パンク、メタル、エレクトロまで内包した衝撃的な最新アルバム『WOR$T GIRL IN AMERICA』が2026年の必聴作と絶賛され、コーチェラでの圧倒的パフォーマンスによって台風の目となり、一躍シーンの最前線に躍り出たSlayyyter(スレイター)。しかし、アメリカ中西部の郊外で育った彼女は、ほんの最近まで音楽業界を諦めかけていたという。
「私はいつだって自分のやり方を貫いてきた」と語る彼女の、知られざる半生に迫る。

「最後の置き土産」が人生の転機に

Slayyyterはかつて、”ラグジュアリー”こそがステータスとスタイルの象徴だという考えを信じていた。ほんの数年前、支払えないとわかっていながら、ブランドのバッグを正規店でクレジットカードで買ってしまうほどには信じていた。「1カ月くらいでボロボロになった」とSlayyterはニューヨークでソファにくつろぎながら語る。

現在29歳の彼女は、ダメージ加工のカットオフデニムショーツと、2005年のグラストンベリーでのケイト・モスよろしく泥の中を歩いてきたような見た目に自らデザインしたカスタムブーツを履いて、Rolling Stone誌のオフィスに現れた。これが今の彼女のヴァイブだ。少し荒削りな自分を受け入れ、髪は乾いた時のクセのままにし、ヴィンテージショップで服を調達し、見つからないものは自分で作る。すべては今春リリースした3作目のスタジオアルバム『WOR$T GIRL IN AMERICA』のスピリットに沿っている。

「私は美しくてシックなポップスターという型に一度もハマったことがないの」とSlayyyterは言う。「だから今回の作品では、ブサイクになることも、下品になることも厭わない姿勢で臨みたかった」『WOR$T GIRL IN AMERICA』は、2023年の2ndアルバム『STARFUCKER』でまとおうとしたハリウッドのグラマーを洗い流している。彼女はあのアルバムを、かつて購入したあの不運なバッグと同じように捉えている。名声を風刺するファンタジーを築けばリスナーもそれに乗ってくれると踏んでいたが、派手な見せかけが通じたのは計画が崩れ落ちるまでの話。
ツアーに注ぎ込んだ金は戻ってこないし、正直なところ彼女自身が楽しめていなかった。

Slayyyterが初めて成功を味わったのはその数年前、2019年のことだった。アンダーグラウンドのポップヒット曲「Mine」や「Daddy AF」を収録したデビューミックステープ『Slayyyter』を自主リリースしたときだ。米ミズーリ州で育った彼女は、10代の頃をTumblrで過ごし、マリーナ・アンド・ザ・ダイアモンズ、ラナ・デル・レイ、タイラー・ザ・クリエイターといったアーティストたちのキャリアがネット上での成功によって錬金術のように変わっていくのを目にしてきた。自分の音楽でもそれが起こり始めたとき、彼女はさらなる成功を渇望するようになる。LAに移住したあと、周りの人々は「メインストリームでのブレイクスルーはすぐそこだ」という甘い言葉で彼女の頭をいっぱいにした。

2021年のデビューアルバム『Troubled Paradise』や『STARFUCKER』の後もそれが訪れなかったとき、Slayyyterはもう潮時かもしれないと考えた。「みんな私のことちょっとダサいと思ってるんじゃない?」と、彼女は当時口にした不安を振り返る。「これじゃ上手くいかないなって」。彼女は『WOR$T GIRL IN AMERICA』を最後の置き土産として計画し始めた。「制作期間の多くはものすごく落ち込んでいたし、絶望的な気持ちだった」とSlayyyterは言う。そして、今思えばちょっと大げさだったと認めつつも、ある決断に至った。
「自分が心から誇れる、素晴らしいアルバムを一枚残して去ろう。たぶんこれまでと同じようにどこにも届かないだろうけど、それでいいってね」

音楽のない未来も、完全に暗いものばかりではなかったはずだ。いくつか講座を受けて、服作りへの愛を新しいキャリアに生かすことも考えた。それで満足できたかもしれない。もしそうしていたら、彼女がここ数ヶ月で味わった刺激を半分も手に入れられなかっただろう。

「今はすべてが変わったの」とSlayyyterは言う。最初に変化を実感したのは4月、今年のコーチェラ・フェスティバルで、最も絶賛されたパフォーマンスの一つを披露した時だった。2週連続にわたり熱狂的なパフォーマンスを繰り広げると、Mojave Tentから数千人もの観客が溢れ出した。「CRANK」と「YES GODDD」の2連打は観客に電流のような衝撃を走らせ、「BRITTANY MURPHY.」と「GAS STATION」では、死や見捨てられることへの深い思索へと観客を引き込んだ。「パフォーマンスの最中は、記憶が飛んじゃうくらい没頭していた気がする」とSlayyyterは振り返る。「ステージを降りて、友達のアンナを抱きしめて、ただただ泣いちゃった。『信じられない、私たちやり遂げたんだ』って」

Slayyyterが語る逆転人生──「アメリカで最低の女子」がポップシーンの最前線に躍り出るまで

Photographs by RICHIE SHAZAM

コーチェラは、Slayyyterにとって初めてライブバンドを従えてのパフォーマンスだった。
自身のキャリアにおける変革期をはっきり打ち出すため、セットリストを『WOR$T GIRL IN AMERICA』の楽曲だけに限定した。ただし彼女は、それ以前のリリースから得た教訓に感謝している。「過去の音楽はすべて、自分のサウンドを見つけ出すためのビルディング・ブロックだった。そこにたどり着くまでには長い時間がかかったわね」と彼女は言う。「この作品は、デビュー当初の私には絶対に作れなかったから」

あの時から数ヶ月が経った今、Slayyyterは、急激に集まり始めた注目——「他の皆が好きだから、今になって自分を気に入っているだけじゃないか」と本人が疑ってしまうような人々からの熱視線も含めて——からインスピレーションを得て、新しい音楽の制作に取り組んでいる。「もう少しこの場所に留まりたいから、言ってみれば、前のアルバムと対になるようなアルバムを作っている感じかな」と彼女は言う。「すべての核が自分らしく感じられるものにしたい。ようやくそう感じられるようになったから」

キャサリン・グレイス・ガーナーの素顔

もしすべてが『WOR$T GIRL IN AMERICA』で終わるのだとしたら、このアルバムを過去8年間のアーティストとしての自分だけでなく、ポップスターの衣装の下にある素顔の自分──キャサリン・グレイス・ガーナーという人間──を表現したものにしたいと彼女は考えていた。「活動を始めた頃は、キャラクターやファンタジーのような側面がもう少し強かった気がする。ありのままの自分でいることに、そこまで自信が持てなかったから」とSlayyyterは述懐する。でも今は違う。彼女はこう付け加えた。
「キャラクターを創り出す必要性を感じなかった。私は本当に、この通りの人間だから」

Slayyyterはインタビューに現れると、現場にいるスタッフ全員に「グレース」と自己紹介した。キャリアの初期には、本名を探られるだけでも不快だった。若い頃の彼女なら、『WOR$T GIRL IN AMERICA』でここまでさらけ出していることに愕然とすることだろう。「このアルバムの多くは、パーティーで少しハメを外しすぎてウザがられていたり、周囲と馴染めていないという気持ちから生まれているの」とSlayyyterは言う。

地元ミズーリにいた頃、彼女の楽しみはスケーターの友人たちと集まることだった。「そこら中にゴミやタバコの吸い殻が散らかっていて、くだらない話ばかりしているような、他愛のない宅飲みパーティー」が定番だったが、30歳を目前にした今、彼女はすっかりインドア派になったという。このインタビューの前夜、彼女は『ザ・トゥナイト・ショー』で深夜テレビ番組への初出演を果たした。その後の数時間はお祝いをしたものの、そこで夜を切り上げた。「今の私は、引き際を見極めるのがすごく上手になったの」とSlayyyterは語る。「うつ病を抱えていたり、人生で苦しんできた人間にとって、お酒や夜遊びで感覚を気持ちよく麻痺させると、簡単に罠にハマってしまうから」

キャリアの初期、Slayyyterは「みんな私の能力や、才能、あるいはセンスのレベルを過小評価しているのかもしれない」と感じていた。当時の彼女は、自分を真剣に扱ってほしいと思っている相手の前で「あんなに泥酔して、ショットを10杯も飲んでクレイジーになるなんて、やるべきじゃなかったのかもしれない」ということに、まだ気づいていなかった。


Slayyyterが語る逆転人生──「アメリカで最低の女子」がポップシーンの最前線に躍り出るまで

Photographs by RICHIE SHAZAM

最近のSlayyyterは、他のポップアーティスト──自身と同じミッドウェスト(中西部出身)プリンセスであるチャペル・ローン、境界線を押し広げ続けるスター、チャーリー・xcx(彼女はSlayyyterの初期楽曲を自身のプレイリスト「The motherfucking future」に選曲し、彼女のキャリアを後押しした)といった面々──としょっちゅう比較されることも受け入れられるようになっている。

「新しいものを理解するために、何か親しみのある前例を求めてしまうのは人間の性だから」と彼女は言う。「それに、キャリアの変遷という意味なら、比較されるのもよくわかるかも。チャペルにとって、初出演のコーチェラが大ブレイクにつながる決定的な瞬間になったようにね。似たような売れ方だっていうのも理解できる。だって、8年間くすぶり続けて、その後にこういう瞬間が一気にやってきたんだから。でも、私はいつだって自分のやり方を貫いてきたと思う」

Slayyyterが自ら監督を務めた『WOR$T GIRL IN AMERICA』のミュージックビデオ群では、血まみれのボディ・ホラー(身体的恐怖)描写を用いて、女性、特にポップスターが押し付けられる社会的基準や美の基準を解体している。彼女はホラー映画が大好きで(「『サブスタンス』は映画館で6回観たわ。冗談抜きで」)、観る人を不安にさせるものや、観ているのが見つかったら怒られそうな映像にも惹かれている──たとえば、プロディジーが1997年に発表した、あの悪名高き「Smack My Bitch Up」のミュージックビデオがお気に入りであるように。

それ以外にも、彼女の影響源は多岐にわたる。2012年のコーチェラでリアーナがボディーガードの頭の上でブラント(大麻)を巻いている、ネットで爆発的に拡散された写真もその一つだ。「あの写真はTumblrでトリプル・プラチナ(大ヒット)を記録したわ」と彼女は言う。
「ルーヴル美術館に飾るべきよ」。Slayyyterは2024年にTumblrに戻った際、自分が10代の頃にどうしてあれほどこのサイトを愛していたのか、はっきりと思い出した。「そこは、ラグジュアリーに着飾る気取った世界じゃなかったの」

そこはまた、名声とも無縁の場所だった。「自分を有名人と呼ぶことには、これっぽっちも興味がない」と彼女は言う。しかし、そうも言ってられなくなるかもしれない。ミズーリでの静かな暮らしに戻るという選択肢は、今のSlayyyterにはなさそうだ。きらびやかなスポットライトが、今まさに彼女を呼び寄せている。

From Rolling Stone US.

Production Credits: Photographic assistance: AUSTIN DEWITT. Lighting: CHRIS MOREL. Production assistance NIARA KNOX & LISA GUDMUNDSDOTTIR

Slayyyterが語る逆転人生──「アメリカで最低の女子」がポップシーンの最前線に躍り出るまで

日本限定仕様アナログ盤ジャケ写(帯付き)

Slayyyter
『WOR$T GIRL IN AMERICA』
配信:https://slayyyterjp.lnk.to/WGIA

■日本限定仕様アナログ盤(輸入盤)
2026年6月26日(金)リリース
・日本語帯/オリジナルポスター(B4)付 ※数量限定初回仕様 
・ゲートフォールドジャケット/カラー盤〈コークボトル・クリアヴァイナル〉
予約:https://slayyyterjp.lnk.to/WGIAVvinyl

Slayyyterが語る逆転人生──「アメリカで最低の女子」がポップシーンの最前線に躍り出るまで

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