中国政府が4-6月期の主要経済統計を発表しました。実質GDP成長率は4.3%増で1-3月期の5.0%増から鈍化し、3年半ぶりの低水準となりました。

生産、消費、投資も芳しくない結果となっています。今後、中国経済はどこへ向かうのか。三つの視点から解説していきます。


4-6月期の中国実質GDP成長率が減速、中東混迷と内需低迷の...の画像はこちら >>

中国、4-6月期実質GDPは予想下回る4.3%増

 中国国家統計局は7月15日、4-6月期の実質国内総生産(GDP)を前年同期比4.3%増と発表しました。以下の図表で示すように、1-3月期は5.0%増でしたが、そこから伸び率が顕著に鈍化している様子がうかがえます。


25年4~6月 25年7~9月 25年10~12月 26年1~3月 26年4~6月 5.2% 4.8% 4.5% 5.0% 4.3% 中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数値は前年(同期)比

 中国政府は2026年の経済成長率目標を3年ぶりに下方修正し、「4.5~5.0%」と設定。私自身は、4-6月期の成長率が1-3月期から鈍化するのは必至であるものの、年間目標の範囲内に収まるかどうかに注目していました。


 結果は「範囲外」の4.3%増ということで、予想を下回った形です。


 国営新華社通信はこの発表を受けて、ヘッドラインで「2026年上半期国内総生産前年同期比4.7%増」という数値を大々的に打ち出しました。第2四半期の4.3%ではなく、年間目標の範囲内にある4.7%を宣伝していました。


 そのうえで、新華社は「中国経済は圧力に耐えながら、合理的区域内で運行している」と説明しています。ここで指摘されている「圧力に耐えながら」という文言は、景気をめぐる各種動向は決して楽観視できるものではない、という中国当局の感触と見解を露呈していると見るべきでしょう。


不調の内需と好調の外需?不動産市況は一層悪化

 同日、他の主要経済統計も発表されたので、以下、上半期の数値を1~3月、2025年のそれと比較しながら検証していきましょう。


 まず、工業生産は1-6月期、2025年、1-3月期に比べて、伸び率が鈍化しているのが見て取れます。小売売上も昨年、1-3月期に比べて低迷しています。個人消費を中心に内需不足を露呈していると理解できます。


  1~6月 1~3月 2025年 工業生産 5.4% 6.1% 5.9% 小売売上 1.3% 2.4% 3.7% 固定資産投資 ▲5.7% 1.7% ▲3.8% 不動産開発投資 ▲18.0% ▲11.2% ▲17.2% 不動産を除いた固定資産投資 ▲2.7% 4.8% ▲0.5% 貿易(輸出/輸入) 16.9%
(13.4%/22.1%) 15%
(11.9%/19.6%) 3.8%
(6.1%/0.5%) 失業率(調査ベース、農村部除く) 5.2% 5.3% 5.2% 若年層失業率(在校生除く) 16.2%(1~5月) 16.4% 16.7% 消費者物価指数(CPI) 1.0% 0.9% 横ばい 生産者物価指数(PPI) 1.5% ▲0.6% ▲2.6% ▲はマイナス
中国国家統計局の発表を基に筆者作成。数値は前年同期(月)比

 最もあからさまに低迷しているのが投資です。固定資産投資は昨年マイナス成長を記録、その後、1-3月期はプラスに持ち直しましたが、1-6月期では5.7%減となりました。供給過剰と需要不足のダブルパンチが作用し、国内の投資熱にブレーキがかかっている現状が見て取れます。


 とりわけ、不動産開発投資は18.0%減とさらに鈍化。不動産不況が中国経済の足かせになっているという不都合な真実が、ここに来て再び顕在化してきたと見ています。


 国内の構造的矛盾に加えて、いまだ不透明感に包まれるイラン情勢を背景に、資源や素材の価格が高騰していることが、経済成長にとっての下振れ圧力となっているのでしょう。


 そんな中、貿易がなんとか持ちこたえているのは数少ないグッドニュースといえるかもしれません。1~6月は前年同期比16.9%(輸出13.4%/輸入22.1%)で、1~3月の15%(輸出11.9%/輸入19.6%)と比べて伸び率は上昇しています。

2025年と比べても高い数値で推移しています。直近の6月は前年同月比24.2%増(輸出20.8%/輸入29.4%)とさらに増加しているのが現状です。


 一時、貿易戦争が激化し互いの追加関税率が3桁まで上昇した米国との貿易が、トランプ米大統領の5月訪中や首脳会談を経て、回復傾向が続いている点も重要でしょう。6月、中国の米国向けは、輸出13.9%増、輸入25.9%増となっています。(注:日本向けは輸出6.9%増、輸入33.9%増)。


 輸出の品目別で見ると、集積回路が96.1%増となっており、昨今の「AIバブル」の需要急増の恩恵も、中国経済も一定程度享受していることが見受けられます。


 中国当局者の経済情勢に対する現状認識を見ておきましょう。


 7月15日、国家統計局は最新の統計を紹介した上でコメントを発表しました。以下、要点を引用します。


  • 全体として、上半期の国民経済は適正な範囲内で推移し、新たな質の生産力が育成・拡大され、質の高い発展は新たな段階へと進み、よりすぐれたものへと向かっている
  • 一方、外部の不安定・不確実な要因が多く、国内では供給過剰と需要低迷という矛盾が顕著であり、経済の好転に向けた基盤をさらに強固にする必要がある
  • 次の段階では、内需の持続的な拡大と供給の最適化を推進し…新規需要の質を高め、新たな成長動力の育成・拡大を加速させ、雇用・企業・市場・期待値の安定化に一層力を入れ、経済の質的な向上と量的かつ合理的な成長の実現を推進していく

 この三つの段落で重要なのは2番目で、「外部の不安定・不確実な要因」はイラン情勢や「トランプ・ファクター」がもたらす不確実性やリスクを指しており、そこに国内の構造的矛盾がダブルパンチで襲いかかっているということでしょう。


 また、三番目の、「雇用・企業・市場・期待値の安定化」に力を入れるというのは、それらが現状不安定だからということです。中国当局の景気の現在地と先行きへの危機感を感じさせる文言です。


今後の見通し

 今回発表された統計結果を基に中国経済の現状を見てきましたが、ここからは、今後の見通しについて、三つの視点から考えていきましょう。


 一つ目が、イラン情勢の影響です。


 少なくとも、米国とイランが交渉を通じて停戦、その先にある中東の安定化につながるような状況ではありません。このイラン情勢がもたらす、資源高といった事象が中国の景気動向にどう影響していくかに注目すべきだと思います。


 二つ目が、トランプ大統領率いる米国との関係です。前述した「好調な外需」において、米国との関係が首脳外交を通じて相対的に安定している経緯が強く作用しているのは論を待ちません。今後、9月下旬に習近平国家主席が訪米することで調整がなされていますが、夏から秋にかけて、米中関係がどう推移するのかも、中国経済に影響を与えずにはおかないでしょう。


 三つ目が、中国政府が景気刺激策をどこまで出していくかです。中国政府は大きな方針として、「従来よりも積極的な財政政策」と「適度に緩和的な金融政策」を打ち出しています。今回、4.3%増という四半期ベースで3年半ぶりに低迷した数値を前に、景気を促すための政策ツールを動かしていくかどうか。注目していきたいと思います。


(加藤 嘉一)

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