社から渡される細長い紙、ちゃんと見たことありますか?
「給与所得等に係る市民税・県民税・森林環境税 特別徴収税額の決定通知書」
自営業者や個人で住民税を納めている人には、自宅に「市民税・県民税・森林環境税 税額決定納税通知書」などの名称で届きます。
長い名前に、いろいろな数字が細かく並んだ通知書。中身を見ないで放置、という人が多いのではないでしょうか。
これは、今年の住民税の計算結果を伝えてくれるもの。
お住まいの自治体から「今年の住民税はこう計算したんですけど、いいですよね」という確認なのです。
住民税は基本的には、年末調整や確定申告で出した内容をもとに計算されます。出し忘れた控除は、税金の計算に反映されません。
毎年、ふるさと納税・扶養控除・医療費控除などの見落としで、数万円、人によっては数十万円、余計な税金を払っている人がいます。
この通知書は、控除に漏れがないかなどを思い出す、年に一度の「答え合わせ表」です。
でもこの通知書、どこをどう見たらいいのか、わかりにくい。
とはいえ、ちょっとチェックすることで、税金が戻ってくる可能性があるなら、確認しておいた方がいいと思うのです。
そこで、今回はこの通知書をチェックする方法やその効果、間違っていた時のリカバリーの方法などについて、お伝えしていきたいと思います。
■30秒で分かる、いますぐ通知書を確認すべき人
以下のいずれかに当てはまった人は、通知書を手元に置いて、この先を読んでください。
・去年ふるさと納税をして、医療費控除などで確定申告もした
・大学生の子どもがいる、または子どもがアルバイトをしている
・「収入が103万円を超えたら扶養は無理」と思っている
・去年、親が亡くなった
・年金暮らしの親や、遺族年金を受け取る母に仕送りをしている
・住宅ローン控除を受けている
もちろん、これ以外にも控除等の漏れが気になる人は、しっかりチェックしてください。
■1.ふるさと納税
ワンストップ特例が「自動的に無効」になる人がいる
最初に確認したいのが、ふるさと納税です。
会社員のAさん(年収800万円)は前年、控除上限額の範囲内と考えて12万円のふるさと納税をしました。
寄付先は5自治体以内。ワンストップ特例も申請済み。「これで手続きは完了」と思っていました。
ところがその年は、家族の医療費の自己負担額が大きく、医療費控除を受けるために確定申告をしました。
ここに落とし穴があります。
ワンストップ特例は、確定申告をしない人のための仕組み。
医療費控除などで確定申告をすると、ワンストップ特例は自動的に無効になるのです。
ふるさと納税の控除を受けるためには、確定申告書に、改めてふるさと納税の寄附金控除を書く必要があります。
Aさんは「ワンストップを出してあるから大丈夫」と思い込み、確定申告書にそれを書かなかった。
結果、Aさんの住民税には、ふるさと納税が反映されなかった――このケースは、実務でもしばしば見かけます。
ふるさと納税は、控除上限額の範囲内なら実質負担は原則2000円です。
手続き漏れで控除が反映されなければ、その年にした寄付額のほぼ全額分を取り戻し損ねることになる。Aさんでいえば、12万円から2000円を引いた11万8000円分、税金が高くなってしまうということ。
■どこをチェックすればいいのか
確認方法は、通知書の「税額控除額」や「寄附金税額控除額」、摘要欄を見てください。
自治体によって表示は異なりますが、ふるさと納税をしたのに寄附金控除らしき記載がない、前年より住民税が思ったほど軽くなっていない、という場合は黄信号です。
確定申告をした人は、所得税の寄附金控除による軽減分と、住民税の寄附金税額控除を合わせて、寄付額から原則2000円を差し引いた程度の控除になっているかを確認してみてください。ただし、医療費控除や住宅ローン控除など他の控除もある場合、通知書だけでは判断しにくいこともあります。
分からない場合は、お住まいの自治体(市区町村)に確認してみてください。
■2.扶養控除
年収の壁は103万円→123万円に
もうひとつ気を付けたいのが、扶養控除です。
Bさんは50代の会社員。大学生の子どもがいます。
子どもは去年アルバイトを頑張り、収入は120万円でした。
Bさんは「103万円を超えたから、もう扶養には入れられない」と思い、年末調整で子どもを扶養に入れませんでした。
でも、実はこの大学生のお子さんは、Bさんの扶養控除の対象にできた可能性があるのです。
令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から、扶養に入れる年収の壁が103万円から123万円に引き上げられました。
給与収入だけなら123万円以下まで、扶養控除の対象だったのです。
19歳以上23歳未満の子は、要件を満たせば「特定扶養親族」として、控除額は所得税63万円、住民税45万円を受けることができます。所得税率20%の人なら、所得税だけで12万6000円。住民税の4万5000円と合わせて、約17万円も税負担が変わる可能性があるのです。
さらに、子の収入が123万円を超え188万円以下でも、新設された「特定親族特別控除」により、収入に応じて段階的な控除を受けられる可能性があります。「うちの子はバイトでかなり稼いでいるから」と、最初からあきらめるのはもったいないのです。
■「配偶者控除」も変わっている
なお、配偶者控除・配偶者特別控除も、令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から確認すべきラインが変わっています。配偶者の給与収入が123万円以下なら配偶者控除、123万円超201万6000円未満なら配偶者特別控除の対象になりうるので、「103万円を超えたから無理」と思い込まないこと。ただし、納税者本人の合計所得金額が1000万円(給与収入だけなら、おおむね1195万円)を超える場合は対象外です。
これ以外にも、前年と家族構成が変わっていないのに住民税が急に高くなっている、扶養人数が想定と違う――こういった場合もお住まいの自治体に確認をしてみましょう。
■3.老親の扶養控除
年金暮らしの親も、扶養に入れられる
「うちの親は年金をもらっているから、扶養は無理」「同居していないから入れられない」。
そう思い込んでいる人は少なくありません。でも、年金をもらっていても、同居していなくても、要件を満たせば親を税金上の扶養にできます。
扶養に入れることができるのは、「生計を一にする」親族。別居していても、生活費や療養費を継続的に送っていれば扶養に入れることはできます。税金の扶養には、仕送り額の決まりもありません。
そして、子の扶養と同じく、令和8年度の住民税(所得税は令和7年分)から、親を扶養に入れられるラインも上がりました。
65歳以上で年金以外に所得がない親なら、年金収入168万円以下(改正前は158万円以下)までが扶養の対象となります。(65歳未満の親なら、年金収入118万円以下)。
年金がある場合でも、遺族年金の場合は非課税なので、扶養の判定に使う合計所得金額に含めません。母の収入が遺族年金だけ、あるいは遺族年金のほかは少額の老齢年金だけ、という場合、生計を一にしていれば扶養控除の対象にすることが可能です。
■年の途中で亡くなったら要注意
さらに見落とされやすいのが、年の途中で親が亡くなった年です。
通常なら年金額が多くて扶養に入れられない親も、年の途中で亡くなれば、その年に受け取る年金は亡くなるまでの分だけになります。扶養に当たるかどうかは、亡くなった時点の状況で判断するので、その年に受け取った年金が少なく、所得が要件に収まれば、亡くなった親を扶養控除の対象にすることが可能なのです。
親の扶養控除額は小さくありません。
70歳以上の親なら老人扶養親族として、別居でも所得税48万円・住民税38万円、同居老親等に該当すれば所得税58万円・住民税45万円の控除になります。
所得税率20%の人なら、所得税と住民税を合わせて、別居の親で約13万4000円、同居なら約16万1000円の節税が可能というわけ。すでに納めた税金があれば、その分を取り戻せる。
親が亡くなった年は、相続や葬儀などの手続きに追われ、気持ちにも時間にも余裕がなく、扶養控除まで気が回らないという人も多いと思います。だからこそ、後からでも確認してほしいと思います。
最初から「年金があるから無理」「別居だから無理」と決めつけず、わからなければ自治体や税務署に聞いてみることをおすすめします。
■通知書で見るべき「4つの項目」
ここからは、通知書の見方です。
細かい数字をすべて理解する必要はありません。見るべきは、次の4カ所です。
ひとつ目は寄附金税額控除額。ふるさと納税が反映されているか。とくに医療費控除などで確定申告をした人は要注意です。
ふたつ目は扶養の人数と扶養控除額。子ども、配偶者、年金暮らしの親、遺族年金を受給している母など、対象になりうる家族がいる人は必ず見てください。
3つ目は所得控除の欄。医療費控除、生命保険料控除、iDeCoの掛金(小規模企業共済等掛金控除)などが入っているか。
4つ目は住宅ローン控除の反映。所得税から引ききれなかった分は、住民税からも一定額まで差し引かれます。
判断に迷ったら、前年の源泉徴収票や確定申告書の控えと見比べてみましょう。控除額が大きく違う、あるはずの控除が見当たらない、住民税が急に上がった――どれかに当てはまれば、要確認です。
■取り戻せる期間の目安は、5年以内
漏れや誤りを見つけたら、期限内であれば、取り戻せる可能性があります。
手続きは状況で分かれます。
年末調整しかしていない会社員が控除漏れに気づいたら、自分で「還付申告(確定申告)」を税務署にします。すでに確定申告をしている人が控除を入れ忘れていたら、「更正の請求」です。いずれも税務署で行い、所得税が直れば、その内容は自治体にも連携されて住民税にも反映されます。
住民税だけの問題に見える場合や、判断に迷う場合は、お住まいの自治体に相談してください。
取り戻せる期間の目安は、5年以内です。漏れや誤りを見つけたら、早めに手続きを確認しましょう。
■最強の「裏技」は、控除を落とさないこと
手取りを増やすというと、特別な節税テクニックを探したくなります。でも実際は、使える控除をきちんと使うことが、いちばん確実な節税対策です。
ふるさと納税を申告し忘れた。大学生の子を扶養に書き忘れた。亡くなった親や別居の親の扶養を、最初からあきらめていた。どれも知っているか、チェックしているかの違いで、数十万円単位の税金の違いになることもあります。
だから、6月に届く住民税決定通知書を、ただのお知らせとして放置しないで、しっかりチェックしていただきたい。
数分のチェックで、税金を取り戻せるならすごくオトクだと思いませんか。
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板倉 京(いたくら・みやこ)
税理士、マネージャーナリスト
保険会社・財産コンサルティング会社、税理士法人等で税理士業務に携わる。開業独立している女性税理士の組織、ウーマン・タックス代表。テレビ出演や全国での講演、書籍の執筆などの活動も多数。著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)など。
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(税理士、マネージャーナリスト 板倉 京)

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