King Gnuのドラマー・勢喜遊と、トラックメーカー/DJのYohji Igarashiによるユニット『Yu Seki & Yohji Igarashi』が4thシングル「BAMBOO」を配信リリース。10月に初のワンマンライブ「1st ONE-MAN」を東京・大阪で開催することも併せて発表された。


野心的なプロジェクトの真相に迫る3部構成のロング・インタビュー。最終回となる後編では、これまでに発表されたシングル群の制作背景と、10月に控えるワンマンライヴの展望について語ってもらった。彼らのダンス・ミュージックは、オーディエンスが全身で反応し、踊り、汗を流すことで初めて完成される。エネルギッシュで臨場感に満ちたステージを、ぜひとも現場で体感してほしい。

【前編】Yu Seki & Yohji Igarashi結成秘話 ダンス・ミュージックで意気投合するまで
【中編】勢喜遊のドラムを形作るハイブリッドな感性、Yohji Igarashiの歩みとアナーキズムを徹底解明

「BAMBOO」ライブ映像

二人のアイデアが交差する制作の裏側

―ここからは、Yu Seki & Yohji Igarashiとしての制作背景やライヴ活動について聞かせてください。昨年のフジロックで初ライヴを行った時点で、すでに新曲を15曲も披露していますよね。今回リリースされたばかりの新曲「BAMBOO」もその時点で出来上がっていた?

勢喜:そうですね、フジロックでもやりました。

―「一緒にやろう」となってから、制作はどのように進んでいったのでしょう?

勢喜:フジロックに出るのは決まっていたから、自分たちの出番で無音の時間を作らないように、とにかくどうにかしようって気持ちで8ヶ月くらい頑張りました。

Yohji:制作は遊くんのスタジオでやっているんですけど、2024年末頃からずっと同じペースで、週に1~2回くらい通い続けて。「こういう作品を作ろう」というよりは、「最近こういう感じがいい」「こういうのがやりたい」といったフィーリングを共有しながら、ひたすら話し合いを重ねていって。そうして生まれた曲たちを、あとから(セットリストの)流れが良くなるように並べ替えてまとめていく、みたいな作業でした。

「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来

昨年のフジロック出演時の写真

―どちらか一方が「こういうのをやろう」と提案するのではなく、二人でアイデアやイメージを出し合う感じ?

Yohji:そうですね。
お互いゼロイチで作り始めることもあれば、どちらかが持ってきたアイデアを発展させることもあって。どちらかが何かを出したら、「じゃあ、ここをもう少しこうしてみよう」と手を加えていく感じです。

―前編で話に出た「WACKO MARIA」は勢喜さんのドラム・ビートが起点になったそうですが、逆にYohjiさんが先にトラックを作って、そこから発展していくパターンもある?

Yohji:ありますね。

―そういう制作のやり取りで、何か印象的なエピソードはあったりしますか?

勢喜:まだ未発表なんですけど、最近できた曲で、お互いが別々にゼロイチで作っていたデモがあったんです。それをそのままガッチャンコしたら、上手くハマったんですよね。

Yohji:二人ともAbleton Liveを使っていて。昔はできなかったんですけど、今はプロジェクトをそのまま持ってこられるんですよ。書き出しをしなくても、自分のプロジェクトに相手のセッションをそのままポンと入れられる。それで、お互いのプロジェクトを重ねて再生してみたら、思いのほかいい感じになったんです。

―DAW上でお互いのトラックを縦に重ねた、ということですよね?

Yohji:そうそう。もちろん最終的には少し整えましたけど、かなりいい感じでしたね。

―それはヤバすぎて運命を感じますね(笑)。
勢喜さんはこのプロジェクトにおいて、トラックメイクにも関与しているんですか?

勢喜:やってると言ってくれる?

Yohji:もちろん(笑)。

勢喜:僕が作ったベースをそのまま使うことは、さすがにあんまりないですけど。でも、「Say Less」の土台は僕が作りました。

―デモを先に用意して、それをYohjiさんに投げた?

勢喜:はい。

勢喜遊 & Yohji Igarashi「Say Less」Live from ONENESS

―その「Say Less」が昨年7月、最初のシングルとしてリリースされたわけですが、実際に作り始めた順番としてはいつ頃だったんですか?

勢喜:(制作を始めて)ちょっと経ってからですね。一曲目にふさわしいものがなかなかできなくて。その中で「これだったらいけるんじゃないか」と思えた曲で。拾ってきたドラムループを1.5拍単位くらいで細かく刻んで、それを並び替えたら面白いことになるんじゃないか、という発想から作り始めて。ドラムンベースやブレイクコアのすごく基本的な作り方だと思うんですけど、ハイエナジーだしいいかなと思って。

―サラッと言いましたけど、自分が叩いたドラムではなく、拾ってきたループから作ったんですね。そういう作り方ってよくされるんですか?

勢喜:全然します。

―そういう作り方をしないと思いつかないものがある?

勢喜:というか、めんどくさいんですよね(笑)。
マイクを何本も立てて録音するのが。「ライヴでできたらそれでよくない?」と思っているので。

「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来


―勢喜さんが作ったデモに、Yohjiさんはどんなふうに手を加えていったんですか?

Yohji:パッと聴いた瞬間に「ここをこうして、こうして……」みたいなアイデアが、結構すぐ浮かびましたね。

勢喜:そういう部分を明確に教えてくれるんですよ。僕はたぶん、構成力があまりなくて。ひとつひとつのパートは時間をかけて作り込めるけど、それを曲として組み立てる力がなくて。そこを整理してもらってます。

Yohji:最初のシングルとして「Say Less」に辿り着くまでが難産で、その過程でいろいろ作った結果、曲数が増えていったところもありますね。遊くんは「曲の中で必ずしもドラムを叩いていなくてもいい」という主義ですけど、一発目の作品はリスナーに向けて、ドラムがアグレッシブであった方がいいだろう、というのは意識していました。曲を聴くだけでドラムを叩いている絵が浮かぶのが大事というか。一方で、僕はベース作りを、シグネチャーとまでは言わないけど大事にしていて。遊くんらしいドラムと自分らしいベースを両立させられる曲だし、「これはいけそうだな」と聴いた瞬間に思いましたね。
このドラムパターンは、自分だったら絶対に思いつかない。

―イントロのスコーンと抜けたスネアの連打で、一気に曲がドライヴするのも見事です。

Yohji:あそこは僕が入れたいと提案して、もともとあのパートはなかったんですよ。ライヴで演奏することも考えたとき、この曲でストレートなビルドアップをやるのは照れくさいから、ブレイクとビルドアップの中間みたいな感じを入れたいなと。めっちゃ遊くんが叩きそうな感じがするじゃないですか。そういうのを入れるのが面白いかなと思って。

勢喜:逆に、ああいうのは俺からは浮かばないですね。

Yohji:自分発信であれをやるのは照れると思うんですよね。僕はある種、再構築する側の視点で見られるので。「遊くんというドラマーがいるなら、最初にこういう見せ場があった方がいいよね」みたいなことを、客観的な立場から考えられるというか。やっぱり二人でやっていると、お互いを客観視できる部分もあって。

勢喜:二人で制作しながらめっちゃ出る言葉が、「これ照れるよね」「恥ずいよね」とか。
そこのジャッジは結構あるよね。でも、二人だからこそできることもあると思うし。

Yohji:「さすがにこれはちょっと照れる」みたいな。わかりやすい例で言うと、キャッチーすぎたり。その辺りの絶妙な感覚をすり合わせられるのは、だいぶやりやすいですね。

ロンドンでの出会いが生んだ「BAMBOO」

―その次に出た「Tombo」は、グライムやダブステップを基調としていて、「Say Less」のビートとはまるで違うハーフタイム感が印象的です。

勢喜:いろんな曲をたくさん作っているなかで、ハマらなかったビートがあって。でも、モノはいいから、とりあえずDaichiくん(Daichi Yamamoto)に投げてみたら、物凄く上手にメロディを乗っけてくれて。「もうこれでいいじゃん」となったんです。

Yohji:よくあんな感じにしてくれたなって。

勢喜遊 & Yohji Igarashi「Tombo」Live from ONENESS

―続く「SUPERMARKET」もベース・ミュージック系で、仮タイトルが「Brostep」(※ハードで歪んだサウンドを特徴としたダブステップのサブジャンル)だったそうですね。Yohjiさんはリリース時「あまり言葉で説明するのも野暮な曲」とコメントしてましたが、あえて説明してもらうと?

Yohji:これは僕がワガママを通させてもらったというか。
フジの構成が出来上がったとき、「ここにゴリゴリのダブステップを入れてー、作ってみていい?」みたいなノリで制作したんですよね。こういう曲を作る機会はそうないので。自分のソロとしては派手すぎるし、誰かに提供するにしても、これを提供してほしいっていう人はなかなかいないと思う。

勢喜:ハハハハ(笑)。

Yohji:フジでは最後に「Say Less」をやることが決まっていたので、その前にひとつ波を作りたかったんです。遊くんがハーフタイムで大きくドラムを叩いている光景も、自分の中ではヴィジョンが描けていて。それと実は、まだ発表していない四つ打ちの曲もすでにあるんですけど、それだと現段階では、遊くんらしさや自分たちのアイデンティティが伝わりづらい気もしたんですよね。この曲はインパクトもあるので、早めに発表するのがいいんじゃないかとなりました。

―ダブステップを人力で演奏するのは難しそうですけど、勢喜さんのハットやフィルが効果的に機能している印象です。

勢喜:まあでも、ビートのノリとしてはKing Gnuとも遠くはないというか。すでに持っているものとも言えるのかもしれないです。

―そして、今回リリースされる新曲「BAMBOO」。この曲もグライムやダブステップ的ですが、「SUPERMARKET」が初期のSkrillex的だとすれば、「BAMBOO」は彼とFred again..がコラボした「Rumble」に通じるものを感じました。

Yohji:この曲はもともと、遊くんから「HANATANIというやつがいて」と紹介されたのがきっかけで。音源を聴かせてもらったら、「この人が友達なの? めっちゃかっこいいじゃん」と思って。それこそ「Rumble」みたいな、音数を削ぎ落としたミニマル・ダブステップを個人的にもやってみたかったんですよね。HANATANIのデモを聴いて、そういうサウンドが好きなんだろうなと伝わってきたので、そこを出発点に作り始めた曲ですね。

―この曲にCota Moriさん(森洸大:PERIMETRON)と共に参加しているHANATANIさんは、大阪を拠点に活動するシンガー/ラッパーで、渡英経験で培ったUKグライム調のラップが特徴とのことですが、いったい何者なんですか?

勢喜:僕が去年、ロンドンに3カ月半ほど語学留学していた時期に知り合ったんです。語学学校が一緒だったんですけど、いつも喫煙所にいて。「変わった格好しているな、何者なんだろう」とお互いに思っていたみたいで。それである日、「ヒップホップをやっているので、音源を聴いてください」と声をかけられて。そこから仲良くなって、一緒にドイツへ旅行したりするくらいになったんです。その後、僕が日本に帰ってから連絡が来て、「最近一緒にやっているプロデューサーがいて、トラックがすごくいいので聴いてください」と言うので聴いてみたら、かなりベース・ミュージック寄りのサウンドになっていて。この出会いも面白いし、一回誘ってみようかなと思って声をかけたのが「BAMBOO」になりました。

「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来

HANATANI

―前編でFred again..の話もしましたが、ダンス・ミュージックからラップ・シーンに至るまで、ここ数年UKが面白いというのは熱心なリスナーであれば知っていることですよね。そういう海外の動向ともシンクロした楽曲のようにも思いました。

Yohji:今の時代にフィットしているというのも、クラブ・ミュージックにおいてすごく重要な要素だと思っていて。トレンドを無視しないことも大事というか。でも一方で、そのトレンドを踏襲するうえで、自分たちの表現としての説得力を持たせられるかどうかも大切だと思うんです。そのリアリティを出せるかどうかが、自分たちの中で「できる/できない」の線引きにも繋がっているというか。この曲のミニマル・ダブステップやUKっぽいノリに関しては、自分たちの中から自然に出てきそうだな、という感覚がありました。

「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来

Cota Mori

現場で更新されるプロジェクトの真骨頂

―ここまでたっぷり話を伺って、今後の展開がますます楽しみになりました。プロジェクトの展望については、どのように考えていますか?

勢喜:いろいろやってみたいことはありますけど、まずはアルバムを出さないとって感じですね。

―ライヴと同様、DJミックス的に曲間を繋ぐのもよさそうですよね。

勢喜:まさに今、そういうこともめっちゃ話し合っています。

―東京・大阪のZeppで、初のワンマンも決まりました。

Yohji:ここからどう広がっていくか、ということに興味がありますね。今度のワンマンまでは自分たちの努力次第ですけど、その先の広がり方はいい意味で想像しきれないところでもあって。「この人も聴いてるんだ」「このイベントに呼んでもらえるんだ」とか、自分たちの想定を超えた動きになっていったら面白いなと思っています。

「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来


「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来


―ライヴの現場こそがYu Seki & Yohji Igarashiの真骨頂でもあるのかなと思いますが、そこには現時点でどんな手応えを感じていますか?

勢喜:最近はYouTubeだとMVがあまり回らなくなってきたとか、そういう話もあるじゃないですか。なんかライヴこそ、一番価値が出てくるような気がしていて。そういう意味ではすでに強いプロジェクトだと思うし、ライヴも面白いと思います。

Yohji:すでに発表している曲も、ライヴでやることを前提に作ったものばかりなので。普段、ひとり自宅で音楽を作りながら、AIのクオリティがどんどん上がっていることを実感してますが、やっぱりライヴってそういうので置き換えることができないじゃないですか。そう考えたときに、このプロジェクトをやっていてよかったなと思います。

―個人的に、エレクトロニック・ミュージックのライヴにドラムが加わった編成が大好きで、ドラムがビシバシ入ってくる瞬間がすごく気持ちいいんですよね。そこではヴィジュアル面も重要な気がしていて、勢喜さんがドラムを叩くときのフォーム、しなやかなストロークは理想的ですが、そのあたりはご自身でもこだわりがありますか?

勢喜:そうですね。電子ドラムだから「このくらいのテンションで叩いても大きい音が鳴るだろう」というふうには考えないです。ロック上がりだからっていうのもあるのかもしれないけど、聴いたままのテンションで動きたいし。動きとビートの関係みたいなところは、もともとダンスをやっていた手前、意識しているところではあるというか。

―いつも踊るようにドラムを叩いてますよね。ダンス・ミュージックを標榜するYu Seki & Yohji Igarashiは、自分が気持ちよくドラムを叩くためのプロジェクトでもある?

勢喜:そうですね、そうだと思います。

「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来


「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来
勢喜遊】勢喜遊による新ユニット『勢喜遊 & Yohji Igarashi』が、7月1日(水)に新曲『BAMBOO』の配信リリース決定! | King Gnu | ソニーミュージックオフィシャルサイト

Yu Seki & Yohji Igarashi「BAMBOO」
配信中
再生・購入:https://va.lnk.to/BAMBOO

「ライヴこそ今、一番価値がある」勢喜遊とYohji Igarashiが語る、楽曲制作の裏側とプロジェクトの未来

『Yu Seki & Yohji Igarashi ”1st ONE-MAN”』
2026年10月23日(金)大阪 GORILLA HALL OSAKA
2026年10月24日(土)大阪 GORILLA HALL OSAKA
2026年10月28日(水)東京 Zepp Shinjuku (TOKYO)
2026年10月29日(木)東京 Zepp Shinjuku (TOKYO)
〈チケット〉
FC会員受付(全国共通・抽選):~7月8日(水)23:59
オフィシャル最速先行(全国共通・抽選):7月15日(水)18:00~
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/kinggnu/info/584415
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