ダイエット中の食欲を上手にコントロールする方法はあるか。明治大学教授の堀田秀吾さんと医師の木島豪さんの共著『科学的に実証された 超ダイエット習慣大全』(Gakken)より、一部を紹介する――。

■ゼロカロリー、ノンシュガーは健康にいい?
「ゼロカロリー」「ノンシュガー」。カロリーは低いほうがよくて、砂糖は不使用に越したことはないからと、ダイエットでもこの言葉に惹かれて飲み物やお菓子を選んでいる方に、ぜひ知ってほしいことがあります。
それは、人工甘味料を使ったこれらの表示が必ずしも、「代謝のうえでも安全」を意味しないかもしれないという事実です。
フライブルク大学のトーウスらは、砂糖代替甘味料の健康への影響を検討した56報を統合したシステマティックレビューを行いました。
結論として、甘味料の摂取が最終的に健康を促進するという確かなエビデンスは示せなかったとし、長期的な安全性にも不確実性が残ると指摘しています。
体重管理については、砂糖代替甘味料による置き換え効果を支える証拠は「中等度」にとどまり、効果があると言い切れる状況ではありませんでした。
■甘味料が「胃腸の不良」を引き起こすことも
さらにワシントン大学セントルイス校のジャックシュタットらの研究が、別の角度から疑問を投げかけます。
シュガーフリー菓子やガムに広く使われる糖アルコール系甘味料「ソルビトール」の代謝経路を調べたところ、腸内細菌がソルビトールをしっかり分解できる状態なら問題は起きにくいものの、腸内細菌が少なかったり、ソルビトールの摂取量が細菌の処理能力を超えてしまったりすると、ソルビトールは肝臓にまで届いてしまい、そこでフルクトース(果糖)の誘導体に変換されることが示されました。
フルクトースは摂りすぎると脂肪肝や代謝異常を引き起こすことで知られています。そのフルクトースと同じような代謝経路を、ソルビトールが活性化する可能性が見えてきた、ということです。
ただしこの研究は、ゼブラフィッシュを使った動物実験です。ヒトでも同じことが起きるのか、どのくらいの量から問題になるのかは、まだ研究の途中にあります。

「ソルビトールは危険」と断定できる段階ではなく、「砂糖ゼロ=無条件に安全という前提を疑う理由が出てきた」というのが、今のところの正確な理解です。
胃腸の不調(下痢・お腹の張り)が出やすい方は、糖アルコール系甘味料の摂りすぎを見直す理由がすでにあります。「カロリーゼロだから」という理由で大量に口にしてしまう習慣も、一度立ち止まってみる価値があるでしょう。
今日の1アクション

「ゼロカロリー」や「ノンシュガー」を毎日食べたり飲んだりしている方は、「1日1つまで」など自分なりの上限を設けてみてください。禁止する必要はなく、上限を意識するだけで十分です。
■ダイエット中の「食べたい」という欲求
「あのお菓子が食べたくて仕方ない」。そんな「食べたい!」という頭の中のささやきが、たった3分のゲームで静まるかもしれません。これは根性論でも気合いでもなく、脳の仕組みを利用した合理的なアプローチです。
夜中に冷蔵庫を開けてしまう。コンビニの前を通ったら、スイーツが頭から離れなくなる。そうした「食べたい!」という頭の中のささやきは、いったいどこから来るのでしょうか。
意志力が弱いからではありません。
あれは脳の中で「映像」が再生されているせいなのです。
プリマス大学のスコルカ=ブラウンらは、食べ物・アルコール・タバコへの強い欲求を感じている31名の参加者を対象に、1週間にわたって衝動とテトリスプレイの関係を追う実地研究を行いました。
テトリスとはご存じの方も多いでしょうが、ブロックを回転させて落とし、横一列にそろったら崩れるというブロック崩しのゲームです。
■テトリスがダイエット中の間食を防ぐワケ
参加者をランダムにテトリスグループと記録のみのグループに分けたところ、テトリスを3分間プレイしたグループでは、欲求の強さが平均70%から56%へと13.9ポイント下がりました。
この効果は食べ物への欲求だけでなく、アルコール・タバコ・カフェインへの欲求にも一貫して確認されています。
この背景にある考え方が「精緻化侵入理論」。食べたいという衝動は、頭の中に「食べているときの感覚的なイメージ」が浮かぶことで強化されていきます。
チョコレートの甘い香り、とろける食感、口に入れたときの満足感。そうした映像が脳内で繰り返されるほど、衝動はどんどん膨らんでいくのです。
ここでテトリスが登場します。テトリスのようなゲームは「視空間ワーキングメモリ」と呼ばれる脳の領域を使います。これは頭の中で形や空間を操作するための作業スペースで、広さには限りがあります。

ブロックを回転させたり積み上げる場所を判断したりするだけで、この作業台はあっという間にいっぱいになります。すると、食べ物の映像を再生する余裕がなくなり、脳の作業メモリを埋めて食欲のイメージを追い出す仕組み(テトリス法)が働くのです。
衝動を強化する「頭の中の映像」そのものが作られにくくなる、ということでもあります。食べたい衝動に「負けた」のではなく、「脳の構造のうえで、映像を止めるものがなかっただけ」。
対策は意志力を鍛えるのではなく、脳の作業台をテトリスなど別のもので埋めてしまえばいいのです。
今日の1アクション

食べたい衝動が来たら、テトリス系のアプリを3分間プレイしてみましょう。アプリがホーム画面にあれば、衝動が来たらすぐ使えます。
■食べすぎた翌日「罪悪感」の対処法
忘年会、誕生日ケーキ、旅行先での食事。「食べすぎた」と感じる日は、誰にでも必ずやってきます。
その翌朝、罪悪感から「今日は何も食べない」「今週は食事量をぎりぎりまで減らす」と決意したことはありませんか? 実はその対処法こそが、ダイエットを三日坊主にしている一因かもしれません。
ニューキャッスル大学のクワスニカらは、行動変化の「維持」に関する117の行動理論を体系的に精査し、統合したシステマティックレビューを発表しました。
長期的な習慣維持に欠かせない要素の1つとして浮かび上がったのが、「自己調整とコーピング(対処)の力」です。
特に、一時的なつまずきが起きたときに、それを柔軟に受け流して元の軌道に戻れるかどうかが、長期的な成功を左右すると論じています。
言い換えれば、「食べすぎた」という出来事そのものより、その後の対処の仕方こそが、ダイエットの行方を決めるということです。
■自分を責めず「平常運転」に戻すこと
食べすぎた翌日に極端な食事制限を課すと、強い空腹と我慢が続き、2日後・3日後に「もういい!」という反動が押し寄せやすくなります。これは意志力の問題ではなく、制限と反動が繰り返されるパターンに入り込んでしまうことが、本当の問題なのです。
行動科学の世界でも、過度な制限は持続可能な行動変化を邪魔する要因とされています。クワスニカらのレビューが示す「コーピングの力」とは、完璧な自制心のことではありません。
崩れたことをきちんと受け入れ、自分を責めずに、翌日からまた普段通りに戻す。その繰り返しこそが、長期間にわたって習慣を保ってきた人たちに共通する行動パターンなのです。
翌日を「通常の食習慣に戻す日」と位置づけておくと、心理的な負担がほとんどかかりません。昨日の出来事をなかったことにしようと力む必要はなく、ただ「いつも通り」に戻すだけで十分です。
この身軽さこそが、長期的に習慣を崩さずに続けるための、最も現実的な戦略になります。なお、極端な断食や下剤の使用は危険ですので、絶対に避けてください。
翌日に強い胃もたれや体調不良がある場合は、食事の調整より体調の回復を優先することが先決です。
今日の1アクション

「食べすぎた翌日はどう過ごすか」を、今のうちに1つ決めておいてください。朝は通常量に果物を1つ添える、昼は野菜多めの定食にする、その程度で十分です。「特別なことは何もしない」という計画をあらかじめ持っておくことが、崩れたときに一番早く元に戻れる方法になります。

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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)

明治大学教授

シカゴ大学大学院言語学部博士課程修了、オズグッドホール・ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得退学。心理言語学、法言語学、コミュニケーション論を専門とし、学術的な知見を「今日から使える知恵」に翻訳することをライフワークとし、著書は70冊を超える。56万部を突破した『科学的に証明された「すごい習慣」大百科』(SBクリエイティブ)のほか、『科学的に元気になる方法集めました』『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』など、科学の力で日常を変えるシリーズは累計137万部を突破。NHKラジオ「ラジオ深夜便」レギュラー・パーソナリティをはじめ、ラジオ・テレビ・新聞・雑誌・WEBなど多彩なメディアで、専門家としての視点を発信中。

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木島 豪(きじま・ごう)

東京メディカルクリニック平和台駅前院 院長

東京医科大学卒業後、東京医科大学病院循環器内科へ入局。循環器専門医と内科認定医を取得後、平成20年より現職。老化防止と体質改善を行う治療法に着目し、内科、皮膚科などの一般診療を主に行いつつ、予防医療を目的としたアンチエイジング内科を併設。

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(明治大学教授 堀田 秀吾、東京メディカルクリニック平和台駅前院 院長 木島 豪)
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