夫婦関係のすれ違いは生涯我慢しないといけないのか。精神科医の和田秀樹さんは「平均寿命が延びた今、気の合わない相手と我慢して過ごすのはもったいない。
1回目は社会的な結婚と割り切り、老後に本当に気の合うパートナーを見つけて2回目の結婚をする。そのためにも、熟年離婚は積極的に考えるべき選択肢だ」という――。(第2回)
※本稿は、和田秀樹『60歳からの人間関係整理術』(河出新書)の一部を再編集したものです。
■熟年離婚は悪いことではない
他人同士の人間関係で最も近く、最も濃いのが夫婦関係です。
夫婦は基本、毎日顔を突き合わせる必要があります。夫が定年退職後、仕事もしないで毎日家にいるようになったり、子どもが働くようになって家を出ていったりすると、どんどん夫婦の関係性も変わります。夫婦で同じような方向を見て、同じように考えていればいいのですが、なかなかそうもいかないでしょう。
月に一度くらいは、二人で一緒に豪華な食事をしようと出かけても、そこで話が全く盛り上がらなかったり、夫婦二人で温泉旅行に出かけたとしても、全く楽しくないどころか、むしろ時間を浪費しているだけに感じるという話もあります。家にいても、一緒にいても話題がないとか、話が続かない、ペットを介して会話をするようになったとか、どうも居心地がよくない、一日中気が重いという状態に陥ることもあります。
それでもなんとかうまくやっていけるうちはいいのですが、どうにも我慢できない、いつもイライラして仕方ないということになれば、もう離れることを考えてもいいのではないでしょうか。熟年離婚は積極的に考えるべき選択肢のひとつです。
■「人生二毛作」という結婚の新発想
男女ともに平均寿命がこれほど延びた現代、昔と違って老後の生活が長く続くことになります。
妻や夫と多少気が合わなかったとしても、「どうせ先はもう長くないから我慢しよう」という消極的な姿勢でいると、実際は先は長いし、楽しめるはずのこれからの人生が、あまりにももったいないのです。
そのために私が提唱したいと考えているのは、結婚における「人生二毛作」という考え方です。
1回目の結婚は、子育てなどの社会的な結婚だったと割り切ってしまうのです。いろいろと我慢することもあったでしょう。そんな困難を乗り越えてある程度の年齢になったところで、その役割は終了です。
そして、次はいよいよその先の人生を楽しく過ごすための結婚を考えることにします。本当に気の合うパートナーを探してもう一度、結婚しようと考えるのは、なかなか理想的な展開ではありませんか。年齢的に介護をすることになる可能性は十分にあるので、「この人のオムツを替えられるか」というのも重要な要素になります。
■子どもが老後の再婚に反対する理由
今の60代、意外にも初婚・再婚を含めて、出会いを求めている人は結構います。70代、80代になるにつれてどんどん厳しくなると思いますので、生涯のパートナーを探すならやはり60代が狙い目でしょう。
ただし、ここで若い頃の結婚と違って、ネックになることがいくつかあります。
ひとつめは子どもの反対です。
財産がなければあまり揉め事はないのですが、ちょっと財産があると金目当てではないかと疑われがちです。親がだまされているのではないかと、子どもが純粋に心配する場合もあるでしょう。けれども、その話を持ち出す子ども自身が、じつは親の金目当てというケースもあります。
ここで親が結婚したら、自分が受け継ぐ財産が減ってしまう。それが理由で反対をしているだけで、親のこれからの人生が幸せになるかどうかなど全く考えていないのかもしれません。
■離婚に踏み切れない「お金の壁」
もうひとつは経済的な問題です。気分的には離婚したいけれど、金銭的な理由から踏み切れないということも多いでしょう。離婚して財産分与をすれば、年金も半分に減ってしまいます。住まいを別々にすれば住居費の負担も増えますし、手間もかかります。
持ち家の場合、その家にどちらかが住み続けるのか、それとも売却した金額を分けるのかなどという問題も起こります。
この先、二人で一緒に生活を続けていくなら、老後の資金もなんとかなるだろうと考えていたとしても、離婚するとどちらも共倒れになるかもしれないという不安もあります。
けれども、ここでちょっと思考の転換をしてみましょう。
確かに、離婚をしてひとりになれば、今より働いて稼ぐ必要が生まれるでしょう。けれども、老後は悠々自適というのも、もう昔の話です。仕事を続けることは、健康で長生きすることにもつながります。
■年をとるほど「気が合うか」を求める
もっとも、現役世代のように職場の人間関係にストレスを溜めながら働く必要はありません。適度に体を動かせば元気な状態を保てますし、働くことでほどよく頭を使ってクリアになります。
社会へ出ることは、新しい興味を見つけるチャンスにもなります。まだまだ体力があるから、ウーバーイーツの配達をしてみようかな、運転が好きだからタクシーの運転手をやってみようかななど、今までやったことのない分野の仕事に挑戦してみようと考えるのは、楽しいことではありませんか。この先も長く生きる上で、未来が開けるいい考えです。
女性が男性に対して持っている偏見のひとつに、「どうせ男は若い女性が好きなんでしょ」というものがあります。けれども、私くらいの年齢になるとどうやらそうでもなさそうです。
この4、5年のうちに、私の東大医学部の同級生が、3人再婚しました。その3人が皆、同年代の女性をパートナーに選んでいるのです。

1人目は、昔から結構モテてルックスもよく、人が羨むような出世もしていました。若い頃に2回結婚していて、奥さんは1回目も2回目もモデルのような美人で華やかな暮らしをしていました。けれども、どちらもわがままだったらしく2回離婚。そして最近、高校の同窓会に参加した時にバツイチの同級生と再会して、早速意気投合、3回目の結婚をするに至ったのです。
■1回目は属性、2回目は相性で選ぶ
2人目は1回目の奥さんが20歳年上で、2回目の奥さんは20歳年下でした。その相手がまたわがままで、近所の同年代の飲食店の女性に相談に乗ってもらっているうちに恋が芽生えてしまったそうです。それで2回目の離婚、3回目の結婚をしています。
3人目は秀才で、アメリカに渡って医者として成功、現地でアメリカ人の奥さんと結婚しました。けれどもその奥さんがまたわがままだったので、離婚してシングルファーザーとして子どもを育て上げ、日本に帰国。同級生の紹介で、同い年くらいの女性と結婚しました。
このように、年をとればとるほど、相手のルックスや年齢の若さよりも、気が合うかどうかを求めるようになるものでしょう。
1回目の結婚は、たいてい相手の属性を見ることが多いものです。
男なら相手のルックスにこだわるし、女性は相手の財力や肩書きを考えます。けれども、20代でそんなに人を見る目が肥えているはずもなく、気が合うか合わないかというところで失敗することも多い、と今だからこそわかるのです。
いずれにしても、60代からの人生はまだ20年、30年も続きます。しかも、これからは新しい自由な人生が始まるいいタイミングです。もし、配偶者のせいで、自分の新しい人生をリスタートすることができないと感じているのであれば、本当にその状態を続けていていいのか、ここでよく考えて、思い切って離婚を考えてみるのも大いにありです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。
高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)
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