生成AIの普及で注目される「電線2強」のフジクラと古河電工。フジクラは保守的な業績予想で失望売りで調整中ですが、上方修正期待と高い成長確度が魅力です。
今回のお題 人気AI株~電線2強~
昔からある銘柄ですが、この数年で大人気株に変貌した「電線株」のフジクラ(5803)と古河電気工業(5801)の2銘柄をピックアップしました。生成AIが普及する中、AIの膨大なデータ処理に大量の光ファイバーケーブルが必要に。まさに生成AI時代「つるはし」だったのが光ファイバーケーブルで、地味な銘柄が今や人気AI株に評価が一変しました。
ただ、あまりに株価が人気化し過ぎて、フジクラは3年程度で株価が50倍以上に。古河電気工業もこの1年の人気ぶりはフジクラをしのぐ勢いですが、両社とも5月に上場来高値を更新した後はスピード調整しています。高値圏で発生した押し目を狙うのはアリなのか? ここから買うならどっち? 今回はフジクラと古河電気工業の2社で比べてみます。
フジクラ(5803) 古河電気工業(5801)
両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?
銘柄A:フジクラ(5803)
ここがGOOD
ガイダンスは保守的過ぎ、「上方修正」に期待!フジクラは、AIデータセンターで使われる光ファイバーで生成AI需要の恩恵を最もダイレクトに受ける企業です。光ファイバー同士をつなぐ融着接続機では世界シェアトップの企業でもあります。絶大な支持を得ていた優等生フジクラですが、「フジクラ・ショック」なんて言葉で表現されるほど、今回の本決算はネガティブでした。
会社側が示した今期(2027年3月期)の当期純利益見通しは前期比1%減の1,560億円で、発表直前の市場予想平均(コンセンサス)の1,955億円を大幅に下回ったためです。
ただ、決して光ファイバーケーブルの需要が鈍化したわけではありません。むしろ好調で、急激な増産により、原材料の水素の調達が追い付かないほど。
フジクラは前期まで6年連続、期中に当期純利益予想の上方修正をしてきた会社。ガイダンスが出た後もコンセンサスは切り下がっていません。つまりアナリスト側も、「どうせ(フジクラのことだし)上方修正するんだろう」と確信を持っているのだと思われます。
見直し買いで狙うなら良い仕込み場?
株価があまりに下がったことに焦りもあったか、岡田社長も一部メディアのインタビューでガイダンス心配無用を強調していました。「下振れは絶対にない」「(第1四半期は好調推移のため)計画以上になると思う」「(光ファイバーについて)もう少し価格を上げさせてもらう」などとコメント。
次の第1四半期決算のタイミングで、やっぱり業績強いね!を示すことで見直し買いが入る展開も考えられます。
ガイダンスの失望、そしてその後に発表した新しい中期経営計画(2029年3月期の営業利益目標3,150億円、2026年3月期実績1,887億円比で67%増の水準)も市場の高い期待を下回ったということで第2弾急落の要因に。結果、株価は5月14日に付けた史上最高値(7,933円)の半値レベルまで調整しました。
アナリストの目標株価の平均は5,594円ですので、その水準まで現在の株価から見れば約30%のリバウンド余地があるとも言えます。
ここが心配
AI株では需給最悪な銘柄年初来高値(=上場来高値)7,933円からの下落率は、6月12日時点で46%。流動性の高い人気AI株でいえば、キオクシアホールディングス(285A)が年初来高値からの下落率2%、ソフトバンクグループ(9984)が同29%、村田製作所(6981)が同23%、古河電気工業が同33%…フジクラの46%はダントツで下がっています。
しかも高値を付けたのが5月14日ですので、わずか1カ月弱で…。
この間、借金して株を買う信用取引で買った投資家の「信用買い残」はどんどん積み上がっていきました。4月末時点の信用買い残は1,687万株で、信用倍率は6.6倍でした。それが、決算発表や新中計後の急落時にリバウンド狙いの逆張り買いがどんどん入り、5月末時点では3,048万株、信用倍率18.0倍に激増しています(6月5日時点では2,703万株、信用倍率17.1倍)。
ここから上がった場合でも、戻り待ちの売り圧力が相当強いことは想像できると思います。株価がここから上昇し、信用買い残が減少することが確認できれば、しこりがほぐれたと判断できますが時間はかかりそうです。
水素調達の不安がくすぶる
フジクラといえば、当期純利益が2025年3月期78%増益、2026年3月期72%増益と利益急拡大を果たしてきた超が付く増益モメンタム株。そのフジクラが今2027年3月期の期初計画が1%減益見通しとなったことで、「利益成長が終わったのか?」とザワついたのは分かると思います。
保守的なガイダンスとはいえ、会社側が理由としている水素の外部調達には不安がくすぶります。いくら需要があっても、水素の調達がうまくいかなければ、トップラインである売上の成長に影響します。
また、フジクラの場合は光ファイバーケーブルの新工場を米国に建設する計画もあって、投資に伴う償却負担の増加もあります。利益成長率が前期までに比べると物足りなく映るのは仕方ないところ。それだけに、今後の四半期決算などでコンセンサスを少しでも下振れると、「やっぱり弱いな」で過剰に売られるリスクはありそう。優等生がゆえの宿命です…。
フジクラ レーダーチャート
銘柄B:古河電気工業(5801)
ここがGOOD
電線株では今期のガイダンスがピカイチ決算発表でストップ安になったフジクラとは対照的に、古河電気工業は決算発表でストップ高に。今期(2027年3月期)の当期純利益は前期比13%増の820億円と、発表直前のアナリスト予想の平均(コンセンサス)614億円を大幅に上回りました。
フジクラがわずかながら減益見通し、電線株トリオの一角である住友電気工業(5802)が13%減益見通しなのと比較して強いガイダンスが光りました。
古河電気工業は、インターネットやケーブルテレビの通信インフラを支える光通信の総合メーカーでもあったため、テレコム分野の色が強い企業でした。その企業が、AIデータセンター需要を取り込んで収益構造が変化しました。事業ポートフォリオの見直し余地もあるため、利益率をコントロールしながら増益トレンドを維持させやすい企業といえそうです。
水冷モジュールの収益貢献楽しみ
データセンターの冷却に使う「水冷モジュール」、これが古河電気工業特有のカタリストです。データセンターの演算装置の放熱・冷却に使う製品で、製造工場の拡張を進めています。古河電気工業の計画では、水冷モジュールの売上高が今期は1,000億円以上、驚くのが2029年3月期に4,000億円になると見通している点。
光ファイバーケーブルの中長期での成長期待が高いのはフジクラと同じですが、同社は水冷モジュールの利益貢献が進む二馬力での成長が見込めます。
米系証券主催の投資家向けカンファレンスでも、水冷モジュールの受注確度が高く、投資の刈り取り前倒しへの自信を示していたようです。水冷モジュールの利益率は営業利益率で20%超が見込まれるようで、利益率の拡大にも貢献しそう。
アナリストの来期以降の業績コンセンサスには、水冷モジュールの拡販の前倒しは織り込まれておらず、これから織り込みを進める過程でコンセンサスは切り上がりそうです。
ここが心配
データセンター向け以外が足かせ古河電気工業は事業を多角化してきたことで、光ファイバーのほか、電力ケーブル、ワイヤーハーネス、銅加工製品なども展開しています。それら全てが利益率の高い事業というわけではないため、データセンター向け製品に特化する高利益率のフジクラと比べ、まだ利益率は低い状況です。
事業ポートフォリオの見直しを進めているほか、今後は水冷モジュールも利益率は高いとみられ、利益率は高まる方向ではあります。
ただし足元でいえば、自動車電装システムにも力を入れている古河電気工業の場合、EV市場の減速など自動車業界特有のリスクの影響も考えられます。また、フジクラのように、水素の調達懸念を期初計画に織り込んでいるわけではない点も気になるところ。
データセンター向け以外の事業での想定外のコスト増、水素調達の問題が発生し、「思ったほど業績モメンタムが強くない」とみなされれば、フジクラ同様のショック安が起きてもおかしくありません。
分割で買いやすくなることで…
本決算発表時に、コンセンサス上振れのガイダンスを示したことに加えて、6月30日を基準日とした株式10分割を発表。分割比率でも5分割で大幅と言われますが、「10分割」は珍しい部類の大幅分割です。そのインパクトも相まって、株価がストップ高反応になったようにも思われます。
株価が急角度で上昇したことで、古河電気工業は4万円台の超値がさ株となっています。今の株価の最低投資額は約420万円。これではNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の枠では買えません。ということで、買いやすくなることが流動性向上につながり、さらに株価上昇につながる…ということが理屈とされます。
ただし、これが裏目に出る可能性もある気がします。流動性向上といいますが、こんな値がさ株でも売買代金25日移動平均で2,730億円あり、これは東証プライム市場全体で5位です。これ以上流動性を高める必要ありますか? むしろ、値がさ株の方が高流動性の傾向もあります。
プライム市場で1位のキオクシアHDは株価8万円台ですし、アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、レーザーテック(6920)、ディスコ(6146)などAI株は超値がさ株が多く、それらが高い流動性を維持しています。
こうなると、分割後に流動性が低下する可能性の方を気にすべきかもしれません。また、株式分割後に個人が買いやすくなったとはいえ、株価的には値下がりし始める事例も多いのが実情。
比較対象のフジクラだって4月1日に6分割しましたが、それ以前でも防衛の三菱重工業(7011)やIHI (7013)、人気があったサンリオ(8136)など、分割後の株価下落イメージの方が強いような…(もちろん、だから古河電気工業も分割したら下がる、というわけではありませんが)。
古河電気工業 レーダーチャート
あなたなら、どっちを買う?
各社の見通しを見る限り、AIデータセンター向け拡販に対する自信が見えました。光ファイバーケーブルに関しては、値上げのニュースも出そうな雰囲気。
ただ、そんな時に内需株、ディフェンシブ株、高配当株などに資金がシフトするのかと思いきや…結局買われたのは「下がったAI株」でした。
フジクラは保守的に出した短期業績の上方修正に注目で、古河電気工業は水冷モジュール拡販も加わる中長期業績の成長性に注目といったところ。どちらも株主還元は強化する姿勢を打ち出していますので、利益の拡大と併せた増配にも期待されます。
10分割した後の古河電気工業、買いやすくなりますが、これで個人投資家からの人気度が高まりますかね? ここから買うなら、フジクラと古河電気工業、あなたならどっちですか?
銘柄投票にぜひ参加してみてください
【銘柄を投票】フジクラ vs 古河電工 人気AI株~電線2強~ 高値圏でも押し目買いするならどっちの銘柄?
各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレスなく参加できると考えられます。
(岡村 友哉)

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