Daigasグループは2026年3月期決算において、純利益が過去最高となり、3年連続で最高益を更新しました。この好調な業績を牽引したのは海外エネルギー事業であり、同決算では国内エネルギー事業を上回るセグメント利益を計上しました。


こうした中、海外エネルギー事業の大きな柱となったのが、米国子会社「サビン・エナジー社(以下、サビン社)」が取り組むシェールガス事業(※1)です。同社の2025年のガス生産量は、Daigasグループの日本国内における都市ガス年間販売量の約7割に相当する規模にまで拡大しています。

しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。かつて多額の損失を計上しながらも、現場の社員たちが諦めることなく挑戦を続け、地道な対話と戦略的投資によって道を切り拓いてきた軌跡を振り返ります。

※1:地下深くの頁岩(シェール)層から天然ガスを生産する事業

失敗を糧に、逆風を越えて利益の柱へ――日本企業初の米国シェールガス会社買収を実現したDaigasグループの挑戦の軌跡


米国におけるシェールガス開発現場の様子

リグという掘削機で地下3,000~3,500m程度まで掘削し、その後水平方向に掘削

1. 初めてのシェールガス事業への参入と、失敗から得た教訓

Daigasグループのシェールガス事業は、2012年の米国テキサス州での開発プロジェクトへの参画から始まりました。当時、水平掘削や水圧破砕技術の進展により、米国の天然ガス生産が急増した「シェール革命」が世界的に注目を集める中、当社もこの絶好の商機を逃すまいと、約200億円を投じて米国シェールガス事業への第一歩を踏み出しました。

しかし、開発を進めていくと、対象エリアの地層が想定以上に複雑であり、当時の技術では採算に見合う量のガスを掘り出すことが困難であると判明。ガス・原油の売上高は当初想定の14%程度にとどまり、翌2013年には290億円の特別損失を計上するに至りました。

この厳しい結果の背景には、周辺での開発・生産実績が十分にない「ピアソール」と呼ばれる未知の地層において、不確実性が残る中でリスクを取って挑戦してしまったことが原因でした。この手痛い経験から、十分な開発・生産実績を有する優良なエリアを選定し、その価値やリスクを客観的なデータに基づいて見極めることの重要性を、身をもって学びました。

現場の担当者たちは、この教訓を次の案件評価に活かそうとします。とはいえ、社内には事業継続を疑問視する声も上がり、再挑戦への道のりには大きな逆風がありました。「これほどの巨額損失を出した以上、二度目の失敗は絶対に許されない」という厳しい空気が社内を覆うなか、彼らは失敗の原因を徹底的に分析し、集めた掘削データや中長期的な市場見通しをもとにシェールガスの将来性を訴え続け、灯を絶やすことなく次の機会を探り続けていきました。


失敗を糧に、逆風を越えて利益の柱へ――日本企業初の米国シェールガス会社買収を実現したDaigasグループの挑戦の軌跡


米国でシェールガス事業に取り組み、

後にサビン社の買収にも関与した大阪ガス 資源海外事業部 山崎



 「ピアソールの経験は、その後の投資判断の基準を大きく変える出来事でした。社内では厳しい声が上がる中でも、経営陣から『これで止めてしまっては何にもならない。この経験と学びを活かすように』との言葉を受けて、『なぜ失敗したのか』『見極めるべきポイントは何なのか』を問い続け、失敗から得た学びを次の案件評価に活かすための知見を蓄積していきました。」

2. 100社におよぶ対話の先に、サビン社との信頼が生んだ日本企業初の一歩

新たなビジネスチャンスを掴むためには、市場の最新動向を調査し、業界イベントに参加して業界内のネットワークを築くことが重要でした。面談の機会を求め、米国各地の約100社を精力的に駆け回る日々。その地道な活動の中で、テキサス州東部に資産を保有するシェールガス開発会社の一部資産売却の情報が舞い込んできました。2017年8月、サビン社との出会いです。同社は周辺エリアで確かな生産実績を有しており、長期にわたる安定した生産が見込まれました。魅力的な案件に、当社は交渉のテーブルに着きました。

しかし、米国非上場企業との間には企業文化の違いなどもあり、交渉は当初思うように進みませんでした。それでも、小さな約束事も必ず守り、相手の考え方を尊重する姿勢で、粘り強く愚直に対話を続けていきました。そうした日々の積み重ねの中で徐々に信頼関係が生まれ、2018年6月、ついにサビン社が保有する一部鉱区権益(ガスを開発・生産する権利)のうち、35%を取得することに合意しました。

その後、同年末には早くもサビン社より、同社の株主が残りの全資産の売却を企図している旨の知らせが入ります。社内には、過去の特別損失の経験から慎重な意見もありましたが、これまでに培ってきた目利きと第三者評価も活用しながら、本案件の優良性を訴え続けました。


買収を判断するにあたり大きな後押しとなったのが、現地プロジェクトに参画し、サビン社と共に働いてきた出向者たちの声でした。1年間の協業を通じて経営陣のマネジメント手腕や高いオペレーター能力を確認してきており、「この優秀なメンバーとなら、将来も一緒にやっていける」という強い手応えを掴んでいました。最後は、参画済みの鉱区での生産量が参画前の期待値を上回っていたことが決定打となり、入札を決定しました。

交渉においては、1年前からサビン社と共にプロジェクトに参画して築き上げてきた信頼関係に加え、経営陣も含めた全従業員の雇用維持を条件として提案したことが強みとなりました。そして2019年7月、当社グループはサビン社の買収契約を締結。米国シェールガス開発企業の買収という、日本企業では初(※2)となる革新的な一歩を踏み出しました。

※2:2019年7月 Daigasグループ調べ

失敗を糧に、逆風を越えて利益の柱へ――日本企業初の米国シェールガス会社買収を実現したDaigasグループの挑戦の軌跡


アメリカでのマラソンイベントに参加する大阪ガスとサビン社の社員

3. 完全子会社化を力に、戦略的エリア拡大と着実な生産増

完全子会社化によって、Daigasグループの信用力を背景にサビン社の資金調達力が向上しました。これにより、短期的な市況の変動に過度に左右されることなく、長期的視野に立った強固な計画実行、および着実な事業開発が可能となりました。

買収当初、サビン社側には「日系企業の傘下に入ることで、これまでなかった承認プロセスが生じ、意思決定や日常の操業における機動力が低下するのではないか」という懸念もありましたが、現地に駐在する担当者間での日々のやり取りだけでなく、幹部同士の緊密なコミュニケーション、さらにはサビン社への適切な権限移譲を進めたことで、スピーディーな操業体制を維持することができました。

また、シェールガス開発において極めて重要となるのが、ガスを採掘・開発するための権利(リース権)を持つエリアを面的に広げていくことです。プロジェクト参画時の2018年7月時点で約500平方キロメートルだった鉱区面積は、周辺地の取得活動を地道に継続した結果、2025年末には東京都23区の約3倍にあたる約2,100平方キロメートルにまで拡大しました。

さらに、市場のガス価格の変動に左右されないよう、あらかじめ将来の販売価格を固定しておく仕組み(価格ヘッジ)を活用し、収益の安定化を徹底しています。こうした取り組みにより、生産量は買収時の170万トンから、2025年実績で約390万トン、2026年度には約400万トンを計画する規模へと、着実に成長を続けています。


失敗を糧に、逆風を越えて利益の柱へ――日本企業初の米国シェールガス会社買収を実現したDaigasグループの挑戦の軌跡


地下の岩石層に高圧の水や砂などを送り込み、天然ガスの通り道をつくる作業の様子



4.堅実な成長とエネルギーの安定供給へ

生成AIの急速な普及に伴うデータセンター開発の活発化などを背景に、米国内の電力需要は増加を続けています。こうした需要を支える安定的な発電燃料として天然ガスの重要性が高まるとともに、LNG輸出向け需要の拡大も見込まれており、米国内の天然ガス需要は今後も中長期的に成長していくと予測されています。サビン社では、急激な生産拡大を目指すのではなく、市況や投資効率を慎重に見極めながら自社の事業計画に沿って着実に歩みを進める方針としています。安定的かつ持続的な事業成長を維持するため、今後も有望な新規エリアの獲得を継続的に進めていきます。また、サビン社では組織の持続性を意識して若手人材の積極的な採用を進めており、組織の新陳代謝を図って平均年齢の若返りも実現しています。

サビン社が取り組むシェールガス事業は、今後もDaigasグループの海外エネルギー事業を支える重要な基盤です。Daigasグループは、天然ガスの安定供給に貢献しながら、カーボンニュートラル事業にも取り組み、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立を見据えた事業基盤の構築を進めていきます。

Daigas STUDIOについて

失敗を糧に、逆風を越えて利益の柱へ――日本企業初の米国シェールガス会社買収を実現したDaigasグループの挑戦の軌跡


Daigasグループがミライ価値の創造を通じて、社会課題の解決に貢献する。

その挑戦に光を当てる情報発信メディアです。

Daigas STUDIOはこちら

Daigasグループについて

失敗を糧に、逆風を越えて利益の柱へ――日本企業初の米国シェールガス会社買収を実現したDaigasグループの挑戦の軌跡


長く親しまれてきた「大阪ガスグループ」は、2018年に「Daigasグループ」へと生まれ変わるとともに、ロゴを刷新しました。

グループとしての結束力をより一層高めながら、お客さまの暮らしとビジネスの“さらなる進化”を目指してチャレンジを続けています。

Daigasグループについてはこちら
編集部おすすめ