年齢を重ねても若々しい人は、どこが違うのか。スタイリストの森井良行さんは「若く見える人の本質は、肌のシワやハリの話ではなく、行動や思考の柔軟性にある。
それは服装に如実にあらわれる」という――。
■「平服でお越しください」本当の意味
「同窓会で、何を着ようか?」
クライアントからのよくある相談です。招待状には「平服でお越しください」と案内があるものの、むしろ着るものに迷うといいます。結婚式の二次会などでも見かける表現ですが、判断基準が示されていないため、受け取り方はさまざま。
結論からいえば、平服とは「その場で浮かない格好」です。普段着でなく、かといって略礼装でもない。カジュアルではよそ行きに見えませんし、スーツでは仕事の延長に見えてしまう。その中間にあるのが、ジャケットです。つまり同窓会における男性の平服とは、「仕事っぽく見えないジャケット姿」だと、私は捉えています。
では一体、ビジネスジャケットとは何が違うのか。この差こそ、同窓会で10歳老けて見える人と、若く見える人の違いなのです。
同窓会のジャケット選びで失敗する人は、「襟つきシャツを合わせる」という固定観念をお持ちです。
たしかにビジネスシーンでは、ネクタイの有無にかかわらず、スーツジャケットにワイシャツという組み合わせが、清潔感のある王道スタイルでした。
■チグハグに見える人の「盲点」
ところが同窓会や結婚式の二次会といった場面では、清潔感に加え、会場に合った「品や華やかさ」も求められます。たとえば夕方からスタートする会ならば、夜のムードに合わせたダークカラーのシャツ姿には非日常感があります。またワイシャツの代わりに「襟がないクルーネックのインナー」を合わせれば、スタートアップ経営者のように、アクティブな印象に映るでしょう。
つまり同窓会で若く見える着こなしには、清潔感のみならず華やかさがあります。これは「ジャケットなのに、仕事っぽく見えないコツ」とも言えます。
以上を踏まえて、同窓会ファッションで失敗する人の盲点と、具体的な解決策をお伝えします。
ジャケットに華やかさを加えるとき、小物をイメージする方が多いかもしれません。スカーフやポケットチーフ、ラペルピンなど普段つけない特別な小物を加えれば、たしかに華やかですが、キザに見えるリスクも拭えません。
これが同窓会ファッションで、どこかチグハグに見える人の盲点です。そして、一般的に小物が難しいと言われる理由は、「引き算の発想が求められる」ことが関係しています。
■同窓会で失敗しない「2つのコツ」
コーディネートで全身バランスを整えるとき、「キメ(決める)とヌケ(抜く)」という2つの方向性が欠かせません。
きちんと感を強める要素がキメ。一方ヌケとは、本来あるべきものをあえて引くことで、キザにならないよう「バランスを整える」アプローチです。
つまり小物を足すのであれば、どこかを引かなければ、全身がキメだらけになってしまうのです。頭では理解できても実際のコツはイメージしづらいと思いますので、同窓会ファッションで失敗しない「2つのコツ」を紹介します。
コツ①:シャツの「襟」を間引く
きちんと感があるシャツの襟は、いわゆるキメの代表格です。そこに小物を足してしまうと、「華やかながらも、キザに見える」リスクがあります。そこでスカーフやポケットチーフ、またラペルピンなど、小物を挿すときは、襟がないクルーネックインナーが簡単です。
シャツの代わりに襟がないクルーネックのインナーを合わせることで、抜け感が出ます。具体的な選び方は後述しますが、シャツの襟を間引くコーディネートは、華やかさを演出するうえでの土台になるのです。
コツ②:ダークカラーシャツは「ネクタイ」を間引く
ビジネスシーンでは見かけない黒や紺のダークカラーシャツは、一枚で大人っぽい印象に仕上がります。むしろシャツ単体で色気が漂うため、同窓会でネクタイが加わると、キメすぎに見えてしまう。
そこでダークカラーシャツを選ぶならば、ノーネクタイで抜け感を意識してください。

■試着するとき「絶対に持参すべきもの」
では、具体的にどのようなアイテムを選べばよいのでしょうか。まずはコツ①で触れた「クルーネックインナー」の選び方について解説します。
本来クルーネックとは、丸首のデザイン全般を表す言葉です。つまり一般的なTシャツやセーターも含まれますが、ここで注意したいのが「生地感」です。いくらクルーネックでも、カジュアルなTシャツ生地はジャケットに合いません。というのもジャケットとTシャツは、あまりにルーツがかけ離れているからです。
テーラードと呼ばれる仕立て服をルーツとするジャケットは、「よそ行き用」という位置づけ。ですがTシャツは、アンダーウエアからきています。ルーツの格が違うため、合わせた瞬間に、Tシャツがジャケットの「ドレス感に負けてしまう」のです。
したがって、単なる「Tシャツ」という名前で判断するのではなく、どのような生地が使われているかを見極めることが大切です。たとえば同じようなTシャツ型であったとしても、ニット地で編まれたものであれば、ジャケットの隣に並べても負けません。
■「ジャケットに合うインナー」2選
そこでワイシャツ以外の「ジャケットに合うインナー」を2つ紹介します。

ユニクロのウォッシャブルミラノリブニットTシャツ:2990円(税込)
ハリ感あるニット地のTシャツです。少しオーバーサイズでつくられているため、ジャケットに合わせるならば、普段よりワンサイズ下げることがおすすめ。
ミラノリブと呼ばれる編地は高密度でしっかり感があるため、サイズさえ間違えなければ、きちんとした印象に映ります。まだ暑さが残る時期だからこそ、半袖が使いやすいと考え、ピックアップしました。
②GOOVIモックネックニット:1万4190円(税込)
紳士服量販最大手の青山商事が展開するスーツスクエアには、さまざまなラインナップがあります。なかでもGOOVI(グービ)は、日本人ファッションディレクター監修によるもの。今回紹介したモックネックニットは、和紙をベースにしたハリ感ある生地で、型崩れしにくいという特徴があります。
ちなみにモックネックとは、クルーネックより「数センチ程度、首が高くつくられた」デザインです。年齢とともに首のシワが気になる方にもおすすめです。
上記2点を試着するときは、必ず手持ちのジャケットを持参して、相性を確認してください。合わせることでのみ、全身バランスが明らかになるからです。
■胸元の「1センチ」が10歳を分ける
ここまでの引き算ができていれば、小物をひとつ足しても、キザにはなりません。
そこで、おすすめしたいのが、ポケットチーフです。
もしかすると「結婚式でもないのにキザじゃないかな」と不安に思われる方もいるかもしれません。ですが胸元に挿した白いリネンのポケットチーフは、あなたの顔まわりを明るく照らしてくれます。
というのも胸元の白は、色というより、もはや「光」です。フォトグラファーがロケで撮影するとき、モデルの顔のすぐ下に白い板を置きます。これをレフ板といい、光を顔に反射させることで、顔色を明るく見せる効果があるのです。写真を撮られる場面が多い同窓会において、これほど費用対効果の高い工夫はないでしょう。
たとえばスーツスクエアの「ポケットチーフ/リネン/無地」(税込3190円)は、リネン100%ならではの軽やかな透け感があり、気取りすぎない仕上がりです。シーンを問わず使えます。
胸元に挿すときは、ハンカチのようにコンパクトに折りたたみ、ポケットから1センチ程度チラ見せする、TVフォールド(スクエア)と呼ばれるやり方でOKです。またパフスタイルやスリーピークスといった凝った挿し方もありますが、こちらは結婚式などのドレス感に最適なもの。同窓会では不要です。

■同窓会で若く見える人の「本質」
ここまで華やかさを加える工夫や、その過程でヌケ感を出すべく、なかでも襟がないジャケットスタイルを推してきました。私は「襟がないほうが、若く見える」と考えていますが、その理由は「時代性」にあります。
今の50代・60代の方が社会に出たころ、休日ジャケットの着こなしと言えば、ビジネス同様「襟つきシャツ」一択でした。ところがこの十数年で、着こなしの幅は大きく広がり、組み合わせの常識そのものが、書き換えられたのです。
ジャケットの下に「何を着ているか」は、服装の常識を「いつ更新したか」を示します。ジャケットに白いワイシャツという組み合わせでは、20~30年前の常識のまま止まっているかのように、視覚的に伝えてしまうリスクがあるのです。一方でクルーネックならば、直近10年の新常識を柔軟に取り入れている姿勢が伝わります。
つまり同世代のなかで「若く見える人」の本質は、肌のシワやハリの話ではなく、「行動や思考が柔軟である」ことが数秒で伝わる人なのではないでしょうか。
■近況は「服装」を見ればわかる
ただし誤解のないよう付け加えると、これは「流行を追う」という意味ではありません。襟がなければ何でもいいという解像度で選べば、失敗します。だからこそ先ほどお伝えしたように、インナーは生地を見て選ぶ必要があるのです。
同窓会とは、久しぶりに会う相手に近況を報告する場です。しかし現実には、言葉を交わす前に、服がすでに近況を語ってしまいます。
クローゼットの奥から出したジャケット、白いワイシャツ、そして空のままの胸ポケット。これらはビジネスシーンにおいては正解ですが、同窓会では「仕事っぽいジャケットスタイル」になってしまいます。
逆に言えば、若く見える人が特別なことをしているわけではありません。ジャケットの下を襟がないクルーネックに替える。胸元に1センチの白を挿す。やっているのは、自分の世代の常識を一度脇に置くことだけ。
この秋の同窓会。ジャケットを軸とした平服の、その中身を少しだけ更新してみてください。10年ぶりに会う同級生の第一声が、変わるはずです。

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森井 良行(もりい・よしゆき)

スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事

1979年千葉県生まれ。日本大学卒業後、一般企業を経て2007年に独立。これまでのべ5500人を超えるビジネスパーソンの買い物に同行し、スタイリングを手がける。感性で語られがちなファッションを独自のロジックで言語化し、戦略的にビジネスパーソンの魅力を引き出す着こなしのメソッドに定評がある。MENSA会員。著書に『38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)、『男の服選びがわかる本』(池田書店)などがある。

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(スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事 森井 良行)
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