■「過去問は9月以降」の理由
「過去問は9月以降に取り組む」
多くの塾ではこのように指導される。なぜなら、それ以前に取り組んでも、入試レベルの問題を解く力がついていないからだ。中学受験塾のカリキュラムは、4年生が基礎的な学習、5年生が発展的な学習といったように、学年が上がるにつれ難しくなっていく。また、中学受験に必要とされる学習範囲の勉強は、5年生までにすべて終わらせる。
では、6年生は何をするのかというと、1学期はこれまでに学んできたことを総復習する。さらに夏休みには、重要単元を中心により深く復習を行う。こうして振り返りを十分行った上で、今後は入試本番を意識したアウトプットの学習に変えていく。つまり、「過去問は9月以降に取り組む」は、まっとうな指導法といえる。
■国語は夏休み中から進めるのがいい
ただ、その通りに進めていくと、9月以降が大変になる。そこで、国語だけは夏休み中から少しずつ進めておくことを勧める。国語の授業というのは、物語文を扱ったら、次は説明文、その次に随筆文といったように、異なるタイプの文章を順番に回しているだけで、5年生の学習が終われば、いつから過去問を取り組んでも構わない。
むしろ、塾ではいわゆる名作といわれる古い文章を多く扱うのに対し、昨今の入試問題はその年、本屋大賞をとった本など、話題作が登場することが少なくない。つまり、塾のテキストと実際の入試問題には乖離があるということだ。であれば、今の時代の素材文に慣れておいた方がいいだろう。
また、実際の入試問題の方が、素材文が長いことを知っておいてほしい。特に近年は、難関校だけでなく、中堅校でも2000~4000字と長文化の傾向にある。この感覚をつかんでおかないと、本番で慌てることになるだろう。
■少なく見積もっても「44本分のテスト」
過去問は、第1志望校なら5年分、第2志望校なら3~5年分、第3志望校なら3年分解くのが鉄則だ。各年度、国語・算数・理科・社会の4教科あり、少なく見積もっても44本分のテストに取り組むことになる。
さらに、1月に実施される埼玉・千葉の学校の入試問題も解いておかなければならない。近年、前受験として2~3校を受験するケースが多い。すると、2校受験する場合でも、2校×3年分×4教科となり、24本分のテストが追加される。これを1月までに終わらせるとなると、6年後半はかなりハードになることが想像できるだろう。
過去問は解いて終わりではない。解いた後は間違い直しをしなければならないし、次にそのような問題が出たときに正解できるようになっていなければならない。過去問を解いていく中で、苦手単元が明確になったら、苦手の克服もしなければならない。ただ、それを深追いする時間はない。苦手単元の克服は11月までと割り切って、12月以降は、正答率の高い問題は確実に正解できるようにする、得意分野を得意なままにするといった得点力を高める勉強に切り替えていかなければならない。
■3年分解くべき学校、10年分解くべき学校
過去問を解く意義は、志望校の入試傾向に慣れることだ。ところが、近年は、知識量の多さや高度なテクニックが必要だった従来型の問題から、知識量はそこまで求めず、その代わりに思考力や記述力といったその場の対応力が求められる問題へと変わりつつある。つまり、過去の入試問題を解いたところで、あまり参考にならないというケースも出てきているのだ。特に中堅校から上位校にその傾向がある。そういう学校の場合、直近過去3年分の入試問題をしっかり解いておく必要がある。
一方、何十年も前から思考系の問題を出している麻布中や栄光中などの難関校については、その学校の過去問をたくさん解くことが対策になる。こうした学校は10年分解いてもいいだろう。
■第1志望に取り組むのは11月頃から
過去問は、難易度の低い学校から高い学校へと、少しずつレベルを上げていくのが、望ましい。具体的には、第3志望あたりの学校の過去問から取り組んでいく。そうすることで、基礎を再度固めていくことができるからだ。そして、第1志望校の過去問は、11月頃から始める。ただ、入試問題には相性というものがある。いくらその学校に憧れていても、入試問題がまったく合わない、レベルがまったく届かなければ、合格は難しい。
じっくり取り組むのは11月からでも、その学校の入試ではどんな問題が出るか大まかに把握しておくことが大事だ。第1志望校の過去問は、前受験が始まる1月までに5年分を一巡しておこう。そのためには、いつ何をするかを逆算して、計画的に進めていく必要がある。これまでの勉強は塾のカリキュラムに沿って進めていけばよかったが、ここからは志望校に合格するための戦略的な学習をしていかなければならない。
■9月以降の特別講座は「取捨選択」が重要
過去問対策は思いのほか時間がかかる。それが分かると、どうしても早く取りかかりたくなる。
夏休みは基本的に塾のカリキュラムに沿って勉強を進めるのが賢明だ。夏期講習は総復習という大きな意味がある。また、毎日塾に行くことで仲間と切磋琢磨し合える。この環境は大きい。ただ、塾によっては、「この夏が中学受験の天王山」と発破をかけてくるところもある。そういう煽りが苦手だったり、かえってプレッシャーに感じてしまったりする子は、講習を受講するか否かを慎重に検討したほうがいいだろう。
夏休みの講習は受講を勧めるが、9月以降の各塾の特別講座については、不要なものも多い。例えば、ただひたすら応用問題を解かせるだけの演習講座や、難関校対策と謳っているだけの日曜特訓は、受ける必要はない。
学校名を掲げた志望校別日曜特訓であれば、その学校だけの入試対策を行うが、学校名のつかない志望校特訓は、おおよその偏差値帯で集めているだけのケースが多く、いろいろな学校のつまみ食いになってしまう。
入試本番まであと約半年。時間は有限だ。ここからは何を優先し、何をしないと決めるか、取捨選択が大事になってくる。
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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。新著『受験で勝てる子の育て方』(日経BP)。
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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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